タカラ~ムさん
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牙を抜かれた犬と読む「バスカヴィル家の犬」
《お知らせ》「古今東西、名探偵を読もう!」という掲示板企画を立ち上げています。名探偵が好きなみなさんのご参加お待ちしています!
掲示板企画に合わせて「シャーロック・ホームズ・シリーズ」の作品をボチボチと読み進めています。ちょっと間が空いてしまいましたが、今回読んだのは「バスカヴィル家の犬」です。ストーリーはだいたい知られているかと思いますが、一応簡単におさらいしておきます。
ある日、バスカヴィル家の当主チャールズの主治医であるモーティマー博士がホームズとワトスンのところにやってくる。チャールズは、表向きは心臓発作とされる謎の死を遂げていた。だが、バスカヴィル家の謎はそれだけではない。バスカヴィル家には代々言い伝えられている『魔の犬』の伝説があり、不審死を遂げたチャールズの死体のそばには大きな犬の足跡が残されていたというのだ。そのバスカヴィル家では、チャールズの甥であるヘンリーが新しい当主となることになっていた。そのヘンリーのもとへバスカヴィル家に近づくなと警告する手紙が届けられる。事件に興味を覚えたホームズとワトスンは依頼を受け、ワトスンが先にバスカヴィルの館に赴く。そこには、様々な人々の思惑が錯綜しており、バスカヴィル家を巡る謎は深まる。そして、ワトスン自身も恐ろしい魔犬の咆哮を聞くことになる。
「バスカヴィル家の犬」は、ホームズシリーズ作品の中でも人気の高い作品です。2013年に「翻訳ミステリー大賞シンジケート」のサイトで実施された「Twitterで決める、ホームズ作品人気ベスト10」では、見事1位に選ばれています。他のホームズ作品とはちょっと違うゴシックホラー的なテイストも人気の理由のようです。
「バスカヴィル家の犬」は、そのタイトルが示しているように“犬”がポイントになっています。バスカヴィル家に伝わる『魔の犬伝説』で恐怖心、猜疑心を煽り、口から火を吐く巨大で凶暴な魔犬によって事件が引き起こされるという展開は、まだ子どもの頃に本書を初めて読んだときに鮮烈な印象を受けました。今回改めて読んでも、ラスト近くの魔犬が登場する描写は相当に怖いです。
こんな恐ろしく獰猛な魔犬が暗闇の中から不意に現れたとしたら、驚かないひとはまずいないでしょう。恐怖のあまり死に至っても不思議ではありません。このラストの場面でも、ヘンリーを亡き者とするために犯人は魔犬を放ちます。間一髪、ホームズが撃ち放った銃弾によって魔犬(小さな牝獅子ほどの大きさもあるブラッドハウンドとマスティフの混血種)は殺され、ヘンリーの命は救われます。
ただ、「バスカヴィル家の犬」については、その内容に疑義を呈する研究家もいます。「アクロイドは誰が殺したのか」でアガサ・クリスティー「アクロイド殺し」の謎に切り込んだピエール・バイヤールは、「シャーロック・ホームズの誤謬(『バスカヴィル家の犬』再考)」と題する評論書でいくつかの疑問をあげています。
①チャールズ・バスカヴィルは本当に犬に襲われそうになった恐怖で心臓発作を起こして死んだのか?
②チャールズを襲うためにけしかけられた犬が、目の前で相手が死んだからといって、それを認識して襲うのを止めるのか?
③そもそも、犬は本当にチャールズやヘンリーを襲おうとしていたのか?
これらの疑問にどういう答えを見出したのかは、バイヤールの著書で確認していただきたいと思いますが、このような研究書が出されるということをもってしても、「バスカヴィル家の犬」がミステリーファンにとって特別な作品であるといえるのではないでしょうか。
ところで、ちょっとごぶさた気味の我が家のアイドル・ラムですが、相変わらず元気です。ちょっといろいろあったので、最後に彼女からご挨拶していただいてレビューを締めたいと思います。
みんな久しぶり!ラムよ!元気だった?
いきなりだけど、アタシこの間大事な牙を抜いちゃったの。犬にとっては大事な牙なのに!
何日か前から歯が痛くて出血してたの。おかげで食べ物も美味しくなくてね、それで、病院に行ったら「歯槽膿漏だから、抜きましょう」って。そのまま日帰り入院で抜歯されちゃったわけ。おかげで痛みはなくなって食事もちゃんととれるようになったけど、牙がないってなんか落ち着かないわね。みんなも歯は大事しなきゃダメよ!
じゃ、またね!
