しずくと祈り 「人影の石」の真実





「ヒロシマの物語に登場する人々は過去の亡霊ではありません。かつてこの世界で私たちと同じように笑ったり泣いたりしていた人々であり、未来の私たちでもありうるのです」(作者による本書あとがきより)
ぱせりさんの書評で本書のこと知りました。感謝いたします。 今年5月に出版された本書はフィクショ…

本が好き! 1級
書評数:2305 件
得票数:44102 票
「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。





「ヒロシマの物語に登場する人々は過去の亡霊ではありません。かつてこの世界で私たちと同じように笑ったり泣いたりしていた人々であり、未来の私たちでもありうるのです」(作者による本書あとがきより)
ぱせりさんの書評で本書のこと知りました。感謝いたします。 今年5月に出版された本書はフィクショ…





「1941年6月14日、恐怖が頂点に達した。一夜にして、ラトビア人の1万5424人が(シベリアに)強制追放となった。追放者のなかには、幼児290人、60歳以上の人が55人含まれていた」(本書より)
題名は比喩ではありません。作者の母親に実際に起ったことです。彼女は14歳の時に夜中に叩き起こされてシ…



「ベルリンの警察官を殺人罪で起訴するなど…ミュンヘンのビール祭で、酔っ払いを逮捕するようなものだ」 第二次世界大戦直前のベルリンを舞台とする私立探偵ベルンハルト・グンター・シリーズ第二作です。
スコットランド出身の作家フィリップ・カー(1956-2018)による、ナチス統治下のベルリンで起きる…





「『影の軍隊』はレジスタンス運動に基づいた本だよ。人類史上でも悲劇的なあの時代に関する記録のなかで、最も上質で完成された作品なんだ」 本書を映画化したジャン=ピエール・メルヴィル監督の言葉です。
『昼顔』(1929年)の作者ジョゼフ・ケッセル(1898-1979)は、第二次大戦中は反ナチスのレジ…




「すべてのドイツ人が1933年3月を境に別人になった。わたしが常々言うように、”銃口の前では、誰もが国家社会主義者”なのだ」(本書より) 1933年3月、ヒトラーは国会選挙の結果、政権を掌握しました。
「人それぞれに腐敗の形があるというのが、国家社会主義政権下の生活のきわだった特徴だろう。政府は、ワイ…




「だが、グレースはいったではないか。あのとき生徒たちが抗議したのは、学校で、自分たちの頭に『ごみ』をつめこまれることに抗議したのだと。じゃあ、自由になった学校では、なにを学ぶのだろう」(本書より)
作者のビヴァリー・ナイドゥーは、1945年、アパルトヘイト政策下の南アフリカに生まれた白人女性です。…





「世論の専制は、変わった人間を非難するものだ。だから、まさしく、この専制を打ち破るために、われわれはなるべく変わった人になるのが望ましい」(本書より)
ロンドン生まれのJ.S.ミル(1806-1873)は、カール・マルクス(1818-1883)や、フリ…



「その場にいなかった人にはなにが起こったのか想像もできない」 作者の日本在住時、アポパートの隣室に独りで住んでいた老女性Hは、いつもこの言葉から始め、自らの広島被爆体験を語ったそうです。
本書の冒頭には、作者による『日本の読者へ』と題する文章が収められています。そこでは、原爆投下について…




「世界のさいはて、ちっちゃな島の てっぺんに、灯台がたっている。 えいえんにつづくようにと、たてられた。 遠くの海まで、光をおくり、 船をあんぜんに、みちびく」(本書より)
oldmanさんの書評で、本書のことを知りました。感謝いたします。 1970年オーストラリア生…




「僕の親爺は百姓である。もう齢、60にあまって、なお毎日、耕したり、肥桶をかついだりである。寒い日には、親爺の鼻さきに水ばなのしずくが止まっている。時々それがぽとりと落ちる」(本書収録『小豆島』より)
本書の作者・黒島伝治(1898-1943)のことは、燃えつきた棒さんが、このサイトの自己紹介の中で生…




「人間はまともに生きるのだ、な、きみ。そして『償い』なんぞはできはせんということだ」(本書収録『清算』より) 「まともに生きる」ことにこだわったハンガリーの作家デーリ・ティボルの小説が印象的です。
本書には、二人のハンガリーの作家による六つの中短篇が収録されています。作家単位に、特に印象的な作品を…




TVドラマ『将軍』の原作者として有名になった作者は、太平洋戦争には英兵として参戦し、シンガポールの日本軍のチャンギ捕虜収容所で、1942年から終戦まで過ごしました。その実体験が反映された小説です。
本書の作者ジェームズ・クラベル(1921-1994)は、アメリカのTVドラマ『将軍』の原作者として今…




第二次大戦中イタリア軍に占領された、旧ユーゴスラビアの小さな田舎町が舞台の小説というと、レジスタンス、占領軍による住民への迫害等を自然にイメージしてしまいますが、そう思っていると、うっちゃられます。
モンテネグロの作家ミオドラグ・ブラトーヴィッチ(1930-1991)が書いた本書は、最初は1962年…





フィクションですが、アイルランドで実際に長年存在した、未婚で母親となった娘を収容するカトリック系の施設で行われていた虐待を扱った作品です。
星落秋風五丈原さんの書評で本書のことを知りました。感謝いたします。 本書の冒頭には「アイルラン…





本書『ドリナの橋』は、旧ユーゴスラビアで、正教徒の多いセルビアと、イスラム教徒の多いボスニアの境界を分けていたドリナ川にかかる橋が主役の、まさに大河ドラマです。
1961年にノーベル文学賞を受けたイヴォ・アンドリッチ(1892-1975)は、本書『ドリナの橋』の…




「悪いのはいつだって、こちとらなんだ。いいか、バクハ、どんなことがあっても上のカーストの人たちには逆らうんじゃないぞ」(本書の主人公の父親の言葉)
新月雀さんとぷるーとさんの書評で、本書のことを知りました。感謝いたします。 作者М.R.アナン…




「『ああ、そうか』 とても簡単な、彼らが現れた答えにたどり着いた。 『みんな、野球がやりたかったんだ』」(表題作より)
本書は、万城目学が2023年に刊行した単行本で、京都を舞台にした二つの作品、表題作の中篇と短篇が一作…




「士大夫を言論を理由として殺してはならぬこと」 宋の太祖は、自分の後に皇帝となった者だけが見ることができる「石刻遺訓」と呼ばれる宋の政治指針を石に刻みましたが、そこに刻まれていた一文です。
全六巻の最終巻です。本書では、唐の末期から始まり、唐の滅亡後の五代十国、北宋、南宋の時代を経て、元が…




第三世界という言葉もあまり使われなくなったようですが、簡単に言うと、冷戦時代に東西どちらにも属さなかった国の総称です。
學藝書林が刊行した「全集・現代世界文学の発見」全12冊の第9巻です。本書出版時の1970年には、まだ…



「黒人と暴力」というテーマの本ですが、黒人が受けた暴力だけでなく、黒人が行った暴力を扱った作品も収められていますし、必ずしも暴力が中心に据えられた作品ばかりではありません。
1969年から70年にかけて、學蓺書林が刊行した、テーマ別に分かれた全12巻「全集・現代世界文学の発…