ゆうちゃんさん
レビュアー:
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鍛冶屋の徒弟から、遺産が転がり込んで紳士の教育を受けることになったピップ。彼はロンドンで遊び暮らすが、意外な人物が訪ねて来て愕然とする。彼は紳士になれるのか?そして真の紳士とはどんな人であるべきなのか
(上巻の粗筋)
ピップと呼ばれる主人公は、両親を亡くし、かなり年上の姉とその夫で鍛冶屋のジョー・ガージャリーに育てられていた。ピップはかろうして文字が読める程度の教育しか受けておらず、姉の育児は実際には虐待に近い。あるクリスマスの晩、ピップは墓地で半ば脅されて脱獄囚に食事を分けてやった。その後、ある偶然によりミス・ハヴィシャムという独身の老嬢のところに遊びに行くことになった。そこでエステラという高慢な少女に出会う。暫くはミス・ハヴィシャムのところに通ったが、ミス・ハヴィシャムから鍛冶屋の徒弟になれといわれた。徒弟として数年を過ごした後、謎の財産持ちから遺贈があると知らされ紳士の教育を受けることになってロンドンに出た。彼の教育は、ミス・ハヴィシャムのいとこのポケット夫妻に委ねられ、彼はハーバートというその息子と親しくなる。
ロンドンに出て来たピップは半ば遊び暮らした。子供時代に世話になったジョーを省みることはなかった。ハーバートはとても良い奴で野心もあった。そこでピップは彼のためにある商会の経営権を秘密に買ってやった。こうしてピップの借金は膨らんでゆく。ミス・ハヴィシャムは、エステラをリチモンドの婦人の家で教育を受けさせると言い、その送り迎えに時々ピップを使った。彼はエステラへの思いが断ちがたく、自分の思慕を隠さないが、エステラは相変わらず高慢だった。月日が経ちピップは21歳になったが、弁護士で後見人のジャガーズは、未だに遺産の贈与者を明かせないと言う。身分が不安なままロンドンで暮らすピップの元にある人物が訪ねてきた。ピップは彼の身元を知り愕然とするが、同時に彼がロンドンに居ることは非常に危険だとわかった。その人物とは・・・。
そして、ミス・ハヴィシャムの元に戻ったエステラはドラムルと言う性悪な男と結婚すると言い出した。若い時に結婚の夢破れたミス・ハヴィシャムは、エステラを美しい貴婦人に育て、男を誘惑させては絶望させるということを繰り返していた。しかしエステラもそんな生活に倦み結婚をしたいというのだった。ピップはこれを知って、ミス・ハヴィシャムにもエステラにも道理を説いたが効果はなかった。
デヴィッド・コッパフィールドやオリヴァー・ツイストのような若者の成長物語の範疇ではあるが、さすがディケンズで同工異曲と言う訳ではない。最後の場面は、他の作品なら描かれるべき主人公のその後がなく、むしろ余韻を残す感じである。主人公のピップは、だらしなく定見もなく、転がりこんだ幸運をネタに遊び、金があることを鼻にかけ、あまり共感できる主人公とは言えない。だがそんな彼の一人称小説が、最後まで読むと感動的である。
また本書は、遺贈したのは誰なのか、なぜピップに遺贈するのか、ピップの身分が最後はどうなるのか、誰と結ばれるのか、と色々謎があるのだが、最後までハラハラさせる展開である。推理小説ではないが、謎をかなり後ろまで引っ張る点に特徴がある。実はジョーの行く末などが、評者には意外だった。
弁護士ジャガーズの事務員ウェミックは事務所と自宅で公私の態度をきっちり使い分け、なかなかユニークなキャラクターである。全く本筋とかけ離れたウェミックの結婚の場面は読んでいて微笑ましい。ピップの身分により簡単に態度を変えるパンブルチュック、徹底的な悪人であるジョーの雇人だったオーリックなど、ディケンズならではの滑稽でデフォルメされた登場人物も健在だ。本書が三大傑作といわれるゆえんでもあろう。
