星落秋風五丈原さん
レビュアー:
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うちの叔父が言うことには
呑気な貴族バーティと、頭脳明晰な執事ジーヴスを描く『ジーヴズの事件簿』、次々と起こる事件に頭を悩ませるエムズワース卿を描く『エムズワース卿の受難録』に続き、登場したのはミスター・マリナー。
「釣遊亭(アングラーズ・レスト)」のバー・パーラーに夜毎現れ、皆の話が盛り上がった所で、「ひとつ〜の話を聞かせましょう」と切り出す。但し、タイトルには『冒険譚』と銘うっているが、何もこれ、「マリナー氏が世界各国で冒険を繰り広げた」「歴史的事件の背後にはマリナー氏あり」なんてしろものではない。マリナー氏はあくまで語り手で、主人公は彼の弟や姪っこ達である。それもどこまで本当だかわからない、という所からとってもアヤシイ。だって、知人、親類にこれだけ変人が揃っている人なんているだろうか?
その豪華な顔ぶれを紹介してみると、ざっとこうである。ジーヴズシリーズにも登場した、「最初は不思議な魅力で男性を虜にするが、最後に酷い目にあわせて『もう二度と会いたくない!』と思わせる」ロバータ・ウィッカム、発明した強壮剤の誤飲によって、自身の出世ばかりか友人の結婚話まで解決するウィルフレッド、いいとこのボンボンなのに、メンドリの物まねくらいしか取り柄のないアーチボルド、そして飛ぶ鳥落とす勢いのハリウッド・タイクーンの典型なのに、作者の恨みを受けてか、酷い目にあってばかりいるスタジオの最高責任者、シュレネンハマー。
実はこんな奇人変人と変わらぬ付き合いをしているマリナー氏こそ、極めつけの変人では?との推測がなされそうだが、さてそれは作者のみぞ知る永遠の謎である。呑気者が必ずしも不幸でなく、正義感を貫く者が必ずしも幸せになるわけではない、一見不条理ながら、こみあげてくる笑いをおさえる事などできない、不思議な魅力を持った短編集。
ジ―ヴス&バーティシリーズ
ジーヴズの事件簿 (P・G・ウッドハウス選集 1)
感謝だ、ジーヴス
ジーヴスとねこさらい
サンキュー、ジーヴス
ジーヴスと恋の季節
ウースター家の掟
がんばれ、ジーヴス
それゆけ、ジーヴス
ジーヴスと封建精神
エムズワ―ス卿シリーズ
ブランディングズ城のスカラベ騒動
エムズワース卿の受難録 (P・G・ウッドハウス選集 2)
ブランディングズ城の夏の稲妻 (ウッドハウス・スペシャル)
ボドキン家の強運 (ウッドハウス名作選)
春どきのフレッド伯父さん
ブランディングズ城の救世主
ノンシリーズ
ゴルフ人生
ユークリッジの商売道 (P・G・ウッドハウス選集4)
アーチー若気の至り
スウープ!
「釣遊亭(アングラーズ・レスト)」のバー・パーラーに夜毎現れ、皆の話が盛り上がった所で、「ひとつ〜の話を聞かせましょう」と切り出す。但し、タイトルには『冒険譚』と銘うっているが、何もこれ、「マリナー氏が世界各国で冒険を繰り広げた」「歴史的事件の背後にはマリナー氏あり」なんてしろものではない。マリナー氏はあくまで語り手で、主人公は彼の弟や姪っこ達である。それもどこまで本当だかわからない、という所からとってもアヤシイ。だって、知人、親類にこれだけ変人が揃っている人なんているだろうか?
その豪華な顔ぶれを紹介してみると、ざっとこうである。ジーヴズシリーズにも登場した、「最初は不思議な魅力で男性を虜にするが、最後に酷い目にあわせて『もう二度と会いたくない!』と思わせる」ロバータ・ウィッカム、発明した強壮剤の誤飲によって、自身の出世ばかりか友人の結婚話まで解決するウィルフレッド、いいとこのボンボンなのに、メンドリの物まねくらいしか取り柄のないアーチボルド、そして飛ぶ鳥落とす勢いのハリウッド・タイクーンの典型なのに、作者の恨みを受けてか、酷い目にあってばかりいるスタジオの最高責任者、シュレネンハマー。
実はこんな奇人変人と変わらぬ付き合いをしているマリナー氏こそ、極めつけの変人では?との推測がなされそうだが、さてそれは作者のみぞ知る永遠の謎である。呑気者が必ずしも不幸でなく、正義感を貫く者が必ずしも幸せになるわけではない、一見不条理ながら、こみあげてくる笑いをおさえる事などできない、不思議な魅力を持った短編集。
ジ―ヴス&バーティシリーズ
ジーヴズの事件簿 (P・G・ウッドハウス選集 1)
感謝だ、ジーヴス
ジーヴスとねこさらい
サンキュー、ジーヴス
ジーヴスと恋の季節
ウースター家の掟
がんばれ、ジーヴス
それゆけ、ジーヴス
ジーヴスと封建精神
エムズワ―ス卿シリーズ
ブランディングズ城のスカラベ騒動
エムズワース卿の受難録 (P・G・ウッドハウス選集 2)
ブランディングズ城の夏の稲妻 (ウッドハウス・スペシャル)
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春どきのフレッド伯父さん
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ユークリッジの商売道 (P・G・ウッドハウス選集4)
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2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:512
- ISBN:9784163261805
- 発売日:2007年07月30日
- 価格:2500円
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