書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

献本書評
活字中毒
レビュアー:
3歳児でも読める小学生に向けた大人の本
タイトルに図鑑とあるが全く図鑑ではない。
サブタイトルにあるように絵物語である。
見開きの左に1枚の大きな絵、右に文章。
その絵もAIが描いたどこか不安定な、リアルなタッチの割には不自然さを残した、まさに古典の(天井を剥がして屋内を見せる平安時代の源氏物語絵巻物の様な)絵巻物を想像させる。
文章には全ての漢字にルビが振られ、3歳児からでも絵を見ればわかる、というスタイル。
ただし実際に3歳児や小学生が読むには大人の指導が必要だろう。

年表に載るような歴史上のイベントの他に、項目を立てて「発明・発見」を大きく取り上げてあるところも興味深く、特徴的だ。
道具、火、ことばを飛ばして、最初の発明に弓矢を取り上げていることがこの本の主張を早くも表している。
当時としては狩りが効率的になった面が大きいが、後の世界では戦争の手段を改革してしまった。

そして最新のトピックスは2026年3月のイラン戦争。
かなりタイトなスケジュールの出版だったことだろう。

子供向けと言うよりも、本当の読者は大人であるべきだ。
子供を導くために短い簡単な文章に込められた深く大きな意味を汲み取るのは、大人にとっても脳を振り絞る努力が必要だろう。
実際自分が子供だったとしたら作者の伝えたいことを充分に理解することは難しかっただろうと思う。
歴史の一つの出来事には様々な面から見て評価の変わる中身がある。
ただしどんな出来事も等価に扱うのではない。
差別や虐待、人権侵犯については正面から闘う姿勢を見せている。

既に偏見に塗れた大人の頭こそ再構築されるべきだと作者は考えているのではないか?
大人を変えることを諦めて子供に未来の希望を託すのみ、と言う程悲観的になっているようには思えない。

この本で言うところの図鑑部分は355ページあるが、170ページからは20世紀を扱っている。
宇宙の誕生から19世紀までが半分以下の扱い!
現代の問題をこそ考えたいという姿勢の表れだろう。
430ページまで解説と作者の意図が詳しく語られ、それ以降は参考文献のリスト。

最終的には自分の目で見て様々な角度から考えてほしい、この本のことも丸ごと信用して依存してはいけないと説く。

そして絵を見ているだけでどこかに連れ去られそうになる楽しい本である。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
活字中毒
活字中毒 さん本が好き!1級(書評数:68 件)

主に新刊国内ミステリー。ベストセラーよりも新人賞

素晴らしい洞察:1票
参考になる:5票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. Human Histories2026-05-14 18:21

    あたたかく、またとても深く読み込んでくださった書評を、本当にありがとうございます。

    言葉の一つひとつから、丁寧に向き合ってくださったことが伝わり、とてもうれしく思います。

    「図鑑」という題名と中身の印象にずれがあること、AIによる絵の不安定さを感じられた点、読む年齢や読み方によって受け取り方が変わる点など、当法人としても考えるべきことが多いと受け止めました。

    不慣れな点、至らない点はまだあります。
    今後の本づくりや伝え方の中で、できる限り善処していきたいです。

    一方で、この本が単なる歴史の一覧ではなく、現代の問題を考えるための本でもあること、差別や人権侵害に対して正面から向き合おうとしていること、大人の頭こそもう一度考え直す必要があるのではないか、というところまで読み取ってくださったことに深く感謝いたします。

    貴重な書評をありがとうございました。
    いただいたご指摘を、これからの活動に活かしてまいります。

  2. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『人類史図鑑: 絵とことばでたどる、人類のものがたり』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