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戦争で死を覚悟した若者は、哲学書を読む

水木しげる: 鬼太郎、戦争、そして人生 (とんぼの本)
水木しげるの三大人気作といえば、「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」「河童の三平」だと、本書冒頭にカラーで紹介されている。
残念ながら私はそれらの作品にほぼ、触れていないので、正当な水木マンガ読者とは言えないものと自覚している。

本書を求めたのは、哲学者の梅原猛との対談が収められているということからだった。
これは2010年の6月に初めて実現した対談で、“妖怪” 大放談、ということで期待してそこの部分を中心に読んでいった。

おふたり(3歳差)に共通するのは戦争、貧乏、そして出雲神話ということなのだけど、対談の前半は主に戦争のあたりのオハナシになる。
水木さんは20歳で多くの若者が戦争に行くので、18,9の頃に出来るだけ本を読んだと言う。特に哲学書やゲーテなど。
同様に梅原さんも死ぬ前に悟りを開きたいと、西田幾多郎や鈴木大拙などをむさぼり読んだ。そしてニーチェからハイデッガーへ。
水木さんは言う。
そう、若い者を哲学に押しやったのは、兵隊に行って死ななきゃならぬということですよねぇ。今は20歳ぐらいで死ぬなんて、考えられないでしょう。(p.16)
そうなんだ。

本当はもっと出雲神話と水木マンガ、あるいは梅原日本学との関係性についての大放談が読みたかったのだが、時間の都合か、あまり深掘りされていないのは残念だ。
「完全再現」と書かれているので、編集されたわけでもなさそうだけど、初対談だったので、あまり奥までは行けなかったのかなぁ? 二度、三度と対談を重ねられたらもっと深いお話が伺えたのかと、少し残念ではある。

呉智英さんの解説による「水木しげる Q&A」で、水木さんは手塚さんの影響を全く受けていないし、劇画グループとも接点がない、と書かれていた。
手塚さんの『どろろ』が妖怪ブームにあやかって連載が始められた、というのはご本人がそう書いているのでそこそこ信憑性がある。当然、視野に『墓場鬼太郎』も入っていたのだろうとは思うが、同時代の才能には特別なライバル心を燃やす手塚さんとの対比が感じられて面白かった。

本書の最後は『総員玉砕せよ』から「小指」が載せられている。
水木さんの戦争ものは少なからずあるので、『総員・・・』に限らず、いろいろと触れてみたいものだ。
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  • 掲載日:2026/05/03
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