hackerさん
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ルドウィッヒ・ベーメルマンスによる、パリの寄宿学校の元気な女の子マドレーヌ・シリーズの第一作です。アメリカで出版されたので、原題は"Madeline"ですが、邦題はその仏語名となっています。
最初のページ
「パリの、つたの からんだ ある ふるい やしきに、」
次のページ
「12にんの おんなのこが、くらしていました。」
その次のページ
「2れつになって、パンを たべ、」
その次のページ
「2れつになって、はを みがき、」
その次のページ
「2れつになって、やすみました。」
この出だしがとても良いです。そして「なにごとにも おどろかない」ミス・クラベルが、この子たちの先生です。この13人(もちろん、キリストと12人の弟子をイメージしているのでしょう)を描いた出だしの数ページには、作者のこのシリーズの絵の特徴がよくでています。写真を添付しましたので、参考としてください。
さて、本書のヒロインは、こんな子でした。
「なかで いちばん おちびさんが、マドレーヌで、」
 
「ねずみなんか こわくないし、」
「ふゆが すきで、スキーも スケートも とくい、」
「どうぶつえんの とらにも、へいっちゃら。」
ところが、ある晩、急性盲腸炎になり、救急車で病院へ運ばれてしまいます。手術は無事に終わり、10日たって、みんなでマドレーヌを見舞いに行きました。でも、病室に入ってみると、マドレーヌはすっかり元気になっていて、「おもちゃに キャンデーに にんぎょうのいえ」に囲まれていたので、みんなはびっくりします。
「なかでも、みんなが たまげたのは―」
さて、その夜、真夜中にみんなの様子がどうも変なのに、ミス・クラベルは気づきます。マドレーヌのことがあるので、ミス・クラベルは「いちだいじかと、しんぱいで」「はいしりに はしって、」皆が寝ている部屋に駆けつけるのですが...。
このミス・クラベルは、大慌てで駆けつける絵は、本書でも一番おかしいところです。まぁ、本書は、めでたしめでたしで、次のように終わります。
「あとは しんとしてなにごともありませんでした。」
作者のルドウィッヒ・ベーメルマンス(1898-1962)は、当時はオーストリア=ハンガリー帝国だったメラーノ出身で、この町は現在イタリアに所属しています。英文Wikipediaによると、父親はベルギー人の画家、母親はドイツ人で、そのせいでしょうが、彼の第一言語はドイツ語、第二言語はフランス語だったそうです。なんだかややこしいですが、彼が作品を発表するのは、16歳で渡米し、英語での生活が落ち着いてからのことです。さらに英文Wikipediaには、出典を明記した上で、渡米のきっかけとなったのは、両親が離婚し、預けられた母の叔父の虐待に耐えられず、叔父を銃で撃って重傷を負わせたからという記述があります。もっとも、叔父が何度もベーメルマンスを鞭打つので、今度鞭を使ったら銃で撃ってやると言っていたそうです。ちょっと比較するのは変ですが、本書のマドレーヌのような「悪い子」だったようです。
本書が出版されたのは1939年ですが、シリーズ第二作は1953年で、その後1956年、1959年、1961年、1985年、1999年と間をおいて発表されていますから、けっこう気が向いた時に描いていたのではないかと思います。多作家でしたし、他にも『ゴールデン・バスケット』のような傑作も書いていますから。
最後ですが、本書の魅力は、なんといっても、絵です。女の子たちもそうですが、パリの名所や街頭を描いた絵です。エッフェル塔は言うに及ばず、オペラ座、ヴァンドーム広場、ノートルダム寺院、リュクサンブール公園、チィルリー公園、ルーブル美術館等が、デフォルメされ、でも雰囲気を保ちながら描かれています。街の描写も素敵で、パリの雰囲気満載の楽しい絵本です。
「パリの、つたの からんだ ある ふるい やしきに、」
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「2れつになって、パンを たべ、」
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「2れつになって、はを みがき、」
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「2れつになって、やすみました。」
この出だしがとても良いです。そして「なにごとにも おどろかない」ミス・クラベルが、この子たちの先生です。この13人(もちろん、キリストと12人の弟子をイメージしているのでしょう)を描いた出だしの数ページには、作者のこのシリーズの絵の特徴がよくでています。写真を添付しましたので、参考としてください。
さて、本書のヒロインは、こんな子でした。
「なかで いちばん おちびさんが、マドレーヌで、」
「ねずみなんか こわくないし、」
「ふゆが すきで、スキーも スケートも とくい、」
「どうぶつえんの とらにも、へいっちゃら。」
ところが、ある晩、急性盲腸炎になり、救急車で病院へ運ばれてしまいます。手術は無事に終わり、10日たって、みんなでマドレーヌを見舞いに行きました。でも、病室に入ってみると、マドレーヌはすっかり元気になっていて、「おもちゃに キャンデーに にんぎょうのいえ」に囲まれていたので、みんなはびっくりします。
「なかでも、みんなが たまげたのは―」
さて、その夜、真夜中にみんなの様子がどうも変なのに、ミス・クラベルは気づきます。マドレーヌのことがあるので、ミス・クラベルは「いちだいじかと、しんぱいで」「はいしりに はしって、」皆が寝ている部屋に駆けつけるのですが...。
このミス・クラベルは、大慌てで駆けつける絵は、本書でも一番おかしいところです。まぁ、本書は、めでたしめでたしで、次のように終わります。
「あとは しんとしてなにごともありませんでした。」
作者のルドウィッヒ・ベーメルマンス(1898-1962)は、当時はオーストリア=ハンガリー帝国だったメラーノ出身で、この町は現在イタリアに所属しています。英文Wikipediaによると、父親はベルギー人の画家、母親はドイツ人で、そのせいでしょうが、彼の第一言語はドイツ語、第二言語はフランス語だったそうです。なんだかややこしいですが、彼が作品を発表するのは、16歳で渡米し、英語での生活が落ち着いてからのことです。さらに英文Wikipediaには、出典を明記した上で、渡米のきっかけとなったのは、両親が離婚し、預けられた母の叔父の虐待に耐えられず、叔父を銃で撃って重傷を負わせたからという記述があります。もっとも、叔父が何度もベーメルマンスを鞭打つので、今度鞭を使ったら銃で撃ってやると言っていたそうです。ちょっと比較するのは変ですが、本書のマドレーヌのような「悪い子」だったようです。
本書が出版されたのは1939年ですが、シリーズ第二作は1953年で、その後1956年、1959年、1961年、1985年、1999年と間をおいて発表されていますから、けっこう気が向いた時に描いていたのではないかと思います。多作家でしたし、他にも『ゴールデン・バスケット』のような傑作も書いていますから。
最後ですが、本書の魅力は、なんといっても、絵です。女の子たちもそうですが、パリの名所や街頭を描いた絵です。エッフェル塔は言うに及ばず、オペラ座、ヴァンドーム広場、ノートルダム寺院、リュクサンブール公園、チィルリー公園、ルーブル美術館等が、デフォルメされ、でも雰囲気を保ちながら描かれています。街の描写も素敵で、パリの雰囲気満載の楽しい絵本です。
- 「12にんの おんなのこが、くらしていました。」「2れつになって、パンを たべ、」
 
- 「2れつになって、はを みがき、」「2れつになって、やすみました。」
 
- 病室で「おもちゃに キャンデーに にんぎょうのいえ」に囲まれたマドレーヌ
 
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:福音館書店
- ページ数:48
- ISBN:9784834003628
- 発売日:1972年11月10日
- 価格:1365円
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