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DBさん
DB
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怪物と竜を倒した英雄の話
本作は八世紀ごろに作られたとされる古英語の英雄叙事詩によるものだそうです。
古英語独自の文法や修辞法をここまで訳すのは大変だったと思うけど、原作にのっとって詩の形式で進んでいきます。
各省の最初にあらすじが書いてあるので、本文で迷子になりそうになってもちゃんと意味は分かるのがよかった。

物語はその舞台となるデネの国で王シュルドが定命尽きて身罷り、亡骸を王の御座船で数多の宝物と共に海へ流すシーンで始まります。
バイキングの厳かな葬送が厳粛な雰囲気で語られる。
そしてシュルドの息子の治世も過ぎ、孫にあたるフロースガード王が即位します。
フロースガードは自分の権威を高めるために、ヘオロットという壮麗な館を建てさせてそこで毎晩宴を繰り広げた。
だがヘオロットはグレンデルという名のカインの末裔とされる怪物が襲撃してくるようになり、王の臣下たちは殺され十二年もの間怪物に蹂躙される。
その話を伝え聞いたベーオウルフは、海を越えてデネの人々を助けるべく怪物退治へと赴きます。

武器を使わないグレンデル相手に、自分も素手で戦う決意を表明したベーオウルフは激しい戦いの末にグレンデルの片腕をもぎ取った。
腕を失ったグレンデルは逃げていったが、グレンデルの母親である女怪がヘオロットに吊り下げられていた腕を奪い、その場にいた者を殺していく。
女怪を追って湖の洞窟に乗り込んだベーオウルフは、危ういところで洞窟にあった巨人の剣を手に女怪を倒したのだった。

後半はイェーアトの国に帰ったベーオウルフが先王とその息子の戦死により王位につき、五十年もの間善政をしいたのちの出来事が語られている。
ベーオウルフの家臣に仕える下僕が竜の守る財宝を盗んだことから竜の怒りをかい、竜は人里を炎を吐いて焼き払っていく。
竜を退治すべく立ち上がったベーオウルフは目的を果たすも、自らも致命傷を負って倒れるのだった。

壮大なる叙事詩ですが、合間に剣の伝来が語られたり吟遊詩人の語る話が入っていたりと物語にさらに厚みを持たせている。
そして前半では英雄として、後半では王としてのベーオウルフを描くことで古代ゲルマンで理想とされていたであろう人物像が浮かび上がってきます。
何よりも正義を重んじ、不敗の強さを誇り勝利を王に帰するのが英雄。
そして誉れと富を民に分け与えるのが王者としての責任なのだろう。
ゲルマン叙事詩ってファンタジーだったんだと思った話でもあった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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