ぽんきちさん
レビュアー:
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数学者ってどんな人たち?
『科学道100冊』の1冊。
一般に、数学者とあまり縁のない人たちは、数学者にどんなイメージを抱いているだろう。
自分の身近でない分野のことはよくわからないものではあるが、それにしても数学者って、何だか浮世離れしたような仙人のような、あるいはちょっと変わった人のような、そんな感じがするのではないだろうか。
それは多分、数学自体が抽象的な「わかりにくい」事柄を扱っていることにも由来するのだろう。
何だか「美しい」ことをやっているようだ。けれども何がどう美しいのか、数式を見てもちんぷんかんぷんでよくわからない。
いったい彼らは日々何を考え、どんな生活を送っているのだろう。
これはそんな数学者たちの素顔に迫る対談集である。
登場するのは日本を代表する数学者や在野の数学者たち。聞き手は小説家・ノンフィクション作家である。
オイラーの数式を書き写しながら、その視点に近づいていく者。
世界を飛び回り、多くの数学者と議論を交わし、理論を発展させていく者。
数学がテーマのイベントを主催する者。
大人のための数学教室を開く者。
数学は人生だという者。
アプローチはさまざまで、その世界の奥深さに驚かされる。
もちろん、実際の研究の深いところまではわからない。才能や努力なしには到達しえない厳しい世界であり、一足飛びに理解できるようなものではない。
だが、聞き手である著者が、丁寧に真摯に聞き取っていく中で、朧にそのイメージが浮かび上がっていく。
数学者たちが取り組む数学は、いわゆる受験数学ではない。
問題のパターンがあり、定まった解法があるようなものではない。
ある種、問題を解くよりも、問題を作り出す方が大切であり、同じ問題を解くにも人によって解き方が違うこともある。同じ山でも違うルートを通ることもできるわけだ。
ある問題の解が別の問題を導いたり、すでに解けている問題に別の解法を与えたり、といったこともある。
時には、数学自体ですら、数学的な考察の対象になる。
さまざまなものの見方。さまざまな考え方。
勝ち負けを争うものではないから、数学者同士は得てして仲がよいという。
個人的には、数学史家でもある数学者の話が特におもしろかった。
鶴亀算と連立方程式を例に出し、彼は言う。連立方程式を手に入れて、確かに便利にはなった。けれども抽象化が進みすぎ、現代数学は面白くなくなってしまったのではないか。
うーん、そうなのか・・・。
数学には漠然としたあこがれがありつつ、ずっとどこから手をつけてよいのかわからずにいる。最先端に触れることができないのはわかってはいるのだが、素人なりに親しむとしたら、どうしたらよいのだろうか。
そのヒントがちょっともらえたような、でもやはりちょっと難しいような、そんな読み心地である。
*同著者の『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』もよかったです。
一般に、数学者とあまり縁のない人たちは、数学者にどんなイメージを抱いているだろう。
自分の身近でない分野のことはよくわからないものではあるが、それにしても数学者って、何だか浮世離れしたような仙人のような、あるいはちょっと変わった人のような、そんな感じがするのではないだろうか。
それは多分、数学自体が抽象的な「わかりにくい」事柄を扱っていることにも由来するのだろう。
何だか「美しい」ことをやっているようだ。けれども何がどう美しいのか、数式を見てもちんぷんかんぷんでよくわからない。
いったい彼らは日々何を考え、どんな生活を送っているのだろう。
これはそんな数学者たちの素顔に迫る対談集である。
登場するのは日本を代表する数学者や在野の数学者たち。聞き手は小説家・ノンフィクション作家である。
オイラーの数式を書き写しながら、その視点に近づいていく者。
世界を飛び回り、多くの数学者と議論を交わし、理論を発展させていく者。
数学がテーマのイベントを主催する者。
大人のための数学教室を開く者。
数学は人生だという者。
アプローチはさまざまで、その世界の奥深さに驚かされる。
もちろん、実際の研究の深いところまではわからない。才能や努力なしには到達しえない厳しい世界であり、一足飛びに理解できるようなものではない。
だが、聞き手である著者が、丁寧に真摯に聞き取っていく中で、朧にそのイメージが浮かび上がっていく。
数学者たちが取り組む数学は、いわゆる受験数学ではない。
問題のパターンがあり、定まった解法があるようなものではない。
ある種、問題を解くよりも、問題を作り出す方が大切であり、同じ問題を解くにも人によって解き方が違うこともある。同じ山でも違うルートを通ることもできるわけだ。
ある問題の解が別の問題を導いたり、すでに解けている問題に別の解法を与えたり、といったこともある。
時には、数学自体ですら、数学的な考察の対象になる。
さまざまなものの見方。さまざまな考え方。
勝ち負けを争うものではないから、数学者同士は得てして仲がよいという。
個人的には、数学史家でもある数学者の話が特におもしろかった。
鶴亀算と連立方程式を例に出し、彼は言う。連立方程式を手に入れて、確かに便利にはなった。けれども抽象化が進みすぎ、現代数学は面白くなくなってしまったのではないか。
うーん、そうなのか・・・。
数学には漠然としたあこがれがありつつ、ずっとどこから手をつけてよいのかわからずにいる。最先端に触れることができないのはわかってはいるのだが、素人なりに親しむとしたら、どうしたらよいのだろうか。
そのヒントがちょっともらえたような、でもやはりちょっと難しいような、そんな読み心地である。
*同著者の『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』もよかったです。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
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- 出版社:幻冬舎
- ページ数:310
- ISBN:9784344034501
- 発売日:2019年04月11日
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