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かもめ通信
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身分の違いに悩みながらの甘く切ない恋の駆け引き。
和泉式部という人は歌人としてだけでなく、恋多き女性としても名をはせていて、『紫式部日記』の中にも、即興に優れてた才能ある歌人だが、歌の知識や理論的な面は苦手、ちょっとモラルに反するようなところのある女性として紹介されていたりする。
そんな彼女の日記だというのだから、てっきりいろいろな恋が歌われているのだろうと勝手に思い込んでいたのだけれど、意外や意外(?)「純愛」ものだった!

冷泉天皇の子・為尊親王との身分違いの恋というスキャンダルで一躍有名になった和泉式部だったが、付き合い始めて1年ほど経った頃、伝染病にかかった親王は26歳の若さで死んでしまい、和泉式部の元に通ったせいだなどというゴシップまで流布される状況に。

傷心の和泉式部をなぐさめ、空っぽになった心に愛を注いでくれたのが、亡き為尊親王の弟敦道親王で、『和泉式部日記』は、この敦道親王との10か月にわたる甘く切ない恋の駆け引きが描かれたラブストーリーだったのだ。

“日記”とあるが、自分の気持ちだけでなく、相手の状況や心持ちなども丁寧に書かれ、時に自分自身についても客観的な表現を用いるという、物語的要素があるため、「他作説」もあるのだとか。

このビギナーズ・クラシックス版は、最初に【訳文】続いて【原文】その後に時代背景的なあれこれを含めた【寸評】があるので、たがいに想い合ったり、すれ違ったりする歌が中心ながら、ライト感覚で恋バナを楽しめる構成になっている。

同時に身分違いの恋がもたらす波紋や、「召人」という女性の立場など、平安時代特有のあれこれが興味深くもある。

そしてまた、この恋物語がなぜ「過去形」で、互いに交わした歌を折りまぜ、なにゆえこうも赤裸々に明かされたのか、そのことを理解したとき、ことさらに切ない気持ちになってしまうのだった。

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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2235 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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