かもめ通信さん
レビュアー:
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人生の黄昏時に窓の外を眺めながら思い描く風景はいったいどんなものになるのだろうか。
もしあなたが、散歩中のジョー・シルヴィアを見かけたら
きっと幸福な人生を送ってきた老人に見えることだろう。
その洒落た見てくれから若い頃ならさぞかし……と
あれこれ想像を膨らませるかもしれない。
だがもしあなたが見かけたのが
夕方、車いすに座りながら大きな窓から街を眺めている彼の後ろ姿だったなら、
決して幸福な老人だとは思わないにちがいない。
とりわけ黄昏に感情が高ぶり、涙ぐみ、
唇だけでなく両手までもが震えてしまう様子に気づいたならば……。
そしてもしあなたがそんな彼と言葉を交わす機会があったなら、
ジョー・シルヴィアが老人ホームの部屋の窓から眺めているのは
立ち並ぶ高層ビルでも、住宅街でもなく、
生まれ育ったアソーレス諸島のテルセイラ島だったり、
彼が妻や子どもたちと共に移り住んだ
40年前のカリフォルニアのトゥレアリーであったりすることに
気がつくに違いない。
現実にはテルセイラもトゥレアリーも
あの頃とはすっかり変わってしまっているのだけれど……。
ジョー・シルヴィアは自分がまだジョゼー・シルヴィアだった頃、
アソーレス諸島で妻のマリーと4人の子どもたちとともに
貧しいながらも懸命に暮らしていた生活に思いをはせる。
懐かしい島の暮らしと、残してきた両親のことも。
ジョー・シルヴィアはアメリカに渡り
苦手な英語で苦労しながらも妻と共に懸命に働き
子どもたちを育て上げてきた人生を振り返る。
豊かさと引き換えにしたかのように家族の心は次第に離ればなれになり、
子どもたちは、彼の理解が及ばない
アメリカの色に染まっていってしまったけれど……。
本書は、ポルトガルのアソーレス諸島生まれの
詩人・劇作家・小説家オリヴェイラが書いた小説だ。
オリヴェイラはアソーレス文学と呼ばれる
アメリカへの移住をテーマにした小説の代表的な作家で、
ポルトガル文学界でも偉大な巨匠と評価されているのだという。
家族を引き連れてポルトガルからアメリカへ移住したジョー・シルヴィアを軸に
3世代のあれこれをいきいきと描き出した物語は、
決して長くはないにもかかわらず、ずしりと読み応えがあり、
思わず涙を誘われもする。
けれども、本を閉じたとき、私が思い浮かべていたのは
私自身が人生の黄昏時に窓の外を眺めながら思い描く風景は
いったいどんなものになるのだろうかということだった。
きっと幸福な人生を送ってきた老人に見えることだろう。
その洒落た見てくれから若い頃ならさぞかし……と
あれこれ想像を膨らませるかもしれない。
だがもしあなたが見かけたのが
夕方、車いすに座りながら大きな窓から街を眺めている彼の後ろ姿だったなら、
決して幸福な老人だとは思わないにちがいない。
とりわけ黄昏に感情が高ぶり、涙ぐみ、
唇だけでなく両手までもが震えてしまう様子に気づいたならば……。
そしてもしあなたがそんな彼と言葉を交わす機会があったなら、
ジョー・シルヴィアが老人ホームの部屋の窓から眺めているのは
立ち並ぶ高層ビルでも、住宅街でもなく、
生まれ育ったアソーレス諸島のテルセイラ島だったり、
彼が妻や子どもたちと共に移り住んだ
40年前のカリフォルニアのトゥレアリーであったりすることに
気がつくに違いない。
現実にはテルセイラもトゥレアリーも
あの頃とはすっかり変わってしまっているのだけれど……。
ジョー・シルヴィアは自分がまだジョゼー・シルヴィアだった頃、
アソーレス諸島で妻のマリーと4人の子どもたちとともに
貧しいながらも懸命に暮らしていた生活に思いをはせる。
懐かしい島の暮らしと、残してきた両親のことも。
ジョー・シルヴィアはアメリカに渡り
苦手な英語で苦労しながらも妻と共に懸命に働き
子どもたちを育て上げてきた人生を振り返る。
豊かさと引き換えにしたかのように家族の心は次第に離ればなれになり、
子どもたちは、彼の理解が及ばない
アメリカの色に染まっていってしまったけれど……。
本書は、ポルトガルのアソーレス諸島生まれの
詩人・劇作家・小説家オリヴェイラが書いた小説だ。
オリヴェイラはアソーレス文学と呼ばれる
アメリカへの移住をテーマにした小説の代表的な作家で、
ポルトガル文学界でも偉大な巨匠と評価されているのだという。
家族を引き連れてポルトガルからアメリカへ移住したジョー・シルヴィアを軸に
3世代のあれこれをいきいきと描き出した物語は、
決して長くはないにもかかわらず、ずしりと読み応えがあり、
思わず涙を誘われもする。
けれども、本を閉じたとき、私が思い浮かべていたのは
私自身が人生の黄昏時に窓の外を眺めながら思い描く風景は
いったいどんなものになるのだろうかということだった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2019-09-18 05:20
2ヶ月にわたりおつきあいいただいてきた掲示板企画
<ゆったり旅するポルトガル #本で旅する世界旅行>
https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no364/index.html?latest=20
もいよいよ来週月曜日(9/23)に帰着することに。
未だ間に合います。
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- 出版社:武田ランダムハウスジャパン
- ページ数:216
- ISBN:9784270003428
- 発売日:2008年05月22日
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