掲示板企画に合わせて「シャーロック・ホームズ・シリーズ」の作品をボチボチと読み進めています。ちょっと間が空いてしまいましたが、今回読んだのは「バスカヴィル家の犬」です。ストーリーはだいたい知られているかと思いますが、一応簡単におさらいしておきます。
ある日、バスカヴィル家の当主チャールズの主治医であるモーティマー博士がホームズとワトスンのところにやってくる。チャールズは、表向きは心臓発作とされる謎の死を遂げていた。だが、バスカヴィル家の謎はそれだけではない。バスカヴィル家には代々言い伝えられている『魔の犬』の伝説があり、不審死を遂げたチャールズの死体のそばには大きな犬の足跡が残されていたというのだ。そのバスカヴィル家では、チャールズの甥であるヘンリーが新しい当主となることになっていた。そのヘンリーのもとへバスカヴィル家に近づくなと警告する手紙が届けられる。事件に興味を覚えたホームズとワトスンは依頼を受け、ワトスンが先にバスカヴィルの館に赴く。そこには、様々な人々の思惑が錯綜しており、バスカヴィル家を巡る謎は深まる。そして、ワトスン自身も恐ろしい魔犬の咆哮を聞くことになる。
「バスカヴィル家の犬」は、ホームズシリーズ作品の中でも人気の高い作品です。2013年に「翻訳ミステリー大賞シンジケート」のサイトで実施された「Twitterで決める、ホームズ作品人気ベスト10」では、見事1位に選ばれています。他のホームズ作品とはちょっと違うゴシックホラー的なテイストも人気の理由のようです。
「バスカヴィル家の犬」は、そのタイトルが示しているように“犬”がポイントになっています。バスカヴィル家に伝わる『魔の犬伝説』で恐怖心、猜疑心を煽り、口から火を吐く巨大で凶暴な魔犬によって事件が引き起こされるという展開は、まだ子どもの頃に本書を初めて読んだときに鮮烈な印象を受けました。今回改めて読んでも、ラスト近くの魔犬が登場する描写は相当に怖いです。
(略)たしかに犬だ。だが、今までに人間が見たことのないような、巨大な漆黒な犬だった。開いた口から火をはき、目は炭火のように燃え光り、鼻面と首とのどとは、めらめらとゆらぐ炎でくまどられていた。狂人の頭がえがきだす幻怪な夢魔のなかにも、このとき、霧の堤のなかからこちらにとびだしてきた黒い姿と野蛮な顔つきほどに、獰猛で、凄惨で、地獄的なものはあり得ないだろう。
こんな恐ろしく獰猛な魔犬が暗闇の中から不意に現れたとしたら、驚かないひとはまずいないでしょう。恐怖のあまり死に至っても不思議ではありません。このラストの場面でも、ヘンリーを亡き者とするために犯人は魔犬を放ちます。間一髪、ホームズが撃ち放った銃弾によって魔犬(小さな牝獅子ほどの大きさもあるブラッドハウンドとマスティフの混血種)は殺され、ヘンリーの命は救われます。
ただ、「バスカヴィル家の犬」については、その内容に疑義を呈する研究家もいます。「アクロイドは誰が殺したのか」でアガサ・クリスティー「アクロイド殺し」の謎に切り込んだピエール・バイヤールは、「シャーロック・ホームズの誤謬(『バスカヴィル家の犬』再考)」と題する評論書でいくつかの疑問をあげています。
①チャールズ・バスカヴィルは本当に犬に襲われそうになった恐怖で心臓発作を起こして死んだのか?
②チャールズを襲うためにけしかけられた犬が、目の前で相手が死んだからといって、それを認識して襲うのを止めるのか?
③そもそも、犬は本当にチャールズやヘンリーを襲おうとしていたのか?
これらの疑問にどういう答えを見出したのかは、バイヤールの著書で確認していただきたいと思いますが、このような研究書が出されるということをもってしても、「バスカヴィル家の犬」がミステリーファンにとって特別な作品であるといえるのではないでしょうか。
ところで、ちょっとごぶさた気味の我が家のアイドル・ラムですが、相変わらず元気です。ちょっといろいろあったので、最後に彼女からご挨拶していただいてレビューを締めたいと思います。
みんな久しぶり!ラムよ!元気だった?
いきなりだけど、アタシこの間大事な牙を抜いちゃったの。犬にとっては大事な牙なのに!
何日か前から歯が痛くて出血してたの。おかげで食べ物も美味しくなくてね、それで、病院に行ったら「歯槽膿漏だから、抜きましょう」って。そのまま日帰り入院で抜歯されちゃったわけ。おかげで痛みはなくなって食事もちゃんととれるようになったけど、牙がないってなんか落ち着かないわね。みんなも歯は大事しなきゃダメよ!
じゃ、またね!
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プロフィール写真変更してみました(2016/11/03)
この書評へのコメント
- Wings to fly2017-02-17 20:36
ラムちゃん、ご飯は美味しく食べられるようになったかな?お大事に‼︎
僕も歯は大事にしたいけど、歯磨きは大嫌いだよ。
いま、お母さんに捕まった。助けて〜〜!
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:254
- ISBN:9784488101077
- 発売日:1979年07月04日
- 価格:525円
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