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ベックさん
ベック
レビュアー:
なかなかの内容だった。天藤真「大誘拐」みたいなのかなと思いながら読んでいたが、とんでもない!
 韓国の小説は何冊か読んできたけど、ミステリは初めて。しかも、本書ってかなり上手い仕上りになっている。タイトルからも表紙からもわかるとおり、女の子が誘拐されるお話なのだが、はやくから話は混乱する。ていうか、なんちゅう展開!!!って感じになる。

 登場人物の描かれ方もステレオタイプなんだけど、読ませる。地に足のついた安心感とでもいおうか、読んでいて自然で楽しい。とにかくわかりやすいことに、この事件では誘拐された女の子が主導権を握ってしまうのである。かつて読んでおおいに感心した「大誘拐」を思い出してしまった。だが、本書のほうはユーモアと痛快さの要素を残しながらも、不穏な部分も強調されて読後感は違う。誘拐犯の男も難病で入院中の我が子がいる身ゆえ、子どもに対する愛情は誰にも負けないほどある。大それた犯罪を犯しているにも関わらず、心からあふれだす優しさが彼を善人に感じさせる。個人的見解だけどね。しかし最初にも書いたとおり、本書では誘拐と同時にある事件が起こっており、それが読み手の頭の中にずっとこびりつく。この二重構造が本書の要であって、読み手に揺さぶりをかけながら進行していくことで直線的な単純なサスペンスでは生まれない緊張が持続してゆく。

 謎が次第にほぐれていき、分からなかったピースが埋められていくのはミステリとしては常套だとしても、その展開の運び方、道筋の示し方、人物の出し入れに至るまで、すべてが驚くほど自然な流れであることに感心する。だから真相に辿りつく過程に違和感を感じないのである。

 真相は転がる。ここらへんの呼吸はうまい。いかにもサスペンスドラマの見本みたい!て感じにもとれるが、驚いてしまう。物語の芯にある要素がちょっとあり得ないものなんだけど、それを差し引いても充分おもしろく、満足のいくミステリだったと思う。最後の最後、表面上はお互い笑って気持ちよく終わっているが、陰で進行するであろう事実に思い至り戦慄する。この不穏な感触が本書のいちばんの巧さかもしれない。
 本書は韓国と日本でドラマ化されているが、いったいドラマの方はどう決着つけているのか、気になるところだ。
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ベック
ベック さん本が好き!1級(書評数:1616 件)

本が大好きで、毎日本のページを繰っています。
小説なら、どんなジャンルでも挑戦しております。
小説の神様は山田風太郎と皆川博子とスティーヴン・キングだと思っています。

あと川谷絵音も大好きです。よろしくお願いします。

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