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はなとゆめ+猫の本棚
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西郷隆盛との会議で江戸開城を決めた勝海舟。でも、その後は、ぶれ思うようなことはできなかった。
 鳥羽伏見の戦いで幕軍が敗れて江戸へ逃げ帰った将軍慶喜から、かの有名な西郷隆盛と勝海舟の2度にわたる会議において、江戸を戦場にすることなく、無血開城が行われ、慶喜は江戸城をでて、上野寛永寺に蟄居。しかし、江戸には従来から幕府や地方大名の家臣が多数いて、その武士たちが幕府や大名からの俸給が無くなり生活が崩壊。そのため江戸は荒れ、

 徳川幕府を復活させようと、彰義隊が結成され、最後彰義隊が壊滅させられるまでを描いた作品。海音寺は無血開城は、西郷、勝の会談によって実現したのではなく、彰義隊の壊滅により完成、実現したと作品で書いている。

 海音寺は、同じ鹿児島出身の西郷隆盛を高く評価し、この作品でも、西郷の言動を多数描き、時代の寵児として称揚している。一方で、幕府側で西郷と対峙した勝海舟も西郷と同じくらいの千両役者として作品では扱う。

 勝は慶喜を説得して、朝廷、維新軍に恭順の意を示し、江戸城を明け渡し、上野に蟄居することを説得、これを背景に西郷と会話し無血開城を実現。

 このころの西郷は、新政府軍の中でも傑出したリーダーとして遇され、西郷の方針が新政府軍の方針となるという強い決定権を持っていた。それに対応した幕府代表の勝海舟はどんな立場にあったのだろうか。よくわからなかったが、無血開城までは恰好よかったが、それ以降は結構ぶれる。

 特に驚いたのが、江戸に数十万に及ぶ、徳川の家臣やそれに連なる人たちがいて、彼らが一気に食うや食わずの生活になり、態度、行動が荒れだす。このままでは江戸は無政府状態になり、混乱収拾がつかなくなる。それを抑え込み、説得できるのは徳川将軍慶喜しかいないと思い、朝廷や新政府に対し、慶喜を江戸城に戻すことを強く進言する。もちろん盟友西郷隆盛にも進言するが、西郷はとりあわない。この作品の後半の勝の姿はかなり哀れに感じた。

 この作品で面白いと思ったのは、関ケ原の戦いで西軍についた大名は、徳川によりその後領地を没収されたり大幅に削減されたりした。長州は、幕府と何回も江戸時代最後の頃戦いをしている。長州は関ケ原の戦で百二十万石から三十六万九千石に叩きおとされていて、幕府憎しの思いは強い。ところが、同じ西軍だった薩摩藩は全く減らされていない。だから意外と薩摩は幕府に対して悪い感情を抱いていない。それが西郷、勝の歴史的会議に繋がったと海音寺は書く。面白い。

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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6225 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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