DBさん
レビュアー:
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凄惨な事件が残したものの話
今年もカドフェスの季節がやってきました。
暑い夏は読書に限る、ということで恩田陸です。
事件は三十年近く前の夏の終わり、加賀のある町の医者の家で起きた。
代々の素封家で地元の人々からも一目置かれていた特別な家族だったが、その祝いの席で振舞われた酒とジュースに毒物が混入されていて、家族だけでなく相伴していた近所の人も巻き込み大量の死者を出したのだった。
その家に遊びに行っていたもののたまたまジュースを口にしなかった子供の通報で警官が駆けつけた時には、吐しゃ物にまみれ苦悶のあまり身をよじったままの遺体が折り重なるように倒れている姿があるのみだった。
生き残ったのはわずかに二人、電話が鳴ったために酒をわずかにしか口にしなかった女中と、気分が悪いと何も口にしていなかったその家の中学生になる盲目の娘だけだ。
事件の犯人は十月になって精神を病んでいた青年が自殺をし、遺書に自分がその事件の犯人であったこと、そしてそこに事件で使われた毒物が見つかったことで一応解決した。
だが青年と被害にあった一家をつなぐものがなく、すっきりしない幕切れだったことが伺われる。
「ユージニア」とはその青年が書き残した死のような言葉の一部だったが、それが何を意味するかは最後の方で出てきていた。
事件を発見した子供の妹で、兄に連れられて現場を目撃した雑賀満喜子はそれから十年後の大学生の時に、当時の出来事を知る人たちにインタビューして一冊の本の形にまとめた。
その「忘れられた祝祭」と題する本が出版されて話題となり、その話題も風化したころに再び当時を振り返る形で描かれていきます。
本作も登場人物たちがインタビューに答えるような形で事件のことや事件にかかわった人のことについて語っていく。
裏表紙のあらすじに「こんな体験は初めてだが、俺はわかった。犯人は今、俺の目の前にいる、この人物だ」と書いてあったので、四半世紀以上前の事件の謎を解明するようなミステリーかと思って読んでいました。
当時この事件を捜査していた刑事の台詞だったのですが、読み終えてみると誰が真犯人だったかというよりは、ひとつの事件によって結び付けられてしまった人々を描いた群像劇のようなイメージだった。
真犯人かもしれないとされる人が語ったことや、満喜子が描いた本の一部であろう部分、刑事の回想、それぞれが真実とは限らない部分も含み頭の体操になります。
白い百日紅が重要なキーワードとして出てくるが、それよりインタビュアーとしての満喜子が相手によって全くキャラを変えていくという設定の方が「チョコレート・コスモス」を思い出して作者に触れる思いがした。
暑い夏は読書に限る、ということで恩田陸です。
事件は三十年近く前の夏の終わり、加賀のある町の医者の家で起きた。
代々の素封家で地元の人々からも一目置かれていた特別な家族だったが、その祝いの席で振舞われた酒とジュースに毒物が混入されていて、家族だけでなく相伴していた近所の人も巻き込み大量の死者を出したのだった。
その家に遊びに行っていたもののたまたまジュースを口にしなかった子供の通報で警官が駆けつけた時には、吐しゃ物にまみれ苦悶のあまり身をよじったままの遺体が折り重なるように倒れている姿があるのみだった。
生き残ったのはわずかに二人、電話が鳴ったために酒をわずかにしか口にしなかった女中と、気分が悪いと何も口にしていなかったその家の中学生になる盲目の娘だけだ。
事件の犯人は十月になって精神を病んでいた青年が自殺をし、遺書に自分がその事件の犯人であったこと、そしてそこに事件で使われた毒物が見つかったことで一応解決した。
だが青年と被害にあった一家をつなぐものがなく、すっきりしない幕切れだったことが伺われる。
「ユージニア」とはその青年が書き残した死のような言葉の一部だったが、それが何を意味するかは最後の方で出てきていた。
事件を発見した子供の妹で、兄に連れられて現場を目撃した雑賀満喜子はそれから十年後の大学生の時に、当時の出来事を知る人たちにインタビューして一冊の本の形にまとめた。
その「忘れられた祝祭」と題する本が出版されて話題となり、その話題も風化したころに再び当時を振り返る形で描かれていきます。
本作も登場人物たちがインタビューに答えるような形で事件のことや事件にかかわった人のことについて語っていく。
裏表紙のあらすじに「こんな体験は初めてだが、俺はわかった。犯人は今、俺の目の前にいる、この人物だ」と書いてあったので、四半世紀以上前の事件の謎を解明するようなミステリーかと思って読んでいました。
当時この事件を捜査していた刑事の台詞だったのですが、読み終えてみると誰が真犯人だったかというよりは、ひとつの事件によって結び付けられてしまった人々を描いた群像劇のようなイメージだった。
真犯人かもしれないとされる人が語ったことや、満喜子が描いた本の一部であろう部分、刑事の回想、それぞれが真実とは限らない部分も含み頭の体操になります。
白い百日紅が重要なキーワードとして出てくるが、それよりインタビュアーとしての満喜子が相手によって全くキャラを変えていくという設定の方が「チョコレート・コスモス」を思い出して作者に触れる思いがした。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:角川グループパブリッシング
- ページ数:420
- ISBN:9784043710027
- 発売日:2008年08月25日
- 価格:660円
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