かもめ通信さん
レビュアー:
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懐かしい風景、思い出に連なる人々、枕元で本を読み聞かせてくれた母の声……お茶に浸したマドレーヌの登場を待つまでもなく、頁をめくると溢れ出てくる想い出の流れに身をゆだねる幸せ。
その晩、読み終えた本の余韻に浸りながら床に就いた私は
主人公が書き綴った想い出についてつらつらと考えていた。
母からのお休みのキスがどうしても欲しくてあれこれと画策したこと
枕元でジョルジュ・サンドを読み聞かせてくれた母の声
ベッドの上で日がな一日窓の外を眺めながら
町の人の様子をつぶさに観察していた叔母の言葉
咲き乱れる山査子の花
本から得た喜び
憧れの女性
様々な思い出に連なるコンフリーの人々
主人公の思い出をたどっているつもりが
いつの間にか私の思い出まで溶け込んで
境界が曖昧になり、時間が遡って流れだす。
ふと気がつくと、時計の針が随分と進んでいた。
どうやら気づかぬうちにまどろんでいたらしい。
ああ、そうだ。
まるでこんな風に、この物語は始まったのだと、
あらためて思い浮かべる。
異なる書店を横断する形で全国各地で開催されている
「はじめての海外文学フェアvol.2」のために
翻訳者の方々が推薦した52冊の本を
みんなで読もうと読書会を開いたのが運の尽き。
当初はコンプリートしなくても
みんなで感想を言い合えればいいかと思っていたのだが
だんだんと進むにつれて欲が出てきた。
あと10冊,あと8冊……となってくればもう
頑張って読み切ろうと思うのが人情というものだ。
ところがこの選書の中で誰も手を挙げない本が1冊
何を隠そうそれがこの本だった。
もちろん本が好き!レビュアー陣には既に読んでおられる方もいらっしゃることと思うが
まだ読んでいない者にとってはかなりハードルが高い。
なにしろこの光文社古典新訳でも全部で14冊の刊行が予定されている大長編なのだ。
(2016年末時点で5巻まで刊行済)
やはりここは読書会の主催者である私が責任をとって
まずは1巻だけでも読むべきか……と思いつつも
(難解だったらどうしよう。)
(うかつに手を出して深みにはまったらどうすれば~)と
Twitterでグズグズ言っていたところ
なんと翻訳者の高遠先生の目に留まってしまい、
読み進めるに当たってのアドバイスまでいただいてしまった。
というわけで、意を決して読んでみることに。
とはいえ、まずは1冊だけのつもりで
うまくレビューがかけない時の保険も兼ねて
別訳もいくつか手元に置いて挑んでみた。
読んでみるとこれがなんとも……。
だれ?面白くないといった人は?
だれ?よみづらいといった人は?
最初は読み飛ばせばいいのだといった人も?
いやいやこれ最初からすごく面白い。
この漂う雰囲気がたまらない。
殺伐とした世の中と
年末の仕事に追われて
心も身体も“お疲れモード”だった私にとって
まさしく癒やしの1冊だった。
この本をメインに据えながらも
何冊か別訳も手にとって読み比べてみもしたが
私の今の気分にはこの光文社古典新訳版がぴったりという気がした。
とりわけ素晴らしいのが
巻末に収録されている訳者による読書ガイドだ。
正直なのところ光文社古典新訳文庫の“読書ガイド”には
これまで何度かがっかりさせられてきたので
こわごわと覗いてみたのだがこれがもうすばらしい!!
先入観を持たずにとにかくその世界に浸って欲しいという立場から
あえてこの先のあらすじにはふれることなく
どのようにして物語に魅せられたのかや
先行訳や原文と比較しつつ、新訳にあたってこだわった点なども丁寧に紹介してくれる、
まさに私が求めていたのはこれだ!と思う至れり尽くせりのガイドなのだ。
というわけで決めました!
光文社古典新訳でゆっくりじっくり読み進めます!最後まで!!
