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くにたちきち
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新宿の過去・現在・未来について、都市政策の専門家が、徹底解説している本です。
70年前、高校の合格発表を見に来て、初めて降りてからずっと、乗降駅や途中下車・通過駅として利用してきた新宿駅と新宿の町は、私にとっては、切っても切れない縁のある場所ですが、それについて真正面からとり挙げている本を、紹介します。

1947年生まれの筆者も「東京生まれ、東京育ちの私は、ごく幼い時から新宿を訪れていた。」ので、小田急線新宿駅と京王線新宿駅の駅舎が地上に建っていたのを見たのが、最も古い情景だそうです。この景色が一変したのは、1966年11月に、淀橋浄水場跡地に新宿副都心が建設されることになり、新宿駅西口に駅前広場が建設されてからだ、と述べています。

そんな新宿も、ここ30年ほどは休眠状態に入っていましたが、筆者は「100年に一度の再開発が始まる!」と予測しています。では、なぜ新宿がこの30年間眠っていたのか、その理由を、東京のほかの地域と比べて、次のように分析しています。

【東京駅周辺】の大手町、丸の内、有楽町を合わせた「大丸有」地区に続き、常盤橋、日本橋などの再開発が進行中ですが、ここは三菱地所と三井不動産が住み分けて、それぞれか競っています。

【渋谷駅周辺】は、2005年に「特定都市再生緊急整備地域」に指定されてから、東急グループが主導して大規模再開発プロジェクトが一気に動き出した、としています。

【六本木・虎ノ門周辺】は、森ビルが主体となって、再開発が進められている現状を述べています。

【新宿駅周辺】は、「統治者のいない街・新宿」であり、そのために再開発事業がなかなか進んでいないように見える、と筆者はいいます。当初は、都心機能の一部を分散するために、新宿、渋谷、池袋を副都心と定めて、順次再開発していくことが、1958年に「首都圏整備計画」が策定されてから始まり、1991年に、都庁新庁舎が建設されて、新宿西口の超高層ビル群が完成したとしています。

しかし、街づくりを東京都主導で進めたために、結果として、人にやさしくない街になってしまったと筆者はいいます。どこか1社の民間デベロッパーが計画全体をコントロールしていれば、もう少し統一のとれた街づくりができたのではないかと述べています。

新宿駅に中心点を置いて東西南北を見ると、北は歌舞伎町の歓楽街があり、東には伊勢丹や紀伊国屋書店などを擁するショッピング街、さらにその先には新宿御苑がある。南には代々木の森があり、西には新宿副都心と都庁などにビジネス街があるという、見事なバラバラぶりであるといいます。

このような新宿の逆襲の再開発に、筆者は次の三つのシナリオを描いています。
【逆襲のシナリオ1】超高層の駅ビルがランドマーク&司令塔になる(JR対小田急の東西対決)
【逆襲のシナリオ2】アジア系多国籍文化を発信する(歌舞伎町+新大久保=インターナショナルタウン)
【逆襲のシナリオ3】西新宿の超高層ビル街を再々開発(半世紀たってリニューアルの時期)

あと10~20年で、これらの計画が実現すれば、新しい新宿駅周辺に生まれ変わると、筆者は提案していますが、果たして、可能なのかどうか。大きな将来の夢物語が「正夢」になることを願っています。
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くにたちきち
くにたちきち さん本が好き!1級(書評数:778 件)

後期高齢者の立場から読んだ本を取り上げます。主な興味は、保健・医療・介護の分野ですが、他の分野も少しは読みます。でも、寄る年波には勝てず、スローペースです。画像は、誕生月の花「紫陽花」で、「七変化」ともいいます。ようやく、700冊を達成しました。

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