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かもめ通信
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また旅に出たくなってしまった。
日本画家平山郁夫が1980年代、
「日本経済新聞」に連載した“明日への展望”と銘打ったエッセイと
後にその文章に添えるべく1枚ずつ描いたという装画を収録した文画集。

展覧会が開かれた後
この本に収録されている装画はすべて
中国敦煌石窟の研究保存のための基金に贈られたのだという。

前述のとおり、旅先で描いたものではないとのことだが、
旅先でのあれこれにスケッチが添えられたような雰囲気が旅情を誘う。

イギリスを皮切りに
オランダやフランス、イタリアをめぐり、
やがて東西文明が交差するトルコへ
シリアやヨルダンにも足を伸ばす。

もちろんただ旅するだけではない、
東西文化交流事業やシルクロード取材旅行、
古代美術を研究したり、個展を開いたりもする。

目にしたこと感じたこと
興味をもったこと
そこから考えたあれこれなど
短いながらも丁寧に綴られた文章が
添えられた装画とともに読む者に旅への憧れを抱かせるのだ。

同時に十代の時に広島で被曝し、
その後遺症に悩まされ、死の恐怖を身近に感じるようになったとき
仏教に引き寄せられ、
そこからまた仏教画以外の様々な宗教美術に惹かれていくようになったことや
アフガニスタン訪問を機にシルクロードに魅せられたこと
画家の原点とも言うべきあれこれがさりげなく語られる。

旅の情報としての古さはあるが、
当時、日本人は滅多に行かなかった地域に足を踏みいれて行く様子や
今では紛争のために訪れることが難しくなった地域の魅力を伝えるという点では
逆に新鮮な印象さえうける。

トルコやインドなど私が訪れた土地
目にした建物や遺跡もいくつか描かれているが
写真で見るのとはまた違って
画家の残した余白が目にも心にも楽しく映えた。


     *****
(余談その1)
それにしても先日読友Iさんにいただいたこの本、
まったくもって罪な本だった。
また旅に出たくなってしまったではないか!
ハッ!もしかしてこれ、フィールドワークのお誘いなのか?!そうなのか?!

     ******
(余談その2)
今回のおまけ画像は、○十年前にインドを旅したときに撮った写真を。
この本にも同じような場面を描いた画伯のスケッチが登場します。
    • インド・アジャンタ
    • インド・アジャンタ石窟群
    • ご存じタージマハール
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2229 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. 祐太郎2016-11-03 07:05

    平山郁夫は亡くなった後の、申告漏れで汚点を残してしまっていますからねぇ・・・

    http://www.j-cast.com/2013/07/13179402.html

  2. かもめ通信2016-11-03 07:15

    まあ、あれが、本人のというよりは相続する側の問題だという気もしますが。
    というか私、今回初めて知りましたが、奥さんも芸大出身で将来を嘱望されていた芸術家だったんですってね。

  3. ikutti2016-11-03 07:38

    へぇー、そうなんだ
    って私が言うなって。
    フィールドワーク、いってらっしゃい。

  4. かもめ通信2016-11-03 08:55

    あらikuttiさん、一緒に行ってくれないの?
    ハッそうか!飛行機ダメなんだっけ??(><)

  5. ikutti2016-11-03 13:49

    Σ( ̄□ ̄|||)よ、喜んで!

  6. たけぞう2016-11-03 15:34

    かもめ通信さんのインドスケッチが見てみたい♪
    それはそうと、まさかインドもかもめ通信さんのテリトリーにあるとは思いませんでした。

  7. かもめ通信2016-11-03 15:51

    あらやだ、たけぞうさん。私、すごく残念なことに運動神経と画才はマイナスなのよ。
    どうやら、母の胎内においてきちゃったらしくて、妹はどちらも良いんだけど(><)
    インドはねえ。いずれも短期間、バックパックでもありませんが、
    1度では飽き足らず2度行きました。
    南の方は行っていないし、同じところにも何度でも行きたいぐらい
    ものすごく魅力的なところです。
    でもねえ。あの国に行くのには、時間やお金はもちろんのこと、気力も体力も必要なのよね。

  8. ぴょんはま2016-11-10 19:10

    >あの国に行くのには、時間やお金はもちろんのこと、気力も体力も必要

    そうですよね。今まで行った中で一番カルチャーショックを感じたのがヴァラナシ(宗教面よりも、平気でここから追加料金みたいな商売っ気)、一番好きな建造物がタージ・マハールです。まだ20代だったから行けたような気も・・・

  9. かもめ通信2016-11-10 19:28

    私の一番の衝撃はやっぱりカルカッタの駅かなあ。
    足の踏み場もないほどひしめき合って駅やその周辺の地べたに暮らす人々がいて、
    その人達の生活圏を踏み荒らすようにして進むしか改札に向かいようがなくて……
    とてもカメラなど向けられなかったし、しばらく“混沌”という言葉が頭から離れませんでした。

    今は、どんな感じなのかなあ。
    もう一度行ってみたいような。
    想い出の中に留めておきたいような……。


    写真は商売上手なコブラ使いのおじさん。

  10. No Image

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