かもめ通信さん
レビュアー:
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かつてアメリカに“原爆を作らせようとして成功し、使わせまいとして失敗した男”がいた。 #科学道100冊
2016年、アメリカ合衆国のオバナ大統領(当時)が、現職としては初めて被爆地広島を訪れた。
その訪問に先だって放送されたテレビ番組を通じて、マンハッタン計画に携わった科学者たちが原爆を投下しないよう大統領に求める請願書を集めていたことを知った著者は、この件について調べはじめる。
浮かび上がるのはハンガリー生まれのユダヤ系科学者レオ・シラード。
原爆投下の6年前「ナチスに対抗するために、アメリカでも原子爆弾の研究が必要です」とアインシュタインに手紙を書かせた人物。
原爆投下の直前に「日本に警告せずに投下し、無差別に殺戮することに反対する」署名を集め、トルーマン大統領に宛てて書簡を送った人物。
“原爆を作らせようとして成功し、使わせまいとして失敗した男”
実際に署名をしたという関係者から直接話が聞けるうちにと、著者はあれこれと手を尽くして、マンハッタン計画に携わった科学者や、シラードを知る人物に取材をするために米国に向かう。
本書は取材先で出会った人々とのやりとりを含め、原爆投下反対署名の実像に迫るノンフィクションなのだが、どちらかといえば「科学」をテーマにしているというよりは、「ヒューマンドラマ」的な色合いが濃く、フリーライターが、自分が関心を寄せたテーマを追いかけて1冊の本を作り上げることの難しさを垣間見られる読み物にもなっているので、専門知識がなくてもとっつきやすく読みやすくもある。
原爆の使用に反発する科学者がいた。
軍や政府に提言をしたり、請願書を提出したりする動きも複数あった。
そんな科学者達に感化され、市民の被害を最小限にとどめるべく、代案を出す軍人もあった。
こうした手紙や請願書や発言の記録の多くが、知られてこなかったのは、長い間、機密文書として非公開だったからだ。
もっと早く、関係者の多くが健在でおられる間に公開されていたら、あるいはもっと沢山の「真実」が明るみに出たかもしれない。
そうは思いはするが、それでもやはり、今この時点で確認できることに感謝すべきなんだろう。
「公文書保存」の重要性についても考えさせられる本だった。
※掲示板読書会「科学道100冊2019」に挑んでみる!? 参加レビューです。
その訪問に先だって放送されたテレビ番組を通じて、マンハッタン計画に携わった科学者たちが原爆を投下しないよう大統領に求める請願書を集めていたことを知った著者は、この件について調べはじめる。
浮かび上がるのはハンガリー生まれのユダヤ系科学者レオ・シラード。
原爆投下の6年前「ナチスに対抗するために、アメリカでも原子爆弾の研究が必要です」とアインシュタインに手紙を書かせた人物。
原爆投下の直前に「日本に警告せずに投下し、無差別に殺戮することに反対する」署名を集め、トルーマン大統領に宛てて書簡を送った人物。
“原爆を作らせようとして成功し、使わせまいとして失敗した男”
実際に署名をしたという関係者から直接話が聞けるうちにと、著者はあれこれと手を尽くして、マンハッタン計画に携わった科学者や、シラードを知る人物に取材をするために米国に向かう。
本書は取材先で出会った人々とのやりとりを含め、原爆投下反対署名の実像に迫るノンフィクションなのだが、どちらかといえば「科学」をテーマにしているというよりは、「ヒューマンドラマ」的な色合いが濃く、フリーライターが、自分が関心を寄せたテーマを追いかけて1冊の本を作り上げることの難しさを垣間見られる読み物にもなっているので、専門知識がなくてもとっつきやすく読みやすくもある。
原爆の使用に反発する科学者がいた。
軍や政府に提言をしたり、請願書を提出したりする動きも複数あった。
そんな科学者達に感化され、市民の被害を最小限にとどめるべく、代案を出す軍人もあった。
こうした手紙や請願書や発言の記録の多くが、知られてこなかったのは、長い間、機密文書として非公開だったからだ。
もっと早く、関係者の多くが健在でおられる間に公開されていたら、あるいはもっと沢山の「真実」が明るみに出たかもしれない。
そうは思いはするが、それでもやはり、今この時点で確認できることに感謝すべきなんだろう。
「公文書保存」の重要性についても考えさせられる本だった。
※掲示板読書会「科学道100冊2019」に挑んでみる!? 参加レビューです。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:328
- ISBN:9784041058145
- 発売日:2017年10月27日
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