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冤罪をでっち上げた悪徳銀行の不正を詐欺師が鮮やかに暴く小説。詐欺の構造、組織の病理、冤罪の現実を巧みに織り込みながら、読者に知的な快楽と倫理的な葛藤をもたらす。
中山七里の最新作『バンクハザードにようこそ』(KADOKAWA、2025年)は、組織の闇と欺瞞を暴く、痛快かつ知的な社会派ミステリー小説。友人を横領の冤罪で死に追い込んだ悪徳銀行を詐欺師が追い詰める。詐欺師が主人公という異色の設定ながら、読者の倫理観と知性を刺激する。
司法書士の東雲は箱根銀行に勤める友人の燎原が多額の二百億円を横領して自殺したと知らされる。しかし、燎原は「箱根銀行は二百億もの金を粉飾しており、その責任を自分一人に押し付けようとしている」とのメッセージを残していた。ここから詐欺師が悪徳銀行を追い詰めるという逆転劇が展開される。
詐欺師を主人公とした小説だけあり、詐欺の本質が語られる。「最悪のパターンを説明せずして投資のアドバイスをするなんて詐欺以外の何物でもありませんからね」(63頁)。利益となる事実を告げながら、不利益事実を説明しないという情報の非対称性がもたらす欺瞞が浮き彫りになる。
本作の魅力は、銀行内部の描写にもある。視点人物が銀行員に切り替わることで、旧態依然とした日本型組織の病理が露わになる。専門性を高める前に人事異動がなされることに対して「人事部をクソッタレ呼ばわりしたものだ」と表現される(104頁)。これはジョブ型への脱却ができていない旧態依然とした日本型組織では起きている。
本書は会議の無駄についても言及する。「本来は組織の問題点について討論を行い、具体的かつ効果的な解決案を絞り出すのが会議の役目のはずだ。だが大抵の会議は参加者の創意を確認するに留まり、問題を解決するはずの場は担当者への叱責と責任追及の処刑場に堕している」(134頁)。
忖度させる卑怯さも描かれる。「部下に対しての命令を当の部下から言わせる。決して上司からの強制ではなく、自分で口に出した時点で自発的な行動となり責任が圧し掛かってくる」(207頁)。これらの描写は労働者である読者にとっても身近にある残念な職場の風景として響き、物語のリアリティを高めている。
BIS規制や不動産投資の不正融資など、現実の問題が巧みに織り込まれ、物語に重厚感を加えている。冤罪のでっち上げも日本の現実を反映している。燎原は二百億円を横領して女性に貢いだとされるが、警察は自称被害者の箱根銀行の言い分を鵜呑みにするだけで、二百億円の使途や貢いだ女性は不明のままである。杜撰極まりないが、現実の痴漢冤罪事件でも起きた。
不動産詐欺や未公開株詐欺を行ってきた詐欺師が、警察に捜査を依頼するという展開には一抹の違和感がある。半グレ・ヤンキーがチンコロするようなものである。しかし、それも物語の終盤に用意された驚愕の展開に必要な要素であった。
司法書士の東雲は箱根銀行に勤める友人の燎原が多額の二百億円を横領して自殺したと知らされる。しかし、燎原は「箱根銀行は二百億もの金を粉飾しており、その責任を自分一人に押し付けようとしている」とのメッセージを残していた。ここから詐欺師が悪徳銀行を追い詰めるという逆転劇が展開される。
詐欺師を主人公とした小説だけあり、詐欺の本質が語られる。「最悪のパターンを説明せずして投資のアドバイスをするなんて詐欺以外の何物でもありませんからね」(63頁)。利益となる事実を告げながら、不利益事実を説明しないという情報の非対称性がもたらす欺瞞が浮き彫りになる。
本作の魅力は、銀行内部の描写にもある。視点人物が銀行員に切り替わることで、旧態依然とした日本型組織の病理が露わになる。専門性を高める前に人事異動がなされることに対して「人事部をクソッタレ呼ばわりしたものだ」と表現される(104頁)。これはジョブ型への脱却ができていない旧態依然とした日本型組織では起きている。
本書は会議の無駄についても言及する。「本来は組織の問題点について討論を行い、具体的かつ効果的な解決案を絞り出すのが会議の役目のはずだ。だが大抵の会議は参加者の創意を確認するに留まり、問題を解決するはずの場は担当者への叱責と責任追及の処刑場に堕している」(134頁)。
忖度させる卑怯さも描かれる。「部下に対しての命令を当の部下から言わせる。決して上司からの強制ではなく、自分で口に出した時点で自発的な行動となり責任が圧し掛かってくる」(207頁)。これらの描写は労働者である読者にとっても身近にある残念な職場の風景として響き、物語のリアリティを高めている。
BIS規制や不動産投資の不正融資など、現実の問題が巧みに織り込まれ、物語に重厚感を加えている。冤罪のでっち上げも日本の現実を反映している。燎原は二百億円を横領して女性に貢いだとされるが、警察は自称被害者の箱根銀行の言い分を鵜呑みにするだけで、二百億円の使途や貢いだ女性は不明のままである。杜撰極まりないが、現実の痴漢冤罪事件でも起きた。
不動産詐欺や未公開株詐欺を行ってきた詐欺師が、警察に捜査を依頼するという展開には一抹の違和感がある。半グレ・ヤンキーがチンコロするようなものである。しかし、それも物語の終盤に用意された驚愕の展開に必要な要素であった。
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歴史小説、SF、漫画が好き。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』はマンションだまし売り被害を消費者契約法(不利益事実の不告知)で解決したノンフィクション。
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- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:0
- ISBN:9784041163382
- 発売日:2025年08月01日
- 価格:1980円
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