確かな筆力に裏打ちされた、暴力と破滅と性とパロディとBLと古典教養の合わせ技

　奇想に溢れた四つの短編が収められている。 　先行する文学作品のパロディあり、BLめいた恋愛あり、…

海賊ハンナ・マボットと囚われの料理人ウェッジウッドの、美食とロマンの海洋冒険小説

　【あらすじ】　 　主人を殺され、海賊団に拉致された料理人ウェッジウッド。命を助ける代わりに船…

セーブポイントのある人生、ロードできる恋愛

　テレビゲームをしたことがある人なら、セーブポイントはお馴染みだろう。ゲームの進行状況を記録し、もし…

ハーンが描き円城塔が訳す、異相のKWAIDAN

　ラフカディオ・ハーンは東京帝大で英文科の教師をしていたことがある。それは知っていた。だから、当然と…

専門家が、奇談として精神病理を収集する態度をどう捉えるか

　屋根裏に誰かがいる、という妄想を持つ人間と、江戸川乱歩の創作「屋根裏の散歩者」は根っこが同じところ…

優しい天使たちが語らう、夜のコント

　チェコのバロック式教会に夜な夜な天使たちが集まり酒盛りをしながら、彼らが守護天使として見守っている…

　物語化されてしまう戦争と歴史を、批判的に読み直す。小説家と歴史家による対談。

　散乱する事実に一貫性のある因果の糸を通すと物語が生まれる。しかしこの一貫性というやつが曲者で、これ…

“ウルグアイの安部公房”が描くイニシエーションとしての迷宮譚

　見慣れぬ部屋で目覚めた男。自分が何故ここにいるのか男にはわからない。部屋にはドアがあり、覗くと同じ…

一読目より再読時が面白い、パラノイアの帝国から届いた報告書

　　【あらすじ】 　シカゴに住む27歳のサブリナ・ギャロという女性が失踪する。やがて近所に住む男性…

フローチャートを使った超実用的昇給文学

　「昇給という全人類の夢」(訳者あとがき)を叶えるため、上司のX氏に陳情することを決意した“あなた”…

火喰い鳥はフィリップ・K・ディックの夢を見るか？

【あらすじ】 　第二次大戦中、従軍し南方で戦死した久喜定市の遺した手帳が、久喜家遺族のもとへ届けら…

小気味よいクリスプな文体で畳みかける、現代台湾小説の佳品。 台湾の現在だけではなく、台湾人にとっての日本イメージがわかる一作でもある。

　映画監督・小説家の台湾人作家による短編集。 　収録された十の短編は、ほぼ全て、都会暮らしの２～３０…

伝説の密室ミステリついに新訳なる

　【あらすじ】 　作家志望の青年ダンカンは、ふとしたきっかけでカルト宗教の研究者ウルフ・ハリガンと…

いかにしてネット説話が広がるか、そのメカニズムを考察する

　都市伝説のメカニズムを描いた『消えるヒッチハイカー』という本がある。噂話が細部を変化させながら人の…

ジュヴナイルとハウダニットミステリの融合した秀作

　【あらすじ】 　12歳の少年テッドの目前で、巨大観覧車ロンドン・アイに乗りこんだ従兄弟のサリムが…

子どもの夢の世界に棲む不安と恐怖を描く、英国ファンタジーの佳作

　【あらすじ】　 　病床の少女がある夜見た夢。そこに広がっていたのは自分が画帳に描いた通りの世界だ…

凝り固まった頭をほぐしてくれる、刺激的な創作論

　小説好きは、日々、新しい小説を手に取り読んでいる。 　数を読むほどに小説が提示する表現に慣れ、目…

母なるものについての神話

　少年が、離れ離れになってしまった母親を探して旅する物語。 　連作短編形式になっていて、一話ごと、…

スペイン発、スラップスティック小説の快作

　【あらすじ】 　地球を訪れた宇宙人の“私”。スペインはバルセロナ市街に消えた部下のグルブを探すた…

物語の交差する場所で

　絵描きの“わたし”は、ある日自分の想像力がどこかに行ってしまったことに気がつく。 　仕事の続けら…