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Wings to fly
レビュアー:
ナチスドイツ占領下の小さな島で、住人たちに笑いと勇気を与えたのは、ある読書会の存在だった。
☆上下巻合わせた書評です。

第二次世界大戦が終わって間もない頃、ロンドンに住む新進作家のジュリエットのもとに、見知らぬ人からの手紙が届く。差出人は英仏海峡に浮かぶガーンジー島の住人、農夫のドージーからだった。

以前あなたのものだったチャールズ・ラムの随筆が、今ぼくの手元にあります。この本は、ドイツ軍がここを占領している間ぼくを笑わせてくれました。他の作品も読みたいのに、島には一軒も本屋がないのです。ロンドンに注文したいので、すみませんが本屋の名前と住所を教えていただけますか?
そしてこの一節に、ジュリエットは俄然興味をひかれたのだった。
「ガーンジー読書とポテトピールパイの会」が誕生したのは、もとはといえばローストピッグをドイツ軍の眼から隠すためでした。

ジュリエットと農夫ドージーの間に文通が始まり、物語は手紙で綴られてゆく。文通相手は読書会のメンバーにも広がり、英独開戦と同時に5年間ナチスに占領され続けた島での出来事が、ジュリエットに明かされてゆく。英国本土との通信回線は遮断され、戦況も疎開した子どもたちの安否も不明。やがて物資の輸送が滞り食料も燃料も不足し、彼らは身も心も飢えていた。そんな生活に光を与え人々を結ぶ絆となったのは、優しく勇敢なエリザベスと、読書会の存在だった。

ドイツの司令官を欺く計略が始まりとはいえ、聖書や種のカタログや「養豚新聞」以外の読み物を知らなかった人々は、『嵐が丘』や『マルクス・アウレリウスの自省録』、シェークスピアやワーズワースに出会う。読後の個性的な感想には笑いを誘われもするが、彼らはそれぞれに文学から勇気をもらい慰めを見出す。そして読書会は次第に、聞き手にその本を読みたいと思わせることが話し手の醍醐味になってゆく。

ユーモラスで実直で真心にあふれる登場人物たちが魅力的だ。誰かに本を紹介する楽しみ、また本について語り合う楽しみを知っている皆さんは、きっと本から得たもので人生を豊かにした人々の姿や、読書が繋げてゆく人の輪に共感を覚えることだろう。ロマンチックで温かく、清々しい物語だ。

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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. Wings to fly2015-09-16 16:43

    こちらの読書会も、どうぞよろしくお願いします<m(__)m>
         ↓
    http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no229/index.html?latest=20

    ただいまのメンバー23名、参加者募集中です!!

  2. 星落秋風五丈原2015-09-16 23:08

    あ!読まれたんですね。

  3. Wings to fly2015-09-17 06:48

    はい(^^)面白くて上・下巻あっと言う間に読みました!
    ガーンジー島の人たちが素朴で温かくて、私もずっと滞在していたかったです。モンゴメリの作品に出てくるアボンリーの村みたい。
    作者がこの一冊だけを書き上げて亡くなったのが残念です。この方の作品、もっと読んでみたかったと思いました。

  4. No Image

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