ぽんきちさん
レビュアー:
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私たちは「何」を見ているか
「科学道100冊2020」の1冊。
普段、何気なく行っている「見る」という行為。何気なく周囲を見て、何があるかを認識し、自分の置かれた環境がどのようなものかを判断する。それらの1つ1つを意識して行っているわけではなくとも、私たちは「見る」ことから多くの情報を得て、状況の理解につなげている。「見る」ことの陰には、長い時間を掛けて発達してきた能力がある。
本書では、色覚、両眼視、動体視力、物体認識に的を絞って解説していく。
それらの能力をスーパーヒーローの能力になぞらえれば、テレパシー、透視、未来予見、霊読(スピリット・リーディング)となるという。
・・・待て待て、何だそれは? 何やら怪しげな話なのか・・・? アメリカン・コミックスに出てくるような超人の話・・・?
いやいや、そうではない。本書は学術論文をベースにしつつ、一般向けにわかりやすく書かれた科学読み物である。
実のところ、私たちの「視覚」の背後には、「超人的」と見なされるような能力が潜んでいる。進化の過程で、ヒトは生存のために重要な能力を身に着けてきた。「視覚」もそうした積み重ねで成り立っている。本書では、それらを紐解き、考察していく。
まずは色覚=テレパシー。
ヒトの色覚は、実は、肌の色を識別する能力が高い。ヒトの色覚を形作る錐体細胞は3種類あるが、このうち2つは特に近い波長で最大感度を示す。その箇所は肌の反射率の変化が出やすい部分である。肌の色は酸素飽和度の違いで変化を生じるが、それを読み取りやすいようになっているのだ。つまり、顔色のよさ・悪さを識別する。顔色が変わる背景には、血液の状態の変化がある。
怒っている。具合が悪い。幸せそう。
もちろん、表情や態度もあるだろうが、肌色の識別も感情の理解に役立っているというのが著者の主張である。肌の色から感情を理解するのは、色覚を持たないものからすればテレパシーに近いだろうというわけだ。
次は両眼視=透視。
動物によって、眼の付き方はさまざまである。ヒトの場合は、前面に2つの眼がつくが、真横に2つの眼を持つものもいるし、対の眼のほかに頭頂部に第三の眼を持つものもいる。それぞれそのように発展した理由はあるだろうが、ヒトの場合はどうだろうか。
種々、説はあるが、著者は「障害物の向こう側のものを捉えやすいから」との説を取る。葉や草が生い茂る森の中で、獲物を見つけやすいのが前面両眼視の特徴だというのだ。
これがつまり透視である。障害物があっても、奥を見ることができるのだ。
三番目の動体視力=未来予見には錯視の話も絡む。
最後の物体認識=霊読は若干わかりにくいが、書いたものを読むことを指す。文字を追って読むことで、情景が思い浮かぶのは、精神(スピリット)を読んでいると見なせる。
全般に、視覚の発達には、脳の働きも大きく関わってきたことが想像できる。
いずれの主張にも背景に科学的データがあり、なかなかおもしろい。
これらの解釈が唯一絶対かと言われると異論はありそうだが、仮説としても興味深く、想像力が刺激される。
では、視覚のない人から見たら、これらの能力はどう捉えられるのか等、発展的に考えていくことも可能だろう。
ポピュラーサイエンスの醍醐味を味わえる1冊。
普段、何気なく行っている「見る」という行為。何気なく周囲を見て、何があるかを認識し、自分の置かれた環境がどのようなものかを判断する。それらの1つ1つを意識して行っているわけではなくとも、私たちは「見る」ことから多くの情報を得て、状況の理解につなげている。「見る」ことの陰には、長い時間を掛けて発達してきた能力がある。
本書では、色覚、両眼視、動体視力、物体認識に的を絞って解説していく。
それらの能力をスーパーヒーローの能力になぞらえれば、テレパシー、透視、未来予見、霊読(スピリット・リーディング)となるという。
・・・待て待て、何だそれは? 何やら怪しげな話なのか・・・? アメリカン・コミックスに出てくるような超人の話・・・?
いやいや、そうではない。本書は学術論文をベースにしつつ、一般向けにわかりやすく書かれた科学読み物である。
実のところ、私たちの「視覚」の背後には、「超人的」と見なされるような能力が潜んでいる。進化の過程で、ヒトは生存のために重要な能力を身に着けてきた。「視覚」もそうした積み重ねで成り立っている。本書では、それらを紐解き、考察していく。
まずは色覚=テレパシー。
ヒトの色覚は、実は、肌の色を識別する能力が高い。ヒトの色覚を形作る錐体細胞は3種類あるが、このうち2つは特に近い波長で最大感度を示す。その箇所は肌の反射率の変化が出やすい部分である。肌の色は酸素飽和度の違いで変化を生じるが、それを読み取りやすいようになっているのだ。つまり、顔色のよさ・悪さを識別する。顔色が変わる背景には、血液の状態の変化がある。
怒っている。具合が悪い。幸せそう。
もちろん、表情や態度もあるだろうが、肌色の識別も感情の理解に役立っているというのが著者の主張である。肌の色から感情を理解するのは、色覚を持たないものからすればテレパシーに近いだろうというわけだ。
次は両眼視=透視。
動物によって、眼の付き方はさまざまである。ヒトの場合は、前面に2つの眼がつくが、真横に2つの眼を持つものもいるし、対の眼のほかに頭頂部に第三の眼を持つものもいる。それぞれそのように発展した理由はあるだろうが、ヒトの場合はどうだろうか。
種々、説はあるが、著者は「障害物の向こう側のものを捉えやすいから」との説を取る。葉や草が生い茂る森の中で、獲物を見つけやすいのが前面両眼視の特徴だというのだ。
これがつまり透視である。障害物があっても、奥を見ることができるのだ。
三番目の動体視力=未来予見には錯視の話も絡む。
最後の物体認識=霊読は若干わかりにくいが、書いたものを読むことを指す。文字を追って読むことで、情景が思い浮かぶのは、精神(スピリット)を読んでいると見なせる。
全般に、視覚の発達には、脳の働きも大きく関わってきたことが想像できる。
いずれの主張にも背景に科学的データがあり、なかなかおもしろい。
これらの解釈が唯一絶対かと言われると異論はありそうだが、仮説としても興味深く、想像力が刺激される。
では、視覚のない人から見たら、これらの能力はどう捉えられるのか等、発展的に考えていくことも可能だろう。
ポピュラーサイエンスの醍醐味を味わえる1冊。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:早川書房
- ページ数:0
- ISBN:9784150505554
- 発売日:2020年06月03日
- 価格:1166円
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