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DBさん
DB
レビュアー:
クリスマスの精神の話
やはり今日はこの本でしょ、と取り出してきました。
二年に一度は再読するディケンズの名作です。

冷酷で人間嫌いの老人スクルージにとって、クリスマスは忌々しい日だった。
子沢山の貧しい書記は休みをとるし、明るい甥っ子は毎年冷たく断られているにもかかわらずクリスマスの食事に誘いに来る。
何よりもキャロルを歌って施しを貰おうとしたり、プレゼントを買ったり、そして慈善に寄付したりすることが何よりも無駄と感じる老人だ。
「人情などはいっさい受けつけず、人を押しのけ、突き飛ばして進んでいく」のがスクルージにとっての正しいことだったのだ。
効率を追求する競争社会にも通じるものがあるけれどね。

そんなスクルージの前に現れたのは、かつての職場のパートナーだったマーレイの幽霊だった。
ちょうど七年前に亡くなったマーレイが生前と同じ姿で、ただし腰の周りに長い鎖を巻き付けた状態で現れたのだ。
これにはさすがのスクルージも恐怖に捕らわれ、マーレイの語る言葉に耳を傾ける。
マーレイは生前の行いのために重い鎖を我が身に巻かれ、休むことのない長くつらい旅をしているという。
そしてスクルージも死後は辛い思いをすることになると警告するのだった。
だがそうならないように、最後のチャンスが与えられると言う。
それには三人のゴーストが三晩にわたりやってくるので、その言葉に従わなくてはならない。

こうしてスクルージのもとに「過去のクリスマス」「現在のクリスマス」、そして「未来のクリスマス」というゴーストが順番に現れて様々な光景を見せていく。
それはスクルージがまだ少年だった頃に奉公先の主人が催したクリスマスだったり、貧しい書記が家族と質素ながらも愛情深く過ごすクリスマスだったり。
さらに甥の家で楽しく繰り広げられるゲームでは子供時代を思い出し。
そして未来では誰にも看取られることなく死んでいく老人の姿を見る。

一晩で幾夜ものクリスマスを体験し、すっかり心が変わったスクルージの活躍ぶりが微笑ましい。
貧しい子だくさんの書記に巨大な七面鳥をプレゼントし、慈善への寄付をして、甥のクリスマスパーティーに参加する。
スクルージがずっと笑顔で心から楽しんでいるのが見ていて微笑ましい。
クリスマスって人とのつながりを大切にして感謝する日だったんだよね。
商業主義の日本にぜひ広めたい本来のクリスマスでした。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2051 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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