主人公が書き綴った想い出についてつらつらと考えていた。
母からのお休みのキスがどうしても欲しくてあれこれと画策したこと
枕元でジョルジュ・サンドを読み聞かせてくれた母の声
ベッドの上で日がな一日窓の外を眺めながら
町の人の様子をつぶさに観察していた叔母の言葉
咲き乱れる山査子の花
本から得た喜び
憧れの女性
様々な思い出に連なるコンフリーの人々
主人公の思い出をたどっているつもりが
いつの間にか私の思い出まで溶け込んで
境界が曖昧になり、時間が遡って流れだす。
ふと気がつくと、時計の針が随分と進んでいた。
どうやら気づかぬうちにまどろんでいたらしい。
長い間、私はまだ早い時間から床に就いた。ときどき、蝋燭が消えたか消えぬうちに「ああこれで眠るんだ」と思う間もなく急に瞼がふさがってしまうこともあった。そして、半時間もすると今度は、眠らなければという考えが私の目を覚まさせる。
ああ、そうだ。
まるでこんな風に、この物語は始まったのだと、
あらためて思い浮かべる。
異なる書店を横断する形で全国各地で開催されている
「はじめての海外文学フェアvol.2」のために
翻訳者の方々が推薦した52冊の本を
みんなで読もうと読書会を開いたのが運の尽き。
当初はコンプリートしなくても
みんなで感想を言い合えればいいかと思っていたのだが
だんだんと進むにつれて欲が出てきた。
あと10冊,あと8冊……となってくればもう
頑張って読み切ろうと思うのが人情というものだ。
ところがこの選書の中で誰も手を挙げない本が1冊
何を隠そうそれがこの本だった。
もちろん本が好き!レビュアー陣には既に読んでおられる方もいらっしゃることと思うが
まだ読んでいない者にとってはかなりハードルが高い。
なにしろこの光文社古典新訳でも全部で14冊の刊行が予定されている大長編なのだ。
(2016年末時点で5巻まで刊行済)
やはりここは読書会の主催者である私が責任をとって
まずは1巻だけでも読むべきか……と思いつつも
(難解だったらどうしよう。)
(うかつに手を出して深みにはまったらどうすれば~)と
Twitterでグズグズ言っていたところ
なんと翻訳者の高遠先生の目に留まってしまい、
読み進めるに当たってのアドバイスまでいただいてしまった。
というわけで、意を決して読んでみることに。
とはいえ、まずは1冊だけのつもりで
うまくレビューがかけない時の保険も兼ねて
別訳もいくつか手元に置いて挑んでみた。
読んでみるとこれがなんとも……。
だれ?面白くないといった人は?
だれ?よみづらいといった人は?
最初は読み飛ばせばいいのだといった人も?
いやいやこれ最初からすごく面白い。
この漂う雰囲気がたまらない。
殺伐とした世の中と
年末の仕事に追われて
心も身体も“お疲れモード”だった私にとって
まさしく癒やしの1冊だった。
この本をメインに据えながらも
何冊か別訳も手にとって読み比べてみもしたが
私の今の気分にはこの光文社古典新訳版がぴったりという気がした。
とりわけ素晴らしいのが
巻末に収録されている訳者による読書ガイドだ。
正直なのところ光文社古典新訳文庫の“読書ガイド”には
これまで何度かがっかりさせられてきたので
こわごわと覗いてみたのだがこれがもうすばらしい!!
先入観を持たずにとにかくその世界に浸って欲しいという立場から
あえてこの先のあらすじにはふれることなく
どのようにして物語に魅せられたのかや
先行訳や原文と比較しつつ、新訳にあたってこだわった点なども丁寧に紹介してくれる、
まさに私が求めていたのはこれだ!と思う至れり尽くせりのガイドなのだ。
というわけで決めました!
光文社古典新訳でゆっくりじっくり読み進めます!最後まで!!
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- ゆうちゃん2017-01-06 00:31
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。光文社版を読まれるのですね。確か刊行順からすると、逃げ去ったアルベルチーヌ、と後ろの方の巻からだったような・・・。
私は集英社版を5、6年前に読んだことがあります。確かに読みにくいと言うことはなく、また登場人物も各巻ごとにまとめてくれているので大変役に立ちました。強いて言えば、どうしても巻数が多いので、その分時間がかかるという事と、著者が改訂中に亡くなったので、前の巻と後ろの巻に矛盾がある事、くらいではないかと思います。
全巻読破されるとのこと、書評を楽しみにしております。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2017-01-06 06:02
ちなみに翻訳者の高遠先生から戴いたアドバイスの一部はこちら↓からお読み戴けますw
https://twitter.com/kamometuusin/status/808304618140643329クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:光文社
- ページ数:468
- ISBN:9784334752125
- 発売日:2010年09月09日
- 価格:1000円
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