ぽんきちさん
レビュアー:
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町工場の息子と海運会社の御曹司。同い年のアキラとあきらの人生が、やがて交錯する・・・!
池井戸潤の長編ビルドゥングズロマン的経済小説といったところか。
かたや、町工場の息子、山崎瑛(やまざきあきら)。こなた、海運会社の御曹司、階堂彬(かいどうあきら)。
アキラとあきらの人生を30年の歳月に渡ってじっくりと追う。
元は月刊誌『問題小説』に連載されていたもの(2006~2009年)。長らく単行本化されないままでいたが、テレビドラマ化されたのを機に、2017年に徳間書店から文庫版として刊行された。
こちらは上下巻として2020年に出た集英社文庫版。
池井戸は1963年生まれ。アキラとあきらもほぼ同年代の設定と思われる。
町工場の少年、瑛は父の仕事を誇りに思っている。だが、瑛が小学生の時、父の工場は破綻する。取引先に難癖をつけられて弁償を余儀なくされたうえ、結局、取引を停止されたため、資金繰りが出来なくなったのだ。工場は差し押さえられ、一家は夜逃げ同様、母の実家へと引っ越しせざるを得なくなる。父が金策に躍起になっているのに、冷たい対応をした銀行員の姿が少年・瑛の目に強く焼き付けられる。
父が何とか再就職し、瑛が高校生になったころ、一家を再び試練が見舞う。だが、今回父のもとに姿を現した銀行員は、以前の嫌な思い出を吹き飛ばすような救いの天使だった。
大会社の御曹司、彬は幼い頃から会社経営の難しさを目の当たりにして育った。カリスマ経営者の祖父の元、父とその2人の弟が事業を取り仕切っていたが、経営手腕のある父と比べ、叔父たちの舵取りはどうも危うかった。祖父もそれを見越して、父を本業の社長につけ、叔父たちが責任を持つ関連会社を切り離すよう仕向けた。祖父が亡くなり、相続上のいざこざが生じる。何とか収めた後も、叔父たちと父の間は険悪なままだった。叔父たちは父の鼻を明かそうとするかのように、危ない賭けに打って出ようとする。歯に衣着せずに諫言しようとした銀行員の姿に彬は感銘を受ける。
瑛と彬は、実は、子供の頃、互いに深く意識せぬまま、ちらりと出会っている。大学も期せずして同門になる。
だが、2人の人生が本当に交錯するのは、就職してからのこと。
ともに、バンカーとなることを選んだ2人が激突する新人研修が1つの大きな山場である。
上巻では2人の社会人3年目まで。
大きなストーリーに加えて、2人の少年の身近な生活や心の動きも細やかに描いて読ませる。2人が出会って、互いに意識し合ったはずの大学生時代がほとんど描かれていないのが若干残念だが、後半への期待をつなぐ。
→下巻
*表紙の絵の左側が御曹司で右側が町の少年、ですね。左の少年はおかっぱですが、おかっぱというと「ヒカルの碁」の塔矢アキラをちょっと思い出します(名前が同じなのは偶然なのかもしれないですが)。この頃、お坊ちゃんはおかっぱにするものだったのでしょうか・・・? 子供の頃、あんまり身近におかっぱの男の子がいた記憶がないのですが、ただ近くにお金持ちがいなかっただけ・・・?
*2022年に映画化の予定があるようなのですが、HPなどは見当たらず。コロナ禍で制作が遅れているのでしょうか・・・?
かたや、町工場の息子、山崎瑛(やまざきあきら)。こなた、海運会社の御曹司、階堂彬(かいどうあきら)。
アキラとあきらの人生を30年の歳月に渡ってじっくりと追う。
元は月刊誌『問題小説』に連載されていたもの(2006~2009年)。長らく単行本化されないままでいたが、テレビドラマ化されたのを機に、2017年に徳間書店から文庫版として刊行された。
こちらは上下巻として2020年に出た集英社文庫版。
池井戸は1963年生まれ。アキラとあきらもほぼ同年代の設定と思われる。
町工場の少年、瑛は父の仕事を誇りに思っている。だが、瑛が小学生の時、父の工場は破綻する。取引先に難癖をつけられて弁償を余儀なくされたうえ、結局、取引を停止されたため、資金繰りが出来なくなったのだ。工場は差し押さえられ、一家は夜逃げ同様、母の実家へと引っ越しせざるを得なくなる。父が金策に躍起になっているのに、冷たい対応をした銀行員の姿が少年・瑛の目に強く焼き付けられる。
父が何とか再就職し、瑛が高校生になったころ、一家を再び試練が見舞う。だが、今回父のもとに姿を現した銀行員は、以前の嫌な思い出を吹き飛ばすような救いの天使だった。
大会社の御曹司、彬は幼い頃から会社経営の難しさを目の当たりにして育った。カリスマ経営者の祖父の元、父とその2人の弟が事業を取り仕切っていたが、経営手腕のある父と比べ、叔父たちの舵取りはどうも危うかった。祖父もそれを見越して、父を本業の社長につけ、叔父たちが責任を持つ関連会社を切り離すよう仕向けた。祖父が亡くなり、相続上のいざこざが生じる。何とか収めた後も、叔父たちと父の間は険悪なままだった。叔父たちは父の鼻を明かそうとするかのように、危ない賭けに打って出ようとする。歯に衣着せずに諫言しようとした銀行員の姿に彬は感銘を受ける。
瑛と彬は、実は、子供の頃、互いに深く意識せぬまま、ちらりと出会っている。大学も期せずして同門になる。
だが、2人の人生が本当に交錯するのは、就職してからのこと。
ともに、バンカーとなることを選んだ2人が激突する新人研修が1つの大きな山場である。
上巻では2人の社会人3年目まで。
大きなストーリーに加えて、2人の少年の身近な生活や心の動きも細やかに描いて読ませる。2人が出会って、互いに意識し合ったはずの大学生時代がほとんど描かれていないのが若干残念だが、後半への期待をつなぐ。
→下巻
*表紙の絵の左側が御曹司で右側が町の少年、ですね。左の少年はおかっぱですが、おかっぱというと「ヒカルの碁」の塔矢アキラをちょっと思い出します(名前が同じなのは偶然なのかもしれないですが)。この頃、お坊ちゃんはおかっぱにするものだったのでしょうか・・・? 子供の頃、あんまり身近におかっぱの男の子がいた記憶がないのですが、ただ近くにお金持ちがいなかっただけ・・・?
*2022年に映画化の予定があるようなのですが、HPなどは見当たらず。コロナ禍で制作が遅れているのでしょうか・・・?
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。現在、中雛、多分♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
この書評へのコメント
- ぽんきち2021-09-20 09:56
2021年夏文庫フェアに挑戦!(2) ナツイチ https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no402/index.html?latest=20 実施中。9月30日までです♪
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- 出版社:集英社
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- ISBN:9784087441420
- 発売日:2020年08月20日
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