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あかつき
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信仰に満ちたあまりにも美しい世界を見てしまうと、「全世界を1つの信仰でまとめ上げたら…」と過去の人々が妄想してしまった気持ちがわかる気する。しかし、人は、ひとつの道で救われるわけではないのだ。
ヴァチカン市国を、ナショナルジオグラフィックが密着取材。
美術品や建造物より、そこに住まう人々に焦点を当てた写真集です。

教皇ヨハネ・パウロ2世のプライベートな一面、教皇の生活を支える修道女たちの手仕事、侍者の少年やスイス衛兵の日常、全世界へ教皇の言葉(と、暗号による指令)を送る放送局、警察、郵便局……。
世界中で知らぬものはいない小さな独立国家の、信仰に満ちた知られざる日々。
「閉ざされた世界」でありながら、「全世界へ発信する最前線」でもあるという、ヴァチカンの矛盾した性格。
そして、コンクラーベとベネディクト16世の誕生。
まるで「天使と悪魔」の世界に入ってしまったかのような。

後半の、近世の教皇の特集が面白かったです。
ヨハネ・パウロ2世しか知らなかったもので。

私自身はキリスト教に帰依しているわけではないし、キリスト教と言ったら寧ろ信仰を名目に行われてきた数々の暗黒面を思い浮かべてしまうけれど、それでもヴァチカンをカトリックの聖地たらしめている信仰のエネルギーは比類なきものと思います。
悔しいけれど、キリスト教がなかったら、バッハはどんな曲を創って、ミケランジェロはどんな絵を描いたんでしょうね。見当もつかない。
しかし、ローマ帝国の流れで歴史が動くのであればやはり、ギリシア神話が世界宗教になっていたのかな?
選民思想を取り払わない限り、ユダヤ教は世界宗教にはなれない。
そして、ヒンドゥー神話も北欧神話も日本神話もポリネシア神話も道教も、全~部オリンポスに取り込まれていくのだ。平和だ~。
あ、スイス衛兵の制服はミケランジェロのデザインではないそうですよ>ラングドン教授。

こういう、信仰に満ちたあまりにも美しい世界を見てしまうと、「全世界(若しくは国)を1つの信仰でまとめ上げたらどんなにか…」と歴史上の人々が妄想してしまった気持ちがわかる気がします。
統一された、一つの意思・一つの信仰は、確かに美しい。
ただ無心に十字架を握り、祈る人々の横顔も、美しい。
そこに救いを求める人達の気持ちもわかります。
でも……。
人は、ひとつの道で救われるわけではない。
混沌としていて良い。
私たちは、迷える子羊ではなく、迷えるヒトなのだから。
迷ってこそ、ヒトなのだから。

ヴァチカンは、これからどう進むのか。どう変わっていくのか。
ナショナルジオグラフィックは、後年「新生バチカン」でその答えを探ります。
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あかつき
あかつき さん本が好き!1級(書評数:760 件)

色々世界がひっくり返って読書との距離を測り中.往きて還るかは神の味噌汁.「セミンゴの会」会員No1214.別名焼き粉とも.読書は背徳の蜜の味.毒を喰らわば根元まで.

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