たけぞうさん
レビュアー:
▼
雷に打たれた。ただ、ただ衝撃。
話題になっているしな、ぐらいの気持ちで手に取りました。
ベストセラーは無難な本という印象があったのですが、
この本は全然違いました。
著者の冷静で柔らかい筆致のおかげでベストセラーになっているのでしょうが、
内容の深さが尋常ではないレベルでした。
頼むから読んでくれという気持ちでいっぱいです。
本屋大賞のノンフィクション部門の最優秀作ですが、
この本を超える作品はしばらく出てこないかもしれないと
思ってしまいました。
ブレイディみかこさんは、イギリスのブライトン在住です。
イギリスに渡って二十年ですが、著者略歴から豪快な人みたいです。
傍から見ればものすごい環境に住んでいると思うのですが、
こんなのたいしたことないよという声が聞こえてきそうな、
持ち前の肝の太さを感じさせるエピソードがいっぱいです。
読んでいて楽しいですよ。
それでいて、他者への配慮を欠かさないあたりが、
抜群のバランス感覚も持ち主だと思いました。
これは、地元のもと最底辺中学校に入った息子を通した、
イギリス社会の現実を足元から見つめる作品です。
そして、息子とのやり取りを通じて、人間的に大切なものを
いくつも見せてくれるのです。
著者のポリシーなのですが、日常の小さな事を伝えることで、
それが政治や社会につながっていると気づかせる書き方をしています。
日常という立ち位置は絶対に崩しません。
ちっぽけな現実の重さから、真実とは何かを実感させてくれるのです。
イギリスは先進国のはずですよね。
いまは昔ほど経済的に優位ではないにしろ、憧れの国ですよね。
でも、こんなにすさんでいて、社会的格差(ソーシャルアパルトヘイトと
呼ぶらしいです)が大きくて、自分の特権があって当たり前と考える
不寛容さに気づきもしない社会だったとは、思いもよりませんでした。
これがマスコミのもてはやすグローバル化で、
自己責任の行き着く先だとしたらくそくらえです。
ブレクジットとか、トランプ旋風の背景が垣間見えます。
先進国の定義は一人当たりのGDPだけでいいのか、疑問に思いました。
アメリカの貧富の差って有名ですよね。イギリスも同じです。
その実態がここにあります。
ブレクジットの大きなテーマの一つに移民問題がありますが、
現場の子どもたちにどんな教育がされているかを知ったら
こころに伝わるものがありますよ。自分の見聞きしていたことが、
いかに狭い視野のことだったのかを思い知らされます。
それでも、イギリスの道徳教育は日本よりもはるかに突っ込んでいて、
日本は周回遅れどころが同じトラックにいない感があるレベル差です。
差別を徹底的に否定する教育です。
それなのに、日本の道徳レベルが高水準にあるのは、
歴史と国民性が関係しているのでしょうね。奇跡的な状況です。
イギリスは、紳士・淑女という呪縛で思考停止しているのかもしれません。
そうでなければ、なぜこんな格差社会となってしまったのか理解できないです。
差別は、人種問題に当てはめると分かりやすいテーマになりますが、
この本を読んでその本質を見たように思います。
ジェンダー問題も同じで、人間は結局、自分の身を守るために
いろいろなものさしを持ち込んで区別する習性があるのでしょうね。
人種問題に始まり、ジェンダー、セクハラ、パワハラなど、
大なり小なり本当にたくさんあります。
地方創生も、言葉はきれいですが区別の形の一つなんですよね。
そうでなければ、首都一極集中問題を何十年取り組んでも、
改善の兆しすらないことの説明がつかないですから。
この区別が、差別につながりやすいのです。
でも人間の本能が身を守るために起こすことであるので、
差別を解消するというのは夢物語に過ぎず、よくない区別を素早く気づいたり、
差別の発生を早急に減らすような意識改革で精一杯ではないかと思うのです。
考えすぎてしまうとやるせない気持ちにもなりますが、
そんなヘビーな問題を、小さくまとめて見せてくれるので
非常に心に残りました。そんなスゴ本です。
ベストセラーは無難な本という印象があったのですが、
この本は全然違いました。
著者の冷静で柔らかい筆致のおかげでベストセラーになっているのでしょうが、
内容の深さが尋常ではないレベルでした。
