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ぽんきち
レビュアー:
35歳、元極道の男が駆け抜ける大阪ノワール。
「俺」、伊達雅樹。35歳。元は極道だったが、とある事情で同じ組の者を殺して服役した後、組にも戻れず、ふらふら暮らしている。
日雇いバイトをしては、パチンコやソープランドに注ぎ込む日々。安定はないし未来もない。とはいえ、さほど悲観もしていない。
ある時、ソープランドで出会った詩織に惚れる。詩織の指名料は高かった。稼ぎ以上の金を使い、そしてパチンコもやめられないとなれば、金はあっさり底をつく。頼る先は当然のように闇金である。「俺」は、暴力団がバックについていない店を選び、ニセの身分証明書を使ってあちこちで金を借りまくる。返す当てなどない。バックレるつもりなのである。しかし、なぜか足がついた。そして現れたのは、かつての兄貴分だった山本だった。

物語は、「俺」の一人称視点と、山本を巡る三人称視点で交互に描かれる。

山本はある組の幹部だった。本をよく読み、インテリ風なところもあるが、冷酷で武闘派である。いずれは組長になろうかと目されていたが、その役には別の者が収まりそうな気配だった。同時に別の組の者とのいざこざもあり、その身辺は段々と物騒になっていく。

「俺」は、借金の返済のために、山本の使いっぱしりをするようになる。バイトといえば聞こえはよいが、要は表に出せない仕事である。詐欺の出し子、怪しいブツの運び手、美人局の脅し役など。
そんな日々の合間に、昔の思い出もよみがえる。実のところ、「俺」は兄貴分の山本を慕い、ずいぶんその影響もうけていたのだ。
だがそうこうするうち、「俺」も徐々に組の闘争に巻き込まれていく。

物語を牽引するのは、「俺」の軽薄なようで本質を突いているようでもある、饒舌な語りである。隠れた主役ともいえるのがコテコテの大阪弁で、「俺」と山本の軽妙なようなうそ寒いようなやり取りは癖になる後味がある。

タイトルの「闇夜の底で踊れ」は、山本が「俺」を評していう「暗中コサック」に通じる。もちろん、元は「暗中模索」だが、「俺」の生き方は、暗闇で困ったなと熟慮するのではなく、そんな中でもコサックダンスを踊っている無茶苦茶さがあるというのだ。わかったようなわからないような話だが、何だか言いえて妙な感じもしてくる。

ノワールなのだが、本作には実は仕掛けがある。
「俺」と山本の再会は偶然ではない。
構成の見事さも読ませどころの1つである。

暴力シーンもあり、万人にお勧めとまでは言えないが、なかなかの意欲作。
著者は執筆当時、弱冠19歳。本作で小説すばる新人賞を受賞している。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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この書評へのコメント

  1. ぽんきち2021-09-07 13:41

    2021年夏文庫フェアに挑戦!(2) ナツイチ https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no402/index.html?latest=20 実施中です! 9月3連休までやってます☆

    ぜひ覗いてみてください☆

  2. No Image

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