かもめ通信さん
レビュアー:
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ひとり出版社「共和国」の代表下平尾直(しもひらおなおし)氏の単著が「共和国」ではなく、同じくひとり出版社である「コトニ社」から出版された!と聞いたら、「共和国」シンパとしてはやっぱり気になる…!?
昨年創業10周年を迎えたひとり出版社「共和国」の代表下平尾直(しもひらおなおし)氏の単著が「共和国」ではなく、同じくひとり出版社である「コトニ社」から出版されたというので、行きつけの地元の書店に「時間がかかってもいいから」という言葉を添えて取り寄せ注文をお願いしながら、ぼんやりと考えていた。
もしも誰かに「なにを期待してこの本を手にしたのか」と問われたら、なんと答えるだろうか?と。
なぜひとり出版社なのか、なぜ東久留米なのかに加え、宿酔ネタは外せないだろうとは思っていたが、 正直に言うともっとずっと小難しいことが書かれているに違いないと思っていた。
いや実際、結構難しいことが書いてはあるのだ。
社会を見る視点とか、ドストエフスキーの『罪と罰』から受け、今も受け続けている影響とか。
けれども、想像していたよりも何倍も読みやすく、つるつると読めてしまって、心の中であちこち突っ込みながらも、読み始めたらあっという間で、あまりに早く「こんなことをしている場合ではないのだが---あとがきにかえて」までたどり着いてしまい、満足感がある一方でなんだかちょっと申し訳ないような気持ちになってしまった。
だってこれ、これだけの内容をこれだけ読みやすく書き記すのはきっと、ものすごく大変だったろうと思うのだ。
「共和国」樹立の経緯やひとり出版社のあれこれを結構真面目にでも面白く、為になる話や胸打つエピソードを織り交ぜながら、「架空実録」「架空インタビュー」「架空講義」と書き連ねるのも、読者にあの本もこの本も読んでみたいと思わせながら、自らの生い立ちと読書遍歴を語りあげるのも。
実を言うと私は著者とは同世代で、著者と同じように団地に思い出があり、著者ほどではないがバブル期にもかかわらず「60年代か!?」と突っ込まれるような学生生活を送った経験があり、ドストエフスキーが好きで、突発性難聴を患って大量のステロイドのお世話になったことさえある。
なんだか妙な親近感を覚える一方で、(この人には適わないなあ)と、しみじみ思ってしまう。
結局のところ私はこの本に、「共和国」のそこそこ熱心な支持者として、少ない小遣いを貯めて貢ぐ理由(いいわけ)を求めていたのかもしれない。
そしてこの本はその期待に十分に応えてくれ、私はまた、書店の店頭で共和国の本を注文することになるのだろう。
数年前には、北の果ての小さな本屋ではなかなか入手できなかった「共和国」本も、取り次ぎをしてくれるトランスビューも、今ではすっかりお馴染みになって、多少時間はかかるもののも確実に入手できるようになった。
本が届くまで首を長くして待つ時間もまた楽しい。
同時に本の2/3をカヴァーする太い帯をはじめ、一見すると「共和国」の本のように見える装丁にもかかわらず、実際に手にしてみるとかなり趣きがちがっていて、これが「コトニ社」の特色(カラー)なのかどうかも気になるところで…。
どうやらまた興味深い出版社に出会ってしまったようだ。
<関連情報>
・祝! #共和国 10周年読書会(2024年開催)
・共和国HP(外部リンク)
・コトニ社HP(外部リンク)
・「うしろから本を読む人のために――まえがきにかえて」が読める版元ドットコム(外部リンク)
もしも誰かに「なにを期待してこの本を手にしたのか」と問われたら、なんと答えるだろうか?と。
なぜひとり出版社なのか、なぜ東久留米なのかに加え、宿酔ネタは外せないだろうとは思っていたが、 正直に言うともっとずっと小難しいことが書かれているに違いないと思っていた。
いや実際、結構難しいことが書いてはあるのだ。
社会を見る視点とか、ドストエフスキーの『罪と罰』から受け、今も受け続けている影響とか。
けれども、想像していたよりも何倍も読みやすく、つるつると読めてしまって、心の中であちこち突っ込みながらも、読み始めたらあっという間で、あまりに早く「こんなことをしている場合ではないのだが---あとがきにかえて」までたどり着いてしまい、満足感がある一方でなんだかちょっと申し訳ないような気持ちになってしまった。
だってこれ、これだけの内容をこれだけ読みやすく書き記すのはきっと、ものすごく大変だったろうと思うのだ。
「共和国」樹立の経緯やひとり出版社のあれこれを結構真面目にでも面白く、為になる話や胸打つエピソードを織り交ぜながら、「架空実録」「架空インタビュー」「架空講義」と書き連ねるのも、読者にあの本もこの本も読んでみたいと思わせながら、自らの生い立ちと読書遍歴を語りあげるのも。
実を言うと私は著者とは同世代で、著者と同じように団地に思い出があり、著者ほどではないがバブル期にもかかわらず「60年代か!?」と突っ込まれるような学生生活を送った経験があり、ドストエフスキーが好きで、突発性難聴を患って大量のステロイドのお世話になったことさえある。
なんだか妙な親近感を覚える一方で、(この人には適わないなあ)と、しみじみ思ってしまう。
結局のところ私はこの本に、「共和国」のそこそこ熱心な支持者として、少ない小遣いを貯めて貢ぐ理由(いいわけ)を求めていたのかもしれない。
そしてこの本はその期待に十分に応えてくれ、私はまた、書店の店頭で共和国の本を注文することになるのだろう。
数年前には、北の果ての小さな本屋ではなかなか入手できなかった「共和国」本も、取り次ぎをしてくれるトランスビューも、今ではすっかりお馴染みになって、多少時間はかかるもののも確実に入手できるようになった。
本が届くまで首を長くして待つ時間もまた楽しい。
同時に本の2/3をカヴァーする太い帯をはじめ、一見すると「共和国」の本のように見える装丁にもかかわらず、実際に手にしてみるとかなり趣きがちがっていて、これが「コトニ社」の特色(カラー)なのかどうかも気になるところで…。
どうやらまた興味深い出版社に出会ってしまったようだ。
<関連情報>
・祝! #共和国 10周年読書会(2024年開催)
・共和国HP(外部リンク)
・コトニ社HP(外部リンク)
・「うしろから本を読む人のために――まえがきにかえて」が読める版元ドットコム(外部リンク)
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:コトニ社
- ページ数:0
- ISBN:9784910108223
- 発売日:2025年07月04日
- 価格:3080円
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