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ぽんきち
レビュアー:
世界はどうやってできた?
ファミリー向けアニメ映画でポリネシア神話をモチーフにしているものがあり、少々興味を持った。
登場する「マウイ」は半神半人で、神の釣り針を使ってさまざまな生き物に変身でき、伝統の入れ墨が入った筋骨隆々の身体を持つ。
結論からすると、アニメの設定は神話を基にはしているが、かなり脚色されているようで、別物と考えた方がよさそうである。
それはそれとして、本書に取り上げられているハワイやポリネシアなどの南の島の神話、なかなか興味深く読んだ。

著者は文化人類学者。学部・修士学生時代は考古学を専攻し、博士課程でハワイの大学に進んだ。釣針の研究からカヌーや工芸品へと対象が広がり、考古学というより人類学に近い研究を行うようになったようだ(著者インタビュー記事)。

構成は
第一章 南島の創世神話
第二章 愛と豊穣の神話
第三章 死の起源と死後の世界
第四章 日本神話と南島世界
第五章 火山の女神と英雄マウイ
第六章 ハワイのソイ性神話・クムリポ


フィリピン・インドネシアからオーストラリア、メラネシア、ミクロネシア、ポリネシアといった広範囲に渡る地域の神話のエッセンスである。
こうした神話の多くは口伝で伝えられているものである。そのため、矛盾や曖昧な点も孕むのだが、それも含めて「味」というところだろう。

創世神話は世界各地にあるが、やはり世界がどのようにできたのかは不思議だったのか、この地域にもある。混沌から世界が生まれたというのもあるが、天と地が交合したというものもあり、なかなかすごい。旧約聖書に似た洪水神話もあり、キリスト教の影響かもしれないが、布教がなかった地域にも同様のものがあり、何らかの原型的なものがあったのかもしれない。
天と地が近接し過ぎていたので、何者かが何らかの手段で引き離したという類話も見られる。

神や人が死んでその死体から穀物やココヤシなどの食べ物が生じたという話も多く見られる。
死の起源についてもいくつか説があり、元々は不死の生命があったのに、何かのきっかけで死が訪れるようになったということになっている。

これら南島の神話と日本の神話には、関連も示唆されている。
イザナミ・イザナギが矛で海を掻きまわして滴りが落ちたところに島ができたという話は、南島の神話の神が漁をしていたたら釣針が海底に引っかかり、引き揚げたら島になったという話と関連があるのではないかと見る学者もいる。
黄泉比良坂の話のように、生者が死者を迎えに行き、けれど死後の変わり果てた姿を見てしまったために決裂する形の話も類話がある。
ヒルコ神話や、海幸・山幸の釣針をなくす話なども同様である。
これらが実際に人々の文化的交流があって広まったのか、似たような原話が生じがちなのかはなかなか判断の難しいところだろうが、遠く、広い時空を見晴るかすようで壮大な楽しさがある。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1831 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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