レビュアー:
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舞台は19世紀のロンドン、難事件解決に辣腕を振るうは、才芸並びなきボヘミアのフロリゼル王子なり
『宝島』などでお馴染みのスティーブンソンによる冒険物語である。時は19世紀、ロンドンに滞在中のボヘミア王子フロリゼル殿下が遭遇した二つの事件が語られる。フロリゼル王子は、穏やかで思慮深く気前も良くてルックス抜群という、たいそう魅力的なお方である。彼は退屈すると臣下の大佐をお供に、変装して身分を隠し夜の街へと出かけてゆく。そして、奇妙な出来事に出会うのだ。
ある三月の晩、王子と大佐が牡蠣料理の店にいると、若い男がふたりのお供を連れて入ってきた。お供はクリームタルトを盛った大皿を抱え、若者は客の間を回って礼儀正しくタルトを勧めはじめた。(「自殺クラブ」)
ハリー青年の主人、陸軍少将ヴァンデラー卿は、インドの藩主から贈られた世界で六番目に大きなダイヤを持っている。気性の激しい卿と美しい妻は喧嘩が絶えない。ある日、ハリーは卿の妻から妙なことを頼まれる。この箱を今すぐこの所番地に届けて欲しい。どんなことがあっても箱を手放してはだめよ。(「ラージャのダイヤモンド」)
どちらも出だしが面白く、話に引き込まれる。また、どちらの話も三つ四つに分かれていて、章ごとに別の人物の視線で語られる。様々な場所に色を置いていって、最後に一枚の絵が完成するような感じである。
この作品はアラビアには関係がない。
「フロリゼル王子とその股肱の臣ジェラルディーン大佐を、(『千夜一夜物語』に出てくる)教主ハルン・アル・ラシッと腹心の大宰相になぞらえる趣向であります。」と訳者の南條さんが解説で述べられていた。
悠揚として物に動じない王子、献身的で機略に富む大佐、ふたりは素敵なコンビである。なお、作者は歴史を無視できなかったようで、こんな後日談がついている。王子が長いこと故国を留守にしている間に故国では革命が起こった。王座を失ったフロリゼル殿下は、ルーパート街で煙草屋を営んでおられるらしい。きっとまた夜のロンドンをふらついて、事件に巻き込まれるに違いない。
ある三月の晩、王子と大佐が牡蠣料理の店にいると、若い男がふたりのお供を連れて入ってきた。お供はクリームタルトを盛った大皿を抱え、若者は客の間を回って礼儀正しくタルトを勧めはじめた。(「自殺クラブ」)
ハリー青年の主人、陸軍少将ヴァンデラー卿は、インドの藩主から贈られた世界で六番目に大きなダイヤを持っている。気性の激しい卿と美しい妻は喧嘩が絶えない。ある日、ハリーは卿の妻から妙なことを頼まれる。この箱を今すぐこの所番地に届けて欲しい。どんなことがあっても箱を手放してはだめよ。(「ラージャのダイヤモンド」)
どちらも出だしが面白く、話に引き込まれる。また、どちらの話も三つ四つに分かれていて、章ごとに別の人物の視線で語られる。様々な場所に色を置いていって、最後に一枚の絵が完成するような感じである。
この作品はアラビアには関係がない。
「フロリゼル王子とその股肱の臣ジェラルディーン大佐を、(『千夜一夜物語』に出てくる)教主ハルン・アル・ラシッと腹心の大宰相になぞらえる趣向であります。」と訳者の南條さんが解説で述べられていた。
悠揚として物に動じない王子、献身的で機略に富む大佐、ふたりは素敵なコンビである。なお、作者は歴史を無視できなかったようで、こんな後日談がついている。王子が長いこと故国を留守にしている間に故国では革命が起こった。王座を失ったフロリゼル殿下は、ルーパート街で煙草屋を営んでおられるらしい。きっとまた夜のロンドンをふらついて、事件に巻き込まれるに違いない。
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この書評へのコメント
- Wings to fly2020-05-05 09:51
ぴょんはまさん
ご存知の作品だったのですね。新訳は、たぶん意識して適度に古めかしい言葉を使用しているためか、19世紀らしい雰囲気を感じさせてくれます。(牡蠣料理屋にオイスターバーってルビが振ってあったりね。)
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- 出版社:光文社
- ページ数:303
- ISBN:9784334751395
- 発売日:2007年09月06日
- 価格:600円
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