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DBさん
DB
レビュアー:
芸に生きる男たちの話
人形浄瑠璃と言えば近松門左衛門の曽根崎心中。
日本史だったか国語だったか教科書に人形の写真と一緒にのっていたのを覚えている。
現物で見たことはないのですが、大阪市か府が交付金を削減したニュースの時に文楽のワンシーンも出ていたのを思い出しました。
その時には助成金がないとやっていけない伝統芸能なら滅びてしまうのもありだと思ったのですが。
本作を読んで一度見てみたいと思ったので、やはり身近に感じる機会が必要なのかもしれないと考えを改めました。

本作では大夫、三味線、人形遣いの三業で行われる浄瑠璃の、まだ若い大夫を主人公に文楽の世界を語っていく。
主人公は十八で文楽の研修所に入り、人間国宝である銀大夫に弟子入りして十年、三十路になったばかりの健大夫です。
米寿か卒寿まで現役という世界では、まだ三十路じゃひよっこなのは当然か。
師匠はもとより兄弟子たちにも厳しく仕込まれ可愛がられの毎日が描かれている。

幕開きで始まり「女殺油地獄」「日高川入相花王」「ひらかな盛衰記」「本朝廿四孝」「心中天の網島」「妹背山婦女庭訓」「仮名手本忠臣蔵」という浄瑠璃のタイトルをそのまま章立てにしている。
そのシーンごとに主人公が語りで悩んでみたり相三味線となった兎一郎との関係を深めていったりと舞台を中心に話が進んでいきます。
そんな中で主人公の恋愛話も出てくるのですが、師匠はもとより師匠の相三味線の亀治、兄弟子の幸大夫、それに兎一郎まで囲まれ話をさせられるというプライバシーもなにもない環境だ。
しかも楽屋で話していたため、尾ヒレまでついて噂は文楽関係者の中で広がっていく。
今時家族でもここまで突っ込まないよというところですが、最後まで読んでみれば芸事は人生そのもの、舞台の外でもすべてが芸に通じる以上はプライベートなんてあろうはずがない。
弟子の性格も考え結婚相手まで考えてやるのが師匠の勤めなのかもしれないと思いいたった。
まあ単純に面白いからというほうが大きいだろうけどね。

文楽という普段縁のない世界を見て興味深かったが、登場人物がテンプレ過ぎるのと話の流れがスムーズすぎるのが現実的じゃなかったかな。
どんな世界でも不条理はあるし、それを飲み込んでこその世界であり人生だと思うので。
大阪に行くことがあったら国立文楽劇場も観光ルートに組み込んでみようと思った。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. いけぴん2019-08-20 10:38

    文楽、はまりますよ~
    大阪にお越しの際にはぜひ!

  2. DB2019-08-20 22:08

    その時は大阪でおいしいお店と併せてご紹介ください(^^)/

  3. No Image

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