DBさん
レビュアー:
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帝国の滅びの理由を語る本
ローマの滅亡を語るのに、まずはカルタゴの滅亡シーンで始まります。
地中海の覇権を争って百年以上争ったローマとカルタゴだが、第三次ポエニ戦争で勝ったローマが二度と再建できないよう徹底的にカルタゴを滅ぼした。
それを目にしていたローマの将軍小スキピオが「いつの日かローマも同じ運命にあうであろう」と語ったとされる。
実際にローマはそれから栄枯衰勢を極めることとなるが、「ローマはなぜ滅んだか」を問うということに対して「なぜそれを問うのか」という疑問について第一に語っています。
ローマが世界史上まれにみる大帝国を建築し、それを長年月の間維持発展させたこと。
そして帝国各地に張り巡らせたローマの公道のように、文明を吸収して次代へと伝える役割を果たしたこと。
「ローマは一日にして成らず」と「すべての道はローマに通ず」という格言が象徴的に表すこの二点が、ローマがなぜ滅んだかを問うのかという疑問に対する答えとして提示されていた。
ローマが作り出した地中海世界という発展度の異なる諸民族をひとつにまとめ上げたグローバルな社会は現代にも通じている。
ローマの滅びを検討することはすなわち現代社会の滅びを予言することになるのだろうか。
ローマの滅亡を語るにはまず繁栄の時代を語るのはギボンと同じだ。
五賢帝時代が繁栄の頂点とされるが、その証明としてローマの道路と経済構造、戦争によって得た分捕り品という名の収入の増大や貧富の差の拡大、そして富裕層の贅沢について語っていきます。
トリマルキオの饗宴を例に挙げるまでもなく、食欲と肉欲の限りを尽くす姿もまたローマとバブル時代の銀座が重なるところ。
ローマの滅亡は文化的な退廃もあるが、アラリック率いる西ゴート族がローマを蹂躙した事件が大きな役割を持っている。
この事件以前からゲルマン人はローマ帝国内に同盟部族として定住し、農業や軍事に携わっていた。
テオドシウス帝に仕えその死後もローマの要となっていた将軍スティリコの例を見るまでもなく、ローマに入って同化していたゲルマン人も多数存在する。
だがローマがキリスト教化することで、それまでの多文化を吸収しひとつにまとめていたグローバルなローマはすでに失われていた。
ゲルマン人を蛮人として共同体に受け入れられなくなったことがローマの滅びにつながったと著者は結論づけている。
帝国の滅亡から学ぶべきことは多いと思わされる本でした。
地中海の覇権を争って百年以上争ったローマとカルタゴだが、第三次ポエニ戦争で勝ったローマが二度と再建できないよう徹底的にカルタゴを滅ぼした。
それを目にしていたローマの将軍小スキピオが「いつの日かローマも同じ運命にあうであろう」と語ったとされる。
実際にローマはそれから栄枯衰勢を極めることとなるが、「ローマはなぜ滅んだか」を問うということに対して「なぜそれを問うのか」という疑問について第一に語っています。
ローマが世界史上まれにみる大帝国を建築し、それを長年月の間維持発展させたこと。
そして帝国各地に張り巡らせたローマの公道のように、文明を吸収して次代へと伝える役割を果たしたこと。
「ローマは一日にして成らず」と「すべての道はローマに通ず」という格言が象徴的に表すこの二点が、ローマがなぜ滅んだかを問うのかという疑問に対する答えとして提示されていた。
ローマが作り出した地中海世界という発展度の異なる諸民族をひとつにまとめ上げたグローバルな社会は現代にも通じている。
ローマの滅びを検討することはすなわち現代社会の滅びを予言することになるのだろうか。
ローマの滅亡を語るにはまず繁栄の時代を語るのはギボンと同じだ。
五賢帝時代が繁栄の頂点とされるが、その証明としてローマの道路と経済構造、戦争によって得た分捕り品という名の収入の増大や貧富の差の拡大、そして富裕層の贅沢について語っていきます。
トリマルキオの饗宴を例に挙げるまでもなく、食欲と肉欲の限りを尽くす姿もまたローマとバブル時代の銀座が重なるところ。
ローマの滅亡は文化的な退廃もあるが、アラリック率いる西ゴート族がローマを蹂躙した事件が大きな役割を持っている。
この事件以前からゲルマン人はローマ帝国内に同盟部族として定住し、農業や軍事に携わっていた。
テオドシウス帝に仕えその死後もローマの要となっていた将軍スティリコの例を見るまでもなく、ローマに入って同化していたゲルマン人も多数存在する。
だがローマがキリスト教化することで、それまでの多文化を吸収しひとつにまとめていたグローバルなローマはすでに失われていた。
ゲルマン人を蛮人として共同体に受け入れられなくなったことがローマの滅びにつながったと著者は結論づけている。
帝国の滅亡から学ぶべきことは多いと思わされる本でした。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:講談社
- ページ数:241
- ISBN:9784061489684
- 発売日:1989年10月17日
- 価格:777円
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