レビュアー:
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生きる歓びへの、詩的感受性に溢れたエッセイ。
子どもたちのための詩と音楽のイベントで、「谷川さんはなんでそんなにくだらない詩ばっかり書くんですか?」と小学生に質問され、やけっぱちで「詩なんてみんなくだらないものなんだよ。」と答えたことがある。歌と詩の「声」は、日常の声とまじりあうことでかえって活性化すると、詩人・谷川俊太郎は言う。
日常の雑感を綴ったエッセイだが、詩人の視線は常に自分の内面に向けられている。本書は2001年出版の単行本を文庫化したものだ。「どうせなら陽気に老いたい」と望む谷川氏、60代の日々である。
明るくユーモラスで、人間への深い洞察に裏打ちされた言葉の数々。それが胸に沁みるのは、私がこの時の谷川さんの年齢にだんだん近づいてきたからだろうか。
仕事を引退すると、人の役に立っているという感覚が薄れる。社会から切り離された寂しさを時折感じる。だから谷川さんの「他人に求められなくても、自分のうちに湧いてくる生きる歓びをどこまでもっていられるか」という“老いの課題”は、私の課題でもある。本書はおそらく若い人よりも、50代以上の読者に共感を呼ぶのではないかと思うが、それでも。
・歓びは快楽とも楽しみとも違って、お金でも買えないし人から貰ったり奪ったり出来るものではなく、命の源から湧いてくるものだから、計画が立たない。
・「愛」だけではとらえきれない何かが、日本人にはある。それを「情」と呼ぶ。
・本から得るものを大切に思う一方で、本がときに人を頭でっかちにしてしまうことを恐れてもいる。
・衝突や和解など、個人的な経験を通さずに人間を知ることは出来ない。
もしこれらの事柄が心の琴線に触れたなら、年齢を問わず手に取ってみることをお勧めする。
「言葉にしないのではなく、言葉にならない秘密が私を生かしている。」
その秘密の一端が、美しい散文に記されている。こんな風にフットワーク軽く色んな場所へ出かけて人と親しみ、生きる歓びを失わず穏やかに年を取りたいものだと思う。
日常の雑感を綴ったエッセイだが、詩人の視線は常に自分の内面に向けられている。本書は2001年出版の単行本を文庫化したものだ。「どうせなら陽気に老いたい」と望む谷川氏、60代の日々である。
明るくユーモラスで、人間への深い洞察に裏打ちされた言葉の数々。それが胸に沁みるのは、私がこの時の谷川さんの年齢にだんだん近づいてきたからだろうか。
仕事を引退すると、人の役に立っているという感覚が薄れる。社会から切り離された寂しさを時折感じる。だから谷川さんの「他人に求められなくても、自分のうちに湧いてくる生きる歓びをどこまでもっていられるか」という“老いの課題”は、私の課題でもある。本書はおそらく若い人よりも、50代以上の読者に共感を呼ぶのではないかと思うが、それでも。
・歓びは快楽とも楽しみとも違って、お金でも買えないし人から貰ったり奪ったり出来るものではなく、命の源から湧いてくるものだから、計画が立たない。
・「愛」だけではとらえきれない何かが、日本人にはある。それを「情」と呼ぶ。
・本から得るものを大切に思う一方で、本がときに人を頭でっかちにしてしまうことを恐れてもいる。
・衝突や和解など、個人的な経験を通さずに人間を知ることは出来ない。
もしこれらの事柄が心の琴線に触れたなら、年齢を問わず手に取ってみることをお勧めする。
「言葉にしないのではなく、言葉にならない秘密が私を生かしている。」
その秘密の一端が、美しい散文に記されている。こんな風にフットワーク軽く色んな場所へ出かけて人と親しみ、生きる歓びを失わず穏やかに年を取りたいものだと思う。
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「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。
この書評へのコメント
- Wings to fly2015-07-21 19:09
風竜胆さんの掲示板企画:新潮文庫の100冊2015 に参加の書評です。これで89冊目になりました!でもまだ誰も手をつけていない本が残っています。皆さん、お早めにどうぞ!
クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - Wings to fly2015-07-21 20:27
マジでそうだと思うよ(笑)熟年読者には共感を呼びますのです、はい。
(`・ω・´)キリッ…熟年はまだ老年じゃないんだからね!時間の問題だけど(T_T)
心構えを教わった気がします。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:237
- ISBN:9784101266237
- 発売日:2010年01月28日
- 価格:500円
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