ピップと呼ばれる主人公は、両親を亡くし、かなり年上の姉とその夫で鍛冶屋のジョー・ガージャリーに育てられていた。ピップはかろうして文字が読める程度の教育しか受けておらず、姉の育児は実際には虐待に近い。あるクリスマスの晩、ピップは墓地で半ば脅されて脱獄囚に食事を分けてやった。その後、ある偶然によりミス・ハヴィシャムという独身の老嬢のところに遊びに行くことになった。そこでエステラという高慢な少女に出会う。暫くはミス・ハヴィシャムのところに通ったが、ミス・ハヴィシャムから鍛冶屋の徒弟になれといわれた。徒弟として数年を過ごした後、謎の財産持ちから遺贈があると知らされ紳士の教育を受けることになってロンドンに出た。彼の教育は、ミス・ハヴィシャムのいとこのポケット夫妻に委ねられ、彼はハーバートというその息子と親しくなる。
ロンドンに出て来たピップは半ば遊び暮らした。子供時代に世話になったジョーを省みることはなかった。ハーバートはとても良い奴で野心もあった。そこでピップは彼のためにある商会の経営権を秘密に買ってやった。こうしてピップの借金は膨らんでゆく。ミス・ハヴィシャムは、エステラをリチモンドの婦人の家で教育を受けさせると言い、その送り迎えに時々ピップを使った。彼はエステラへの思いが断ちがたく、自分の思慕を隠さないが、エステラは相変わらず高慢だった。月日が経ちピップは21歳になったが、弁護士で後見人のジャガーズは、未だに遺産の贈与者を明かせないと言う。身分が不安なままロンドンで暮らすピップの元にある人物が訪ねてきた。ピップは彼の身元を知り愕然とするが、同時に彼がロンドンに居ることは非常に危険だとわかった。その人物とは・・・。
そして、ミス・ハヴィシャムの元に戻ったエステラはドラムルと言う性悪な男と結婚すると言い出した。若い時に結婚の夢破れたミス・ハヴィシャムは、エステラを美しい貴婦人に育て、男を誘惑させては絶望させるということを繰り返していた。しかしエステラもそんな生活に倦み結婚をしたいというのだった。ピップはこれを知って、ミス・ハヴィシャムにもエステラにも道理を説いたが効果はなかった。
デヴィッド・コッパフィールドやオリヴァー・ツイストのような若者の成長物語の範疇ではあるが、さすがディケンズで同工異曲と言う訳ではない。最後の場面は、他の作品なら描かれるべき主人公のその後がなく、むしろ余韻を残す感じである。主人公のピップは、だらしなく定見もなく、転がりこんだ幸運をネタに遊び、金があることを鼻にかけ、あまり共感できる主人公とは言えない。だがそんな彼の一人称小説が、最後まで読むと感動的である。
また本書は、遺贈したのは誰なのか、なぜピップに遺贈するのか、ピップの身分が最後はどうなるのか、誰と結ばれるのか、と色々謎があるのだが、最後までハラハラさせる展開である。推理小説ではないが、謎をかなり後ろまで引っ張る点に特徴がある。実はジョーの行く末などが、評者には意外だった。
弁護士ジャガーズの事務員ウェミックは事務所と自宅で公私の態度をきっちり使い分け、なかなかユニークなキャラクターである。全く本筋とかけ離れたウェミックの結婚の場面は読んでいて微笑ましい。ピップの身分により簡単に態度を変えるパンブルチュック、徹底的な悪人であるジョーの雇人だったオーリックなど、ディケンズならではの滑稽でデフォルメされた登場人物も健在だ。本書が三大傑作といわれるゆえんでもあろう。
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神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:450
- ISBN:9784102030028
- 発売日:1988年04月03日
- 価格:660円
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