書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

三太郎さん
三太郎
レビュアー:
カビやキノコの仲間には草や樹木の根に入り込み、植物と共生関係を結んだものがいる。植物の種の8割がこれらの菌根菌類と共生しているのだとか。
ブッツァーティの「古森の秘密」を読んだばかりだが、今回取り上げるのはその森の樹木が成長するのに欠かせない菌根菌の世界を描いた本だ。

菌根菌とは様々な菌類(黴やキノコ類)で、植物の根の中に侵入して、植物から糖分などの栄養分を得る代わりに、植物に土壌中のリン、窒素、カリウムの植物の成長に欠かせない成分を与えて、植物と相利共生の関係にある菌類だ。キノコ類では枯れた木ではなくて生きた松の木と共生するマツタケが良く知られた菌根菌だ。こういったキノコを外生菌根菌と呼ぶらしい。

成長に必須の養分でも特に土壌中のリンは土壌に強く結合しているので、植物の根から離れた土壌中のリンは菌根菌がなければ利用できない。菌根菌が根から離れた場所の養分を植物まで運ぶ役割を果たしている。

松の苗は土に菌根菌がないと発芽しても苗が成長できずに一年以内に枯れてしまうとか。野菜などの草本類でも菌根菌がないと成長が遅いことが確かめられているとか。ラン類などはラン菌がないと発芽も出来ないとか。多くの植物が菌根菌に頼って生きているらしい。

松茸の菌はマツ科やブナ科の限られた植物としか共生しないが、約4億年前に植物(コケ類)が水中から地表に進出するのと同時に誕生したらしいアーバスキュラー菌根菌は地上のほぼ8割の植物と共生できるという。本の表紙の写真はそのアーバスチュラー菌根菌の胞子で、直径は1ミクロンと比較的大きい。しかしこの菌の生活史は実はまだよく解っていないとか。

ラン類は草本類の進化の最後に現れたグループで、種はホコリ並みに細かく、発芽の栄養となる胚乳がない。種を軽量化して風により遠くまで飛ばす戦略だが、その結果、ラン菌と共生しないと発芽できなくなった。

ランの系統の中には、進化の過程で一旦ラン菌との共生を止めた後に、樹木につく外生菌根菌と共生するようになったものがある。こういったランでは樹木と菌根菌とランが三者で共生関係を作っている。またランの中には葉も葉緑素も無くして菌根菌から栄養をもらって生活している腐生ランも誕生した。(ギンリョウソウのような腐生植物と似ているがこれらはともに「菌従属栄養植物」と呼ばれる。)

4億年前にコケやシダ類が地上に誕生したのと同時に生まれたのがアーバスキュラー菌根菌で、ジュラ紀の終わりに生まれたのが樹木に着く外生菌根菌、ラン菌はもっと新しいらしい。地上での植物の進化は地下での菌根菌類の進化とともにあったと言えるのかも。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:898 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

参考になる:11票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『菌根の世界: 菌と植物のきってもきれない関係』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