hackerさん
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まさに傑作!まさに天才の技!こんな楽しい絵本は、なかなかありません。
レオ・レオーニ(1910-1999)は、私の大好きな絵本作家の一人です。イタリアの絵本作家というイメージがありますが、生まれはオランダのユダヤ人で、14歳の時にイタリアのジェノヴァに移住し、チューリッヒ大学で学ぶという青少年期を送りますが、ファシスト政権に追われる形でアメリカに亡命します。1959年刊の本書は、孫にお話をせがまれたことから偶然生まれた、レオーニの最初の絵本です。その後、レオーニはイタリアに戻り、数々の絵本の名作を世に残しましたが、そう考えると、彼の孫の世界絵本界への貢献は偉大なものがあります。
本書は、先に読んだ『松居直のすすめる50の絵本―大人のための絵本入門』の中でも語られていて、そこで、松居直は、本書のことを「20世紀の絵本の歴史に残る傑作のひとつ」と評し、最初に読んだ時のことを次のように述べています。
「1959年にアメリカで出版された直後、原書を入手したのですが、完全に抽象的な表現での挿絵を見て、美しくおもしろいとは思ったものの、はたして幼児にもわかるだろうかという疑問をもちました。当時、これほど完全に抽象的な挿絵の絵本はありませんでした。
1962年に編集者として初めてアメリカを訪れたとき、ニューヨーク市立中央図書館での児童室で、主任のステルス夫人に率直に疑問をなげかけてみました。すると、即座に、『この絵本は子どもたちがとても歓びます』という確信に満ちた答が返ってきました。(中略)
大人には抵抗があったようですが、子どもは物語と挿絵の表現との質的に完璧な一致を直感して、あおくんときいろちゃんの仲良しの世界に素直に入りこんでいきます」
この文章には、こういう「完全に抽象的な挿絵の絵本」の誕生がいかに画期的なできごとであったことか、そして、大人の子どもの感性への下手な先入観を恥じる気持ちが読み取れます。
お話とすれば、表紙を見てもらえば分かるように、大の仲良しのあおくんときいろちゃんが、一緒にくっついて遊んでいるうちに、みどりちゃんになってしまい、両方のおとうさんとおかあさんから「うちのあおくんじゃないよ」「うちのきいろちゃんじゃないよ」と言われ、さぁ大変という単純なものですが、まぁ、絵の何と楽しいこと!ちょっと、クレーを連想させますが、後年の傑作『フレデリック』(1967年)の絵のタッチも既に見て取れます。