台北プライベートアイ (文春e-book)【Kindle】
五十歳を目前に妻に逃げられ、仲間に罵詈雑言を吐きちらした劇作家にして大学教授が台北の日も差さない臥龍街の安アパートにひきこもって私立探偵を始める。ところが連続殺人事件に巻き込まれ、あわやという目に。
原題は<Private Eyes>。私立探偵を表す「プライベートアイ」はふつう<Private Ey…
本が好き! 1級
書評数:317 件
得票数:6342 票
散歩と読書の毎日。心に残った本について、心覚えに書評らしきものを書いています。
外国文学が好きで、よく読みます。
五十歳を目前に妻に逃げられ、仲間に罵詈雑言を吐きちらした劇作家にして大学教授が台北の日も差さない臥龍街の安アパートにひきこもって私立探偵を始める。ところが連続殺人事件に巻き込まれ、あわやという目に。
原題は<Private Eyes>。私立探偵を表す「プライベートアイ」はふつう<Private Ey…
パスティシュ風味を利かせた、ビブリオ・ミステリの姿を借りたポスト・モダン小説。翻訳小説好きはもちろんだが、ふだんは外国文学を敬遠しているような、日本の純文学が好きな読者にこそ手に取ってもらいたい。
一口に言えば、夭折により作品数が極めて少ないマイナー・ポエットの未発表原稿をめぐる探索行。いうところ…
逞しい女たちの生き方を中心に据えながら、この地方ならではの独特の文化を点景に、古くから続く歴史と文化を持つバスク地方の光と影を、人々の哀歓に寄り添いながらくっきりと描き分けた現代バスク文学の傑作。
<上・下巻併せての評です> ピレネー山脈の両麓に位置してビスケー湾に面し、フランスとスペイン両…
「幻想」の要素はほんのわずか。ガチなSFのような壮大な異世界はない。人が気づかなかったら、世界の傍らにずっと存在し続ける。見る眼を持つ人にだけ存在する、精緻に作りこまれた小世界が、この作家の持ち味。
世界幻想文学大賞受賞作である中篇三篇、ネビュラ賞を受賞した短篇一篇を収録したエリザベス・ハンドの傑作…
『歩道橋の魔術師』、『自転車泥棒』の作者、呉明益による、これは最愛の者を失い、自らを失いかけていた主人公が、「まれびと」によって新しい生を得る物語。近未来を描くSF、ファンタジーとも読める長篇小説。
海の上をぷかぷか浮きながら漂う島といえば、我々の世代は『ひょっこりひょうたん島』を思い出すが、時代が…
年老いた者には日々の何気ない日常の持つ滋味を、若者には己の自我に手を焼く疾風怒濤の惑乱を、そして、齷齪と人生を生きる者には、かつて夢見た何処の誰とも知れぬ流れ者だけが味わうことのできる放逸の生を。
薫は東京の私立男子校に通う高校二年生。学校が休みになる八月の一か月間、紀伊半島にある砂里浜(さりはま…
『許されざる者』のラーシュ・マッティン・ヨハンソンに毛嫌いされている、チビデブで仕事には不熱心、差別意識丸出しで他人を罵倒し続け、自己評価は異様に高い、エ―ヴェルト・ベックストレーム警部再登場!
