Yasuhiroさん
レビュアー:
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江國香織の短編集で、1989年から2003年までの作品があるので質量ともばらつきはありますが、表題作と「きらきらひかる」の続編は良い感じで楽しめます。
江國香織を読んでいくシリーズ、2007年の短編集「ぬるい眠り」を選んでみました。その理由の第一は、裏表紙解説に「きらきらひかる」の10年後を綴る作品が収録されていると書いてあり、興味を惹かれたからです。
全部で9編、あとがきによると
だから正直なところ「何じゃこれ?」というような作品もあります。それでもやっぱり江國さんらしさは随所に溢れており、ご本人曰く
ではいくつか寸評。
「ラブ・ミー・テンダー」: 両親の離婚騒動には慣れっこの娘だが今回の呼び出しはちょっと危険そう。エルビス・プレスリー狂の母親がついに「夜12時になるとエルちゃんから電話がかかってくるの」と言い出したのだ。ついに認知症が始まったか、と不安になる娘をよそに両親はのんき。さて母親は本当にぼけているのか?最後のツイストの効いた掌編。
「ぬるい眠り」: プルキニエ現象、青い夕方。主人公雛子の部屋は
雛子は妻子持ちの恋人と別れた後、夜寝ていると白いヘビが背中にまとわりつくようになる。その白いヘビの正体は?
とっても切ない物語です。
江國さんは
「放物線」 学生時代の同級生の男二人女一人が横浜の中華街で中華料理を死ぬほど食べる。何ということはない掌編ですが、江國さんにとっては初めて文芸誌に載ってとても嬉しかった作品だったそうです。
「清水夫妻」 ふとしたことから知り合った清水夫妻。二人はちょっと変わった遺産生活者。新聞の死亡欄でお葬式を探して二人して出かける葬式マニア。終わったら鰻を食べる。主人公の女性も徐々に感化され、恋よりも葬式の方に熱中する。
友達にも言われる。「危ないじゃん、それ」
「ケイトウの赤、やなぎの緑」 これが「きらきら光る」の続編。セックスレスでも仲の良いホモの夫睦月と躁鬱でアル中の妻笑子の10年後やいかに?
最初は全然別の夫婦と妻の弟が出てきてあれっと思います。この三人もやっぱりちょっと変わっている。そしてこの弟がゲイで今の恋人がなんと睦月の恋人だったはずの紺であることが分かり、そこから話の展望が開けてきます。睦月と笑子は古民家に引っ越しており、そこは「主に夫関係のゲイと医者と無職とアーティスト崩れ」が集まる「あやしいサロン」と化していました。
まあ、そこから先は読んでのお楽しみですが、睦月も笑子も脇役のままなのがちょっと物足りないですが、それでも10年後を読めるのは嬉しい。
というわけで私のお気に入りの三編は「ラブ・ミー・テンダー」「ぬるい眠り」「清水夫妻」かな。これ以外にも笑い事じゃないけど笑ってしまう「災難の顛末」、題名からしてユニークな「とろとろ」など、それなりに面白い作品もあります。是非あなたのお気に入りを見つけてください。
流しのしたの骨
こうばしい日々
きらきらひかる
たとえ記憶からこぼれ落ちるとしても
つめたいよるに
全部で9編、あとがきによると
散り散りになっていた小説を一冊にまとめてもらったもので、多くは最初期の二十代前半の頃に書かれています。
だから正直なところ「何じゃこれ?」というような作品もあります。それでもやっぱり江國さんらしさは随所に溢れており、ご本人曰く
三編は気に入っていますとのこと。あとがきを読んだ限りでは多分「ぬるい眠り」「放物線」「ケイトウの赤、やなぎの緑」でしょう。
ではいくつか寸評。
「ラブ・ミー・テンダー」: 両親の離婚騒動には慣れっこの娘だが今回の呼び出しはちょっと危険そう。エルビス・プレスリー狂の母親がついに「夜12時になるとエルちゃんから電話がかかってくるの」と言い出したのだ。ついに認知症が始まったか、と不安になる娘をよそに両親はのんき。さて母親は本当にぼけているのか?最後のツイストの効いた掌編。
「ぬるい眠り」: プルキニエ現象、青い夕方。主人公雛子の部屋は
水の中のようになる。トレイシー・チャップマンの「Fast car」が流れている。トレイシーは
あなたのクルマでこの町を出ましょうと歌っている。雛子は幽体離脱をして見たいものを見に行く。。。う~ん、私はこの雰囲気だけでもうノックアウトされちゃうのです。
雛子は妻子持ちの恋人と別れた後、夜寝ていると白いヘビが背中にまとわりつくようになる。その白いヘビの正体は?
とっても切ない物語です。
江國さんは
夕方というあいまいな時間が好きと書いておられる。そう言えば原田知世様が主演した「落下した夕方」という作品もありますね。 ← それが言いたかったのか、と言わないで(^^;)。
「放物線」 学生時代の同級生の男二人女一人が横浜の中華街で中華料理を死ぬほど食べる。何ということはない掌編ですが、江國さんにとっては初めて文芸誌に載ってとても嬉しかった作品だったそうです。
「清水夫妻」 ふとしたことから知り合った清水夫妻。二人はちょっと変わった遺産生活者。新聞の死亡欄でお葬式を探して二人して出かける葬式マニア。終わったら鰻を食べる。主人公の女性も徐々に感化され、恋よりも葬式の方に熱中する。
死の強烈さの前では、他のすべてのことが色褪せてしまい、恋愛を含む自分自身の日常に現実感がなくなるのだ。
友達にも言われる。「危ないじゃん、それ」
「ケイトウの赤、やなぎの緑」 これが「きらきら光る」の続編。セックスレスでも仲の良いホモの夫睦月と躁鬱でアル中の妻笑子の10年後やいかに?
最初は全然別の夫婦と妻の弟が出てきてあれっと思います。この三人もやっぱりちょっと変わっている。そしてこの弟がゲイで今の恋人がなんと睦月の恋人だったはずの紺であることが分かり、そこから話の展望が開けてきます。睦月と笑子は古民家に引っ越しており、そこは「主に夫関係のゲイと医者と無職とアーティスト崩れ」が集まる「あやしいサロン」と化していました。
まあ、そこから先は読んでのお楽しみですが、睦月も笑子も脇役のままなのがちょっと物足りないですが、それでも10年後を読めるのは嬉しい。
というわけで私のお気に入りの三編は「ラブ・ミー・テンダー」「ぬるい眠り」「清水夫妻」かな。これ以外にも笑い事じゃないけど笑ってしまう「災難の顛末」、題名からしてユニークな「とろとろ」など、それなりに面白い作品もあります。是非あなたのお気に入りを見つけてください。
流しのしたの骨
こうばしい日々
きらきらひかる
たとえ記憶からこぼれ落ちるとしても
つめたいよるに
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馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8
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- 出版社:新潮社
- ページ数:317
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