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三太郎さん
三太郎
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江戸の町では江戸ッ子は意外にも少数派だったらしい。
漫画家の杉浦日向子さんは僕より2歳若いが、惜しくも46歳で亡くなっている。これは1998年に出された、主に江戸の下町の庶民の風俗を描いた本。初めに著者による「江戸ッ子」の定義がある。三代続いた下町育ちが江戸ッ子だという。この定義により概算すると、江戸の全人口の1.25%が江戸ッ子になる。

なんだか数字が細かすぎないかと思うけれど、江戸の人口の1/2は僧侶と武士で、残り1/2の60%が地方出身者、30%が地元民とのハーフで、10%が純粋な地元民ですが、そのうちの下町育ちは5%で、さらに三代続くとなると・・・全体の1.25%になるとか。江戸の人口は流動性が高かったということかな。江戸ッ子は少数派だったみたい。

この江戸ッ子たちはだいたいが定職に就かず、必要最小限働いてあとはぶらぶらしていたとか。職人気質は育ちにくかったらしい。今風にいうならアルバイトをしながらその日暮らしをしていたというところか。彼らのスタイルがイキとかイナセとか呼ばれたのだろう。

錦絵に見る江戸の美人の変遷が興味深い。1760年代に流行った美人は童顔で七頭身、なで肩で柳腰の美少女風だったが、1780年代に入るとあごの線がシャープで十頭身、手足もすらりと長い健康的な美女がモテた様子。しかし時代が下がって1820年代になると細面の六頭身でややずんぐりした体形の妖艶な感じの美女が流行ったとか。現代の女優さんを見ると1760年代型の童顔か、1780年代型のすらっとした体形の美女が流行っているようだが、将来は1820年型の純日本風の美女がモテるようになるのかも。

江戸の人気者といえば歌舞伎役者と相撲取りでしょう。歌舞伎が軟派向きの娯楽だったのに対し、相撲は男臭い硬派の娯楽だったとか。相撲取りと素人衆が路上で喧嘩して、相撲取りが相手を殺してしまうなんてこともあったとか。また相撲観戦も、観客同士で喧嘩するのが目的だったりしたらしい。相撲観戦に行って無傷で帰って来るようでは意気地がないと言われたとか。無論女性が観戦することはまずなかったらしい。

江戸の出版事情も興味深い。江戸のベストセラーは「吉原細見」で一家に一冊あったとか?恋愛小説も人気で「にせ紫田舎源氏」は当時40万部出た。内容は子沢山で有名な時の将軍家斉の大奥がモデルだとか?当時は出版社が6千あったというのですから、競争も激しかったようです。

本の最後に「江戸ッ子度チェックリスト」が載っています。僕は江戸ッ子ではないみたいだけれど、当然だよね。仙台っ子だものね。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:826 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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