かもめ通信さん
レビュアー:
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こんな筈ではなかったのに!そうであったらよかったのに!!
もちろんそれは“偏見”とか“先入観”とかいうものの影響であるとは思うけれど
知り合う前から好きになれそうにない人というのはいるものだ。
私にとって“ボヴァリー夫人”は正にそういう相手だった。
なにしろ既婚者でありながら不倫を繰り返し、莫大な借金を作って、
夫や子どものことなど顧みもせず、自殺してしまったというのだ。
同情の余地など全くなさそうではないか!
だからこの小説が“19世紀のフランスリアリズム文学を代表する傑作”であったとしても
あえて彼女とお近づきになろうとは思わなかったのだ。
そんな私が「好きになれずとも顔見知りぐらいにはなっておいた方が良いのでは?」と
最初に思ったのは
人に勧められてジュリアンバーンズの『フロベールの鸚鵡』を手にした時だった。
この本を数ページめくって悟ったのだ。
おそらくこれは先にフロベールの作品を読んでおいた方が楽しめるに違いない。
そうして『フロベールの鸚鵡』を閉じて、
まずはフロベールの作品を1作読んでみようと思ったのだった。
しかし、なぜかここでまた時が流れる。
去年、とある事情から北村薫の『秋の花』を読んで
そういえば『フロベールの鸚鵡』を積んだままだったことを思い出し、
あわせてなぜ積んだのかを思い出して
ようやく今回『ボヴァリー夫人』と対面するにいたったというわけ。
主人公のエンマは夢のような結婚生活に憧れて田舎の町医者シャルルと結婚するものの、
夫にも結婚生活にも移り住んだ町にもすぐに失望し、
しかしあれこれが諦めきれずに不倫をし、
満たされない心を補うべく贅沢な買い物をしまくる。
“ボヴァリスム”の語源ともなった本来の自分とは違う自分を夢みる彼女のとった行動は
確かに度が過ぎて弁護のしようもない。
だが、周りを見回してみれば
夫のシャルルだって自分の腕が良くないことは百も承知の筈なのに
おだてにのって外科手術に挑んで失敗をするし、
薬剤師のオメーは、薬を売って生計を立てるだけでは満足できず、
妖しげな研究や治療に手を出したり、
新聞を利用して名声を得ようと画策したりする。
金貸しの悪徳商人ルールーだって、
たとえ汚いやり方に手を染めてもなりたい自分があるんだろう。
誰もが皆、現実の自分に満足しているわけではなく、
誰もが皆、違う自分になりたいのだ。
けれどもエンマをはじめ多くの人が努力する方向を間違えている。
誰も彼もに皮肉と批判の目を向けながら
物語の行き着く先は、母親に顧みられなかった娘が工員となって働く姿。
果たしてボヴァリー家の一人娘ベルトのみる夢は
どんな夢なのだろうか。
知り合う前から好きになれそうにない人というのはいるものだ。
私にとって“ボヴァリー夫人”は正にそういう相手だった。
なにしろ既婚者でありながら不倫を繰り返し、莫大な借金を作って、
夫や子どものことなど顧みもせず、自殺してしまったというのだ。
同情の余地など全くなさそうではないか!
だからこの小説が“19世紀のフランスリアリズム文学を代表する傑作”であったとしても
あえて彼女とお近づきになろうとは思わなかったのだ。
そんな私が「好きになれずとも顔見知りぐらいにはなっておいた方が良いのでは?」と
最初に思ったのは
人に勧められてジュリアンバーンズの『フロベールの鸚鵡』を手にした時だった。
この本を数ページめくって悟ったのだ。
おそらくこれは先にフロベールの作品を読んでおいた方が楽しめるに違いない。
そうして『フロベールの鸚鵡』を閉じて、
まずはフロベールの作品を1作読んでみようと思ったのだった。
しかし、なぜかここでまた時が流れる。
去年、とある事情から北村薫の『秋の花』を読んで
そういえば『フロベールの鸚鵡』を積んだままだったことを思い出し、
あわせてなぜ積んだのかを思い出して
ようやく今回『ボヴァリー夫人』と対面するにいたったというわけ。
主人公のエンマは夢のような結婚生活に憧れて田舎の町医者シャルルと結婚するものの、
夫にも結婚生活にも移り住んだ町にもすぐに失望し、
しかしあれこれが諦めきれずに不倫をし、
満たされない心を補うべく贅沢な買い物をしまくる。
“ボヴァリスム”の語源ともなった本来の自分とは違う自分を夢みる彼女のとった行動は
確かに度が過ぎて弁護のしようもない。
だが、周りを見回してみれば
夫のシャルルだって自分の腕が良くないことは百も承知の筈なのに
おだてにのって外科手術に挑んで失敗をするし、
薬剤師のオメーは、薬を売って生計を立てるだけでは満足できず、
妖しげな研究や治療に手を出したり、
新聞を利用して名声を得ようと画策したりする。
金貸しの悪徳商人ルールーだって、
たとえ汚いやり方に手を染めてもなりたい自分があるんだろう。
誰もが皆、現実の自分に満足しているわけではなく、
誰もが皆、違う自分になりたいのだ。
けれどもエンマをはじめ多くの人が努力する方向を間違えている。
誰も彼もに皮肉と批判の目を向けながら
物語の行き着く先は、母親に顧みられなかった娘が工員となって働く姿。
果たしてボヴァリー家の一人娘ベルトのみる夢は
どんな夢なのだろうか。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2016-05-17 18:48
せっかくなので三島賞を受賞した時の人(?!)蓮實重彦さんの『「ボヴァリー夫人」論 (単行本)』を紹介する青玉楼主人さんのレビューも併せてどうぞww
http://www.honzuki.jp/book/237360/review/153996/クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:597
- ISBN:9784309463216
- 発売日:2009年07月03日
- 価格:1155円
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