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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
本気で遊ぶ子どもたちに、大人たちはどうしたって敵いっこないのだ。
★岩波少年文庫100冊マラソン44冊目


13歳のカッレ・ブルムクヴィストは、名探偵になることを夢見ている。いつかそうなりたいのではなくて、彼は今、名探偵ブルムクヴィスト氏なのだ(まわりに誰もいないときに限るけれど)
身の回りのいろいろなことに気を配り、些細な物事に注意をはらい、日常のちょっとした変化に疑問を持つ。
だけど、悲しいことに、これ以上平和な町があるだろうか、と思うようなストゥールガータン街に住んでいるカッレくんは、どんなちいさな事件にも遭遇することができなかったのだ。これまでのところは。
だけど、この夏は違う。何かが起こっている。眼、耳、鼻をそばだてて、手がかりを追うカッレくんを、遊び仲間(白バラ軍)のアンデスとエーヴァ・ロッタは茶化して笑うけれど。
はじまりは、エーヴァ・ロッタの家(カッレの家の隣)に長逗留のお客さんがきたことだ。これは事件、になるのかな?
どきどきしたり、はらはらしたり。名探偵の行くところ、こうでなくちゃね。


夏休みである。
「きょうも楽しい休みが、目の前にある。心配ごとはなし、学校はなし、しなければならないことといえば、イチゴに水をやること、……」
ああ、本の中から夏のいい匂いがしてくる。
何の予定もない夏の一日一日を、こどもたちは遊びに遊ぶのだ。いたずらしたり。サーカスしたり。
白バラ軍・赤バラ軍に別れてのバラ戦争は楽しい。敵軍をできるだけ怒らせて悔しがらせることだけを目的に策略を駆使して、家の内外、街路を駆けまわる。
本気で遊ぶ子どもたちに、大人たちはどうしたってかないっこないのだ、とまとめあげたくなる楽しさよ。


夏休みの解放感、いつまでも続く遊びの時間……そして、その間を縫って名探偵カッレの探偵業は進むのだ。子どもらの夏のすべてがやがて探偵作業に流れ込んでいくようで、やはりそれは夏の長い日々の中のほんの一部であるようで。
遊びに遊ぶ子どもの日々は、もしかしたら、日が暮れない白夜に似ているかもしれない。
跳ねるように走っていく足音、繰り返すフレーズの調子のよい歌声、気持ちがいいな。


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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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この書評へのコメント

  1. 薄荷2025-07-23 11:05

    カッレくん、大好きです!
    そういえば夏休みにぴったりのお話ですよね。
    >本の中から夏のいい匂いがしてくる。・・・ってすごく素敵&絶妙すぎる!流石です。

  2. ぱせり2025-07-23 14:12

    薄荷さん、カッレくん、いいですね! 夏休み、始まりましたね。
    あまりに暑くて、外で探偵業もバラ戦争も難しそうです。
    でも、子どもたち、どこかで何か、素晴らしい悪巧みをしていたらいいなあ。

  3. 星落秋風五丈原2025-07-23 17:33

    ぱせりさんみなさんこんにちは。ああこの本懐かしいです!というより岩波自体が懐かしい。

  4. ぱせり2025-07-23 19:05

    星落さん、久々に読んだんです。ほんと懐かしい!! この際なので、いろいろ懐かしい岩波少年文庫、読み漁ろうと思っています(^-^)

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