頼むから読んでくれという気持ちでいっぱいです。
本屋大賞のノンフィクション部門の最優秀作ですが、
この本を超える作品はしばらく出てこないかもしれないと
思ってしまいました。
ブレイディみかこさんは、イギリスのブライトン在住です。
イギリスに渡って二十年ですが、著者略歴から豪快な人みたいです。
傍から見ればものすごい環境に住んでいると思うのですが、
こんなのたいしたことないよという声が聞こえてきそうな、
持ち前の肝の太さを感じさせるエピソードがいっぱいです。
読んでいて楽しいですよ。
それでいて、他者への配慮を欠かさないあたりが、
抜群のバランス感覚も持ち主だと思いました。
これは、地元のもと最底辺中学校に入った息子を通した、
イギリス社会の現実を足元から見つめる作品です。
そして、息子とのやり取りを通じて、人間的に大切なものを
いくつも見せてくれるのです。
著者のポリシーなのですが、日常の小さな事を伝えることで、
それが政治や社会につながっていると気づかせる書き方をしています。
日常という立ち位置は絶対に崩しません。
ちっぽけな現実の重さから、真実とは何かを実感させてくれるのです。
イギリスは先進国のはずですよね。
いまは昔ほど経済的に優位ではないにしろ、憧れの国ですよね。
でも、こんなにすさんでいて、社会的格差(ソーシャルアパルトヘイトと
呼ぶらしいです)が大きくて、自分の特権があって当たり前と考える
不寛容さに気づきもしない社会だったとは、思いもよりませんでした。
これがマスコミのもてはやすグローバル化で、
自己責任の行き着く先だとしたらくそくらえです。
ブレクジットとか、トランプ旋風の背景が垣間見えます。
先進国の定義は一人当たりのGDPだけでいいのか、疑問に思いました。
アメリカの貧富の差って有名ですよね。イギリスも同じです。
その実態がここにあります。
ブレクジットの大きなテーマの一つに移民問題がありますが、
現場の子どもたちにどんな教育がされているかを知ったら
こころに伝わるものがありますよ。自分の見聞きしていたことが、
いかに狭い視野のことだったのかを思い知らされます。
それでも、イギリスの道徳教育は日本よりもはるかに突っ込んでいて、
日本は周回遅れどころが同じトラックにいない感があるレベル差です。
差別を徹底的に否定する教育です。
それなのに、日本の道徳レベルが高水準にあるのは、
歴史と国民性が関係しているのでしょうね。奇跡的な状況です。
イギリスは、紳士・淑女という呪縛で思考停止しているのかもしれません。
そうでなければ、なぜこんな格差社会となってしまったのか理解できないです。
差別は、人種問題に当てはめると分かりやすいテーマになりますが、
この本を読んでその本質を見たように思います。
ジェンダー問題も同じで、人間は結局、自分の身を守るために
いろいろなものさしを持ち込んで区別する習性があるのでしょうね。
人種問題に始まり、ジェンダー、セクハラ、パワハラなど、
大なり小なり本当にたくさんあります。
地方創生も、言葉はきれいですが区別の形の一つなんですよね。
そうでなければ、首都一極集中問題を何十年取り組んでも、
改善の兆しすらないことの説明がつかないですから。
この区別が、差別につながりやすいのです。
でも人間の本能が身を守るために起こすことであるので、
差別を解消するというのは夢物語に過ぎず、よくない区別を素早く気づいたり、
差別の発生を早急に減らすような意識改革で精一杯ではないかと思うのです。
考えすぎてしまうとやるせない気持ちにもなりますが、
そんなヘビーな問題を、小さくまとめて見せてくれるので
非常に心に残りました。そんなスゴ本です。
お気に入り度:









掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
この書評へのコメント
コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:新潮社
- ページ数:256
- ISBN:9784103526810
- 発売日:2019年06月21日
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。