くるまの娘



家族それぞれが、今日一日、そして一日、また一日と、死なないでいることを積み重ねるための、ぎりぎりの希望
若い世代の作家の作品で、何か心に刺さるものはないかと、 探していたところ、幸運にもこの作品に行き当…
本が好き! 1級
書評数:242 件
得票数:3991 票
読むことも書くことも孤独な作業ですが、言葉はいつも語られ受け取られるためにあるものだと思っています。誰かに喜んでもらえる言葉を語ることができれば嬉しいです。できることならば…。
近・現代日本文学を中心に、外国文学、児童文学、医療・健康関係の本、必要に応じて読んだ実用書などについて書いていきたいと思っています。
不定期でアロマテラピーインストラクター、セラピストの仕事をしています。



家族それぞれが、今日一日、そして一日、また一日と、死なないでいることを積み重ねるための、ぎりぎりの希望
若い世代の作家の作品で、何か心に刺さるものはないかと、 探していたところ、幸運にもこの作品に行き当…




他者の力に怯え、自分の存在価値に疑いをもって傷ついた若者の、挫折と再生までの物語
先日読み終わり、ここでも書評で紹介した短篇集、 『メアリ・ヴェントゥーラと第九大国』 の作者、 …



時代や状況の制約を受けながらも、常により望ましい自分に向かって 歩き続けようとする一人の女性の思索と試行の記録
何事でも真の重大事に直面するとき、人は常に孤独である。 私がかくも歴然と一人ぼっちであること…



<海>との対話によって得られた魂の静寂とは。
この浜辺での生活から私が持って帰ることになった 一番大事なものは何かと言えば、それは或いは、…


恋愛という強烈な情熱を、シンプルに冷静に書き尽くす
昨年、ノーベル文学賞受賞のニュースに、珍しく名前を知っている 作家の受賞に驚いて、読んだ記憶のある…





「否定の王国、凍りついた王国」の肌ざわりをたしかめながら、そこからの脱出を試みる
久々に、魂を削って作品を生み出すタイプの作家の作品を読んだ。 シルヴィア・プラスはマサチューセ…



多くの人が実際に目にし体験したことなのに、時の流れとともに、 物理的にも、記憶としても、次第に薄まってやがて消える運命にある風景の残像
先日新作長篇が発売された村上春樹氏ですが、 その昔…こんな写真集とのコラボ作品を出されていたのです…



表現者としての言語の発見と、名もなき敗者の側に立つことの覚悟
これもまた、あまりに有名な書き出しで、作者のことを知らなくても、 この作品を読んでいなくても、 …



醒めない悪夢の物語の中に、実現されてほしいリアルな夢の欠片を求めて
文学作品を分類すること自体に、そんなに大きな意味はないけれど、 一つの作品を便宜的にカテゴライズす…




「私の見るところ、彼らの生活自体が芸術だった」
今、特に日本では「宗教」というと、それを話題にすることにさえ 抵抗を感じる人が多いのかもしれない。…



何かが本当に終わり、辛さの底を知った後の、空っぽな自分がごく自然に浮上していく脱力感
シリーズの名前が「新しいアメリカの小説」となっていますが、 1980年代後半時点での「新しい」です…




夢を起点とした非日常の意味するもの
夢、といっても目標や希望と同義語的に扱われる意識上のものではなく、 夜見る夢、自分では何ともコント…


過剰になって吹き出す直前の、埋火のような内側の揺らめき
住んでいる地域で一番大きな書店の旗艦店へ行ってみても、 メジャーなはずの新潮文庫の、超メジャーなは…




いくら心を寄せても、いくら言葉を尽くしても、現実を変えることに 無力感を感じているからこその憤り
この本は、書評誌や新聞などのメディアでも多く取り上げられたので、 実際に読んだ人以上に、多くの人が…




家族の中でさえ愛が上手く機能しないこの社会の中で生きていくための、 人が他者と自分をつないでいく根拠
寡作で知られる松浦理英子の新作、とあらば手に取らない選択肢はない…と即買いし、 しばらく寝かせて置…



近いからこそ理解できない、愛情があるからこそ、辛い。家族の「謎」から目をそらさずに、 記憶の中から、その答えを探しつづけた物語。
家族の物語を語るのは難しい。 フィクションで語ろうとすると、その人物や出来事を どんなに綿密…




物語はいつも喪失の記憶を取り戻そうとする衝動によって生まれる。 幸せになることを願いながら、それを怖れるある種の人々の哀しみを描いた物語。
一つの作品が、何らかの事情によって明らかに完結していない場合、 その作品に書かれた物語世界について…




死を前にした人の、その人らしい生き方と決断、 そしてこれから生き続ける人に残してくれた言葉
この本の作者、山本文緒さんは2021年10月にお亡くなりになった。 この本は、著者の最期の半年の間…



無条件に愛され、肯定された記憶、そしてそれを差し出してくれた存在に対して捧げられた青春物語
この作品は、最も多くの日本人が読んだ文学作品の一つであり、 この作者の作品の中でも、おそらく最も多…



戦争の記憶の忘却と無関心に抗うために── 生き延びた者が、語り始めるための意志と言語の発見。
ペーター・ヴァイスという作家のことを知っている人は 今ではドイツ文学の研究者や一部の翻訳家の方に限…