hackerさん
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「ちいさな かしこい さかなの はなし」という副題がついていて、その通りの内容なのですが、スイミーのかしこさがどこから生まれたかについて、松居直は大変興味深い指摘をしています。
本書を訳した谷川俊太郎が「絵本作家という存在が、本質的には絵かきであると同時に詩人であること」を気づかせてくれたと評した、レオ=レオニ(1910-1999)はオランダ生まれのユダヤ人で、イタリアとアメリカで活躍した、私の大好きな絵本作家です。殊に『フレデリック ちょっとかわったねずみのはなし』(1967年)は、私が今まで読んだ絵本の中でもベストに数えられる絵本です。ただ、1963年刊の本書は、それに比べると、絵の美しさは素晴らしいものの、初読の印象とすると、やや薄いものがありました。
理由とすると、「ちいさな さかなの きょうだいたち」の中で「みんな あかいのに(中略)からすがいよりも まっくろ」なスイミーが、他のきょうだいたちの眼になって、みんなで協力して巨大なさかなの形をつくり、おおきなさかなを追い払うというお話が、どうもあからさまな教訓譚のように思えたからです。別に教訓譚でも構わないのですが、やや「作った」教訓譚のような印象を持ったせいでしょう。
しかし、松居直の次の文章には教えられました。
「意外なことに作者は、スイミーがひとりぼっちで海のなかを心細そうに泳いでいる場面に、なんと全体の半分以上の八場面をあて、しかも場面ごとに美しく多様な表現を工夫しています。作者はここを語りたかったのです。
『ひとりになる』ことで、スイミーは自分の眼でものを見、自分で感じ、自分で考えるという経験をし、『自分とはなにか』というもっとも大切なことを知ったのです」(『松居直のすすめる50の絵本』より)
これは鋭い指摘です。確かに、本書で絵が印象的なのは、きょうだいみんなで巨大なさかなになる部分ではなく、それ以前のスイミーが「放浪」している姿を描いた部分なのです。そして、スイミーはひとりぼっちの「放浪」を経験した後で、きょうだいたちのいわばリーダー役を務めているのです。
また、「からすがいよりも まっくろ」なスイミーという設定は、どうしても黒人を連想してしまうのですが、それよりも、「放浪」も含めて、他者と同じでないことを厭わない存在と理解した方が良いのでしょう。そういう意味では、『フレデリック ちょっとかわったねずみのはなし』の主人公のねずみと通じるものがありますし、それが芸術家としてのレオ=レオニの信条だったのでしょう。自分の眼で物を見るのは、芸術家としての絶対条件ですし、きょうだいたちの眼になるスイミーという存在には、作者の芸術家としての自負が表れていると思います。そう考えると、本書は、絵だけでなく、お話もレオ=レオニらしい一冊なのです。
理由とすると、「ちいさな さかなの きょうだいたち」の中で「みんな あかいのに(中略)からすがいよりも まっくろ」なスイミーが、他のきょうだいたちの眼になって、みんなで協力して巨大なさかなの形をつくり、おおきなさかなを追い払うというお話が、どうもあからさまな教訓譚のように思えたからです。別に教訓譚でも構わないのですが、やや「作った」教訓譚のような印象を持ったせいでしょう。
しかし、松居直の次の文章には教えられました。
「意外なことに作者は、スイミーがひとりぼっちで海のなかを心細そうに泳いでいる場面に、なんと全体の半分以上の八場面をあて、しかも場面ごとに美しく多様な表現を工夫しています。作者はここを語りたかったのです。
『ひとりになる』ことで、スイミーは自分の眼でものを見、自分で感じ、自分で考えるという経験をし、『自分とはなにか』というもっとも大切なことを知ったのです」(『松居直のすすめる50の絵本』より)
これは鋭い指摘です。確かに、本書で絵が印象的なのは、きょうだいみんなで巨大なさかなになる部分ではなく、それ以前のスイミーが「放浪」している姿を描いた部分なのです。そして、スイミーはひとりぼっちの「放浪」を経験した後で、きょうだいたちのいわばリーダー役を務めているのです。
また、「からすがいよりも まっくろ」なスイミーという設定は、どうしても黒人を連想してしまうのですが、それよりも、「放浪」も含めて、他者と同じでないことを厭わない存在と理解した方が良いのでしょう。そういう意味では、『フレデリック ちょっとかわったねずみのはなし』の主人公のねずみと通じるものがありますし、それが芸術家としてのレオ=レオニの信条だったのでしょう。自分の眼で物を見るのは、芸術家としての絶対条件ですし、きょうだいたちの眼になるスイミーという存在には、作者の芸術家としての自負が表れていると思います。そう考えると、本書は、絵だけでなく、お話もレオ=レオニらしい一冊なのです。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- ISBN:9784769020011
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