「チビデブ」で、仕事には不熱心。口にこそしないが、内心では差別意識丸出しで他人をけなし続け、当然なが…
旧作の登場人物が一堂に会し、まるで同窓会みたいにてんやわんやを繰り広げる、後日譚という仕掛けが楽しい。ファンなら、懐かしい顔ぶれがそろって新しい事件に取り掛かる様子を見られてたまらないだろう。
ドン・ウィンズロウの最新作は意外なことに中篇集。しかも、全六篇のどれも少しずつタッチが異なるところが…
自分流に生きるのは骨が折れる。実にその通り。できるなら、人に合わせ、時流に合わせて生きていくのが楽に決まっている。でも、それができない人間がいる。フランク・マシアーノがそうだった。
<上下巻併せての評です> 「自分流に生きるのは骨が折れる」これが書き出し。実にその通り。できる…
二人の男と一人の女、それに車一台あれば映画が撮れる、と言ったのはゴダールだったが、映画が撮れるなら小説だって書ける。おまけに二人の男はスパイである。冷戦後リストラされた二人の男のそれぞれのゲームとは
元英国情報部出身で、数々の名作を生みだし、スパイ小説というジャンルを確立したジョン・ル・カレが昨年十…
上層部に疎まれ、同僚に嫌われている刑事と、頭脳は天才的ながら、他人との関係がうまく処理できず、いじめを受けて孤立している分析官がコンビを組み、犯人を追い詰めて行くという、けっこうありがちなパターン。
イングランド北西部カンブリア州はなだらかな丘陵や山の多い地域。厳しい冬が過ぎ、春の日差しに露に濡れた…
この小説は『ドン・キホーテ』に倣っている。遍歴を定めとする亡命者に書庫はない。文学は予め自分の中に入っていなければならない。実在する本は時折り開いて、そこにあることを確かめるよすがなのかもしれない。
ゼブラ(シマウマ)というのは本名ではない。父が死んだ時、木立ちを透いて棺の上に光が指して縞を作った。…
王政復古から三年後のイングランド、オックスフォード学寮。混乱を極める時代の黎明期、歴史に名を残す実在の人物が数多登場し、それぞれの経歴に応じた役どころで毒殺事件の解決に向けて立ち回る一大歴史ミステリ
<上・下巻併せての評です> 時は一六六三年三月。王政復古から三年がたち、イングランドは落ち着き…
ヨーロッパとアメリカを股にかけた壮大な謎解きミステリであり、スパイ小説でもある、一大エンターテインメント。構造主義やポスト構造主義華やかなりし時代を知る者には、ほろ苦い思いを抱かせる問題作である。
評を書くときには、読者がその本を読む気になるかどうかを決める際の利便を考慮し、どんなジャンルの本かを…
ユリウス・カエサルの死に始まり、アウグストゥスの死をもって幕を閉じる歴史小説である。思いがけなくローマを統べることになった人物の、稀有な半生とそれ故に引きうけざるを得なくなった孤独が読者の胸を撃つ。
ジョン・ウィリアムズは長篇小説を四冊書いているが、一作目は自己の設けた基準に達しておらず、自作にカウ…
徹底的に打ちのめされ、自信喪失した男がもう一度チャンスを与えられ、リヴェンジを果たせるかどうか、という物語。しかも、いつもは味方である相棒が、相手の境遇に近く、自分と対立するとは考えてもいなかった。
やはり、ジョー・ピケットは容易に人の入り込めない深い山中にいるのが何よりも似つかわしい。普通の場所で…
短篇小説とは「一瞥の芸術」である。ここぞという場面に強度を与えるため、トレヴァーはあえて削り取る。トレヴァーを読むとは、与えられたものを手がかりに、削り取られた部分も読むということだ。
ウィリアム・トレヴァーの絶筆「ミセス・クラスソープ」を含む、文字通り最後の短篇集。トレヴァーのファン…
世界に二つとない魅力を持つニューヨークで繰り広げられる、粋で洒落ていてジャズのように疾走する人間模様。ノスタルジックなムード溢れる恋愛小説であり、真摯に人生を生きる人々の人間群像を描いた都市小説。
『モスクワの伯爵』で、とんでもない逸材を引き当てたと思ったエイモア・トールズの、これが長編デビュー作…
自殺用に頭を吹っ飛ばすことのできるホローポイント弾が装填できる銃を買うほど追い詰められた男が生きることを実感し、愛について考え始め、人生を前向きにとらえかかったところ、崖に宙吊りにされるという皮肉
原題は<Dead Lemons>だから、邦題はほぼ直訳。辞書で引くと<lemon>には「できそこない…
世界を悲観的に見てしまいがちな時代だから、読んでみたい一冊。どんな境遇に置かれても冷静かつ沈着に事実をたんたんと見つめ、ユーモアを忘れず、身のまわりにある美しいものを愛で、それを言葉で表すということ
SF的な味わいのジャケットに惹かれて手を出すと裏切られる。たしかに、地球にただひとり残る女性が主人公…