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はなとゆめ+猫の本棚
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今で言ったら、80歳を過ぎた老齢の領主が、20歳にもならない女性を欲しがる。それに応えて可愛い娘を差し出す。そんなことありえないという現代の常識が邪魔をする。
 戦国時代今の群馬県の沼田領主沼田万鬼斎は追貝村の名主金子新左エ門の娘ゆみのを妾として取り上げる。そして男の子平八郎をもうける。万鬼斎は領主を退くとき、彼の後継者を正室の間に生まれた弥七郎にする。

 これに反発した新左エ門は娘ゆみのとともに謀略をはかり、領主万鬼斎を篭絡し、弥七郎を殺害する。この時、弥七郎の忠臣であった和田十兵衛は、沼田を出奔しその行方がわからなくなる。

 物語は、謀略が成功する様とそれが崩壊してゆく様を描く。どうも、私の常識が邪魔するのだが、50歳を過ぎる老齢といっていい領主が、正式な妻がいて、息子もいるのに、20歳にもならない女性を所望。それに応えて、可愛い娘を差し出す。

 わからないでもないのだが、あまりストンと胸におちず、ずっともやもやしたままで読み終え、私にとっては乗り切れない作品だった。

 唯一面白いなと思ったのは、行方不明になっていた和田十兵衛が旅の絵師になって、平八郎の前に現れるところ。

 江戸時代は、写真がなく、その代わりになるものは絵画だった。大名や将軍やその直属の家臣は、争って肖像画を描いてもらうし、屋敷のふすまには、豪華な絵をかいてもらう需要が高かった。

 だからお抱え絵師や、旅の絵師は、一般武士より多くのお金を稼いだ。
 その絵師となった和田十兵衛が言う。

「むかし、沼田の城で引き起こされた騒動などは、いまやあたりまえのことになってしまい申した。いまの世の戦さは、だましあい、裏切り合い、主従もなく、親子もなく、血なまぐさいばかりのものとなりました。」

 戦国時代をよく表している言葉だと思うし、日本も世界もなんとなくこんなふうな社会に向かって走っているような気がして、少しゾっとした。

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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6225 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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