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DBさん
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高天原と大国主の関係に迫る本
出雲の地は日本神話になくてはならない場所である。
日の昇る生命の源の地である伊勢と対をなし、この世とあの世のはざまであり、日の沈んでいく地が出雲だ。
黄泉の国である根の国へ、神々が降りていく。
その途中にある出雲の国で神話の物語が繰り広げられていった。

出雲にまつわる話を、主に『古事記』『日本書紀』にみられる中央の伝説と『出雲国風土記』に書かれた地元の伝承を比較しながら検討していったのが本書です。
天岩戸に隠れた天照大神を再び呼び出すため神々が踊り騒ぐ、という神話は有名ですが。
これが天照を主神とする高天原の神々と、大国主が支配していた土着の神々との対立と支配という形で捉えることができるというのは面白い。
神々の対立と支配はすなわち当時の国と国との関係や権力図を表しているわけで、中央対地方の構図がこんなところからも見ることができる。

そして神話の中でも有名なスサノオについて焦点を当てています。
天照の弟として登場するスサノオですが、孫悟空ばりの暴れん坊のイメージは高天原の神話によるそうです。
悪行がたたって追放されるが、出雲でヤマタノオロチを退治したりとヘラクレスのような活躍する。
そしてヤマタノオロチから救い出したクシナダヒメを妻として出雲に宮殿を作って暮らすそうだ。
ヤマタノオロチが海の怪物に変われば、そのままペルセウスとアンドロメダの話になってしまいそうです。
この日本神話とギリシャ神話の相関性も本書では随所に取り上げられている。
オルフェウスとエウリュディケの神話もイザナギとイザナミの話によく似ているし。
そのルーツがどこにあるかについては特に触れられてなかったけれど、これも興味深い題材です。
暴風雨をあやつる神というイメージはエジプトのセトにも通じる。
とはいえ女神が主神となっているのは日本くらいな気もするので、類似と相違について検証した本がないかな。

さらに大国主の話を取り上げていきます。
因幡の白兎の話に、嫁取りの後日談があったのは知らなかった。
基本的に『古事記』と『日本書紀』くらい読んでから、その中の話について学術的に論証するという本だったので出雲神話ってどんな話なんだろうと思って読むとわかりにくい。
でも出雲に行ってみたくはなりました。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2039 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. あかつき2017-10-31 17:13

    大国主の国譲りの話、ぶっちゃけ不自然ですよね。
    スサノオというのはもともと出雲の土着的な英雄神で、そのスサノオをアマテラスの「弟」としたのは、古事記で系統だってまとめる際に(例えばギリシア神話で土着の神々や英雄をみんなゼウスの私生児にしたように)彼を乱暴者の野卑な神に貶める意味があったのではないかしら。
    少なくとも、アマテラスの伊勢神宮の権威が高まったのは、古事記を制定した持統時代。彼女はまさに天孫降臨として孫息子を帝位につけたい女帝でしたから。

  2. DB2017-10-31 20:52

    立場の違う両サイドからの神話解説って感じですね。スサノオの神格が荒御魂と和御魂というだけでは説明しきれない部分って、やはりそのあたりにルーツがあるのかも。もっと詳しく調べてみたら面白そうですね。
    アマテラスの権威を高める=自分の系統という図式はとってもわかりやすいです。

  3. No Image

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