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ぽんきち
レビュアー:
遺伝子研究の現在地点は。そして未来はどっちだ。
『早川書房創立80周年読書会「ハヤカワ文庫の80冊」を読もう!』参加書評。
上巻はこちら

インド系アメリカ人著者による遺伝子研究史。
上巻は比較的時系列に沿って追ってきたが、下巻では主に、その発展に伴って生じてきた問題について考察する。

遺伝病として知られるものの中には、ある1つの遺伝子の重大な欠陥が大きな病変を生じるものがある。こうした場合、単純に言えば、その遺伝子を修正できれば病気は生じない、あるいは治るだろうということになるが、ことはそう簡単ではない。
概念的にはそうであっても、技術が追い付かなかった例が初期の遺伝子治療で、ベクター(乗り物)として使用したウイルスに対する激しい免疫反応が起き、患者は悲惨な亡くなり方をしてしまった。

出生前診断が可能になったことで、親たちが誕生前の子供の疾患を知ることも可能になった。もし、「重篤な」疾患を発症する可能性が高いと言われたら、中絶するかどうかの決断をしなくてはならない。だが、それは本当に確実に発症するのか? 疾患や障害があったとして、その子が生きるかどうかを、親が決めるのは妥当なのか?

実のところ、多くの「遺伝病」はかなり複雑で、複数の遺伝子の作用、そして環境要因によって病気が発現する。「氏か育ちか」といえば、どちらもある程度関係がある。
複数の遺伝子が関与するような場合、遺伝子を置き換えることが技術的に可能となったとしても、どこまでを置き換えるのか、という問題もある。

そうしてさらに理想的な傷のない遺伝子を追い求めていくことはデザイナーベイビーとも地続きの話になっていく。

下巻では、著者の家系に関するエピソードはさらに重要な意味を持つ。
自身の問題にもなりうる、こうした問題についての地に足がついた考察は、さまざまな問題を提起する。

下巻の内容はほぼ現代であり、研究者でもある著者が、実際に面識がある科学者らもいる。かれらの人間ドラマもまた興味深く読めるところである。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1832 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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