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有坂汀さん
有坂汀
レビュアー:
「あいつは空気が読めない」「空気読めよ」…。あるいは「忖度」。日本全体、および日本人を呪縛する「その場の空気」という「怪物」について、本書は徹底的に考察・研究したものです。自分は空気が読めない…。
「有坂さんって、ほんっと空気読めないっすよねー。」

僕はかつて勤めていたとある会社で同僚に言われたこの言葉を僕は現在まではっきりと覚えておりますし、またこれからも忘れることはないでしょう。

本書は山本書店店主。評論家の山本七平が著した「山本日本学」の決定版であり、1983年(自分が生まれた年だ!)の初版以来、連綿と読み継がれ、時代の岐路に差し掛かるたびにクローズアップされる古典的名著でもあります。

そもそも、自分が本書や関連書である『「常識」の研究 (文春文庫) 』(文藝春秋)を読んでいるのは、(仕事の上とはいえ)「空気」や「常識」を金科玉条、あるいは一神教における「GOD」のように信奉している人間たちと付き合わなくてはならなくなってしまったが故であり、彼らのことを「理解」するために読んでいたというのが実情です。

本書に言わせると、昭和期以前の人びとには
「その場の空気に左右される」
ことを「恥」と考える一面があったとのことであり、それが戦前、戦中、戦後を通して現代の日本ではその「空気」はある種の「絶対権威』として変貌し、この文章を書いている時にもゾッとするほどのような力でわれわれの目の前に立ちはだかっていることを認識せざるを得ないのです。

僕がこれを読みながら連想したのは『日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦 (新潮文庫)』(NHKスペシャル取材班, 新潮社)や『日本海軍はなぜ過ったか――海軍反省会四〇〇時間の証言より (岩波現代文庫) 』(澤地久枝、半藤一利、戸高一成, 岩波書店)でも旧日本軍の元海軍将校たちの語った「失敗の本質」であり、戦争の行方を左右する会議で下した決断のほとんどが「その場の空気」によるものだった、という話でした。

その場の空気を読んでそつなく振舞い、周辺とうまくやっていけるのなら自分は本書を読んでこんな文章を書いているはずはありませんし、もともと自分が「王様間の耳はロバの耳!」と言ってしまうタイプの人間であることは自覚しておりますが、その結果自分が「社会」や「世間」からつまはじきになってもやむなしであると、それを再認識させてくれた一冊でした。
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有坂汀
有坂汀 さん本が好き!1級(書評数:2673 件)

有坂汀です。偶然立ち寄ったので始めてみることにしました。ここでは私が現在メインで運営しているブログ『誇りを失った豚は、喰われるしかない。』であげた書評をさらにアレンジしてアップしております。

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