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三太郎さん
三太郎
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東京のコンサートホールで開催されるオペラの舞台裏で人知れず様々なドラマが繰り広げられます。
2006年に婦人画報に連載された小説です。いつもより毒は少なめな感じです。

特定の主人公というのはいないようで、あえて言えば東京を代表するコンサートホールで開催されるモーツァルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」の舞台が主役でしょうか。

恩田陸さんのドミノにちょっと似た構成の小説です。

登場するのは国際的指揮者で精力絶倫のマエストロとその二番目の妻と元愛人、歌劇に出演するテノール歌手のアンドレと彼の臨時マネージャーに雇われた元ホステスのまどか、童貞で大学講師の太田と彼を20年間思い続けた幼馴染の春香などなど。彼らが公演初日のホールに集まって、最後に各々に奇跡が訪れます。

島田雅彦の小説らしく、風采の上がらない大学講師の太田の若い頃の偶像が島田雅彦の小説の主人公のひねくれ者の亜久間一人だったりします。

初老のマエストロはドン・ジョバンニばりに方々に愛人を作りますが、本家のドンのように女性に恨みを買う様なことはなかったようです。ところが今度の東京公演では、マエストロが10年前に分かれた元愛人の夫だという作家が現れて、公演には妻も聴きにくるというので、マエストロは動揺します。

その作家はたぶん島田雅彦の分身なのでしょうが、ドン・ジョバンニについて蘊蓄を語ります。それによるとドン・ジョバンニはスペインに住んでいたアラブ人かユダヤ人で、キリスト教徒に恨みを持っていたのだと言います。

作家の妻は10年前にマエストロと別れたのですが、今年9歳になる娘を連れています。彼女は実は、というお話です。

それ以外にも、当日になると舞台に立つのが怖くて初日のステージに上げるまでが大変なテノール歌手のアンドレが、にわかマネージャーのまどかをおかまだと勘違いして結婚の約束をしてしまうとか、幾つかのドタバタ劇が仕掛けられています。

ところで小説の舞台は東京のサントリーホールだと思われるのですが、同ホールで実際にドン・ジョバンニが演奏されたのは2009年なので、小説の方が先行していたようです。島田はドン・ジョバンニがよほど好きなのかも。


僕自身はオペラを観に行ったことがないし、サントリーホールも行ったことがなかったかも。渋谷のオーチャードホールの方が家に近くて便利だったからかな。

(訂正)奥さんに確認したところ、サントリーホールには朝比奈さんが指揮するブルックナーの交響曲7番を聴きに行ってました。1997年でした。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:828 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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