かもめ通信さん
レビュアー:
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「あなたは幸せ? でないなら…」広告を前にしばし読者も考え込む。 #やりなおし世界文学
あなたは幸せ? でないならパーカー・パイン氏に相談を
こんな新聞広告に惹かれて、半信半疑にオフィスを訪れるとする。
待っているのは、肥満体というほどではないが図体が大きくて、形のよいはげ頭に度のきつい眼鏡、眼鏡の奥にはきらりと輝く小さな目、どういうわけだか、ひと目みただけで気がやすまる気がしてしまう紳士。
彼こそがパーカー・パインその人だ。
夫の浮気に悩む夫人、アフリカ帰りの退屈した軍人、盗まれたダイヤを手にした婦人、妻の心を取り戻したい夫、平凡な生活を外れてほんのちょっとだけ冒険をしてみたい……もちろんその後は元の生活に戻ることを前提に……等という悩みを抱える中年男性。
収録された12篇のうち、前半の6篇が、広告をみて事務所にやってきたという依頼人が持ち込む身の上相談的な事案で、後半の6篇は、休暇を取ったパイン氏が旅先で遭遇する事件という構成。
前半でしっかり、パイン氏の日頃の仕事ぶりを目にすることが出来るので、後半の旅先という非日常に遭遇するあれこれの解決法をパイン氏ならば…と“推理”しながら読み進めることができる。
クリスティー作品は10代の頃に、ポアロとマープルをほとんど読んだが、その後がなかなか続かず、パイン氏にお目に掛かったのもこれが初めてだったように思う。
物語の展開だけでなく、他のシリーズの登場人物が顔を覗かせたりする遊び心や、働く女性のしたたかなたくましさ、イラン、イラク、エジプトと、中東の魅力をちりばめつつもその魅力にちっとも気がついていない風の鼻持ちならない観光客たちの辛辣な描写にクリスティーらしさを感じたりもできる、なかなか楽しい1冊だった。
<アガサ・クリスティー作品レビュー>
春にして君を離れ
さあ、あなたの暮らしぶりを話して
終りなき夜に生れつく
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2025-01-06 06:30
かれこれ二年半も続いている“#やりなおし世界文学 読書会”。
新しいメンバーも増えてたのしく有意義に交流していますので、皆様もぜひお立ち寄りください。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:378
- ISBN:9784151300578
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