書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

Rokoさん
Roko
レビュアー:
ありとあらゆるところでデザインが生きていたのです
浮世絵という名前が示す通り、浮世(世の中)の日常を切り取った絵です。決して高級な絵画ではなく、風景や人々を写し取ったポスターのような感覚で作られています。

そんな庶民の為のものである浮世絵がすごいのは、まずは絵の構図です。ただ景色を描くのではなく、窓越しの景色であったり、屋内の様子でもそこにいる女性の着物の裾だけで、その人がどんな人なのかわかってしまうような描き方なのです。

わたしが特にすごいなと思ったのは、「真乳山山谷堀夜景」です。提灯を持った下男の後ろを歩く女性の絵なのだけれど、提灯を持つ男は見えていません。提灯だって半分だけ!そういう思い切った構図であったり、歌舞伎の大首絵のようにクローズアップの構図だったり、そういう絵だからこそ見ている人の想像力を掻き立てるのです。


そして、特筆すべきなのは江戸での識字率の高さです。字を読めるからこそ、本を読む人が大勢いたのです。本を買うと高いので、貸本で本を読む人が大勢いました。瓦版だって、字が読める人がいるからこそです。

本だから字だけと言うわけではなく、面白い挿絵があったり、マンガのようなレイアウトがあったりして、ビジュアル的にも楽しい本がたくさんありました。


庶民は贅沢をしてはいけないという決まりがあったので、たとえお金持ちであっても一見は地味な服装でした。でも裏は色物を使ったり、豪華な柄物だったり、見えないところにお金をかけていたので、こういうデザインに携る職人もさぞかし多くいたのでしょう。

手ぬぐい、ポチ袋、千代紙などの小物のデザインはもちろん、広告に関するデザインもたくさんありました。

銭湯の洗い場の広告の話もありました。昭和の頃の銭湯でも同じように広告が沢山ありました。最近はめっきり広告は減りましたけど、家の近所の銭湯の脱衣所には「家のリフォーム」の広告が出ていましたよ。

江戸のデザインは、今見ても新鮮なものばかりです。温故知新とは、こういうことをいうのでしょうね。
    • 真乳山山谷堀夜景 (まつちやまさんやぼりやけい)
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
投票する
投票するには、ログインしてください。
Roko
Roko さん本が好き!1級(書評数:2964 件)

好きなジャンルはスポーツ、音楽、美術。
心・脳に関するものも、ついつい読んでしまいます。
小説もいいけどノンフィクションもね!

参考になる:23票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『ペンブックス 江戸デザイン学。』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