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教訓のカタログとしての人類史
タイトルの通り、人類史の曙から現代までを概観した大著だ。
節目となるような事件と、革新的な技術的達成はトピックごとにまとめられている。項目ごと見開きで絵と解説が付され、フォントは大きく読みやすく、漢字にももれなくルビが振られている。対象読者は三歳児から大人まで、というコンセプトに偽りはない。
AIに生成させたという油彩画風の挿画は奇妙な歪みをはらんでシュールだが美しく、通常なら歴史書の挿絵としては致命的な欠点とみなされかねない曖昧さや、繰り返される同一の構図や不可思議な細部も、読者に小さな“絵のひみつ”から学びを得させるためにあえて残したのだと堂々と主張されれば『なるほど、そうなのか』と受け入れざるを得ないだろう。
歴史を彩る諸々の惨禍の記述は常に冷静かつ客観的かつ公正で、戦争であれ虐殺であれ政治的な弾圧であれ、関係者の固有名詞や事件の詳細に踏み込むことはせず、経緯を簡潔に描写するとすぐさま「ここで注意すべき点は」とこれらの愚行から学ぶべき教訓へと話が移る。
具体から抽象へと軽やかに飛躍し、記述から何を受け取り、どう考えるべきかまで懇切丁寧に指示してくれるため、読者が膨大な歴史的事実をどう解釈するかで迷子になるようなことはない。非常に親切な設計だ。
巻末には本書執筆の動機とねらいについての、結構なページ数に及ぶ解説と、それぞれの項目ごとの出典が記載されている。「出典を意識し」「複数の視点を大切にすること」「単一の正義を押し付けない」などなど、対話と偏ることのない態度が繰り返し強調され、歴史の事実に向き合うことの大切さが語られる。
真摯で誠実で示唆に富んだ文章をつらつらと読みながら、しかしなぜこれほど高邁な理念によって作られた本の挿画が世に不正確をもって鳴る生成AIなのか、とか、典拠の重要性を説きながら出典が全てウェブサイトであるというのはどういうことなのか、などという疑問も改めて浮かぶが、本書の言挙げする壮図にあってこれらは些末事であるのだろう。
500ページ近い大部の書籍であり、しばしば登場する主語が“私たち”であるからには、グループ内で編集・執筆の分担がどのように行われたのかなど本づくりの実務面にも関心は尽きないが、関わったスタッフについての細かな記載はない。もしかしたら、成り立ちの間接的な告白という意味で、本書において最も大胆で興味深い項目は生成AIについて述べた箇所であるのかもしれない。
過去から学び未来へと活かす、ことが歴史書の役割の一つであるとするならば、そのような実用的な教訓と“学び”で溢れかえる本書は忠実に使命を果たしたといえるだろう。ある種の奇書であり、また製作者の意図とは別に、やがて訪れるかもしれない世界を先触れするような書物でもある。
想像してみてほしい。
書店や図書館の書棚に、本書の兄弟姉妹が行儀よく整列する姿を。
容姿端麗で、口もとには常に感じの良い柔和な微笑みを浮かべ、反論の難しい巧妙だが一本調子な正論を滔々と弁じたて、優しく思慮深い印象をこれでもかと振りまきながら、しかしその双眸には洞穴のような暗黒が広がっている。
節目となるような事件と、革新的な技術的達成はトピックごとにまとめられている。項目ごと見開きで絵と解説が付され、フォントは大きく読みやすく、漢字にももれなくルビが振られている。対象読者は三歳児から大人まで、というコンセプトに偽りはない。
AIに生成させたという油彩画風の挿画は奇妙な歪みをはらんでシュールだが美しく、通常なら歴史書の挿絵としては致命的な欠点とみなされかねない曖昧さや、繰り返される同一の構図や不可思議な細部も、読者に小さな“絵のひみつ”から学びを得させるためにあえて残したのだと堂々と主張されれば『なるほど、そうなのか』と受け入れざるを得ないだろう。
歴史を彩る諸々の惨禍の記述は常に冷静かつ客観的かつ公正で、戦争であれ虐殺であれ政治的な弾圧であれ、関係者の固有名詞や事件の詳細に踏み込むことはせず、経緯を簡潔に描写するとすぐさま「ここで注意すべき点は」とこれらの愚行から学ぶべき教訓へと話が移る。
具体から抽象へと軽やかに飛躍し、記述から何を受け取り、どう考えるべきかまで懇切丁寧に指示してくれるため、読者が膨大な歴史的事実をどう解釈するかで迷子になるようなことはない。非常に親切な設計だ。
巻末には本書執筆の動機とねらいについての、結構なページ数に及ぶ解説と、それぞれの項目ごとの出典が記載されている。「出典を意識し」「複数の視点を大切にすること」「単一の正義を押し付けない」などなど、対話と偏ることのない態度が繰り返し強調され、歴史の事実に向き合うことの大切さが語られる。
真摯で誠実で示唆に富んだ文章をつらつらと読みながら、しかしなぜこれほど高邁な理念によって作られた本の挿画が世に不正確をもって鳴る生成AIなのか、とか、典拠の重要性を説きながら出典が全てウェブサイトであるというのはどういうことなのか、などという疑問も改めて浮かぶが、本書の言挙げする壮図にあってこれらは些末事であるのだろう。
500ページ近い大部の書籍であり、しばしば登場する主語が“私たち”であるからには、グループ内で編集・執筆の分担がどのように行われたのかなど本づくりの実務面にも関心は尽きないが、関わったスタッフについての細かな記載はない。もしかしたら、成り立ちの間接的な告白という意味で、本書において最も大胆で興味深い項目は生成AIについて述べた箇所であるのかもしれない。
過去から学び未来へと活かす、ことが歴史書の役割の一つであるとするならば、そのような実用的な教訓と“学び”で溢れかえる本書は忠実に使命を果たしたといえるだろう。ある種の奇書であり、また製作者の意図とは別に、やがて訪れるかもしれない世界を先触れするような書物でもある。
想像してみてほしい。
書店や図書館の書棚に、本書の兄弟姉妹が行儀よく整列する姿を。
容姿端麗で、口もとには常に感じの良い柔和な微笑みを浮かべ、反論の難しい巧妙だが一本調子な正論を滔々と弁じたて、優しく思慮深い印象をこれでもかと振りまきながら、しかしその双眸には洞穴のような暗黒が広がっている。
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海外文学・ミステリーなどが好きです。書評は小説が主になるはずです。
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- 出版社:Array
- ページ数:0
- ISBN:9798253559093
- 発売日:2026年03月25日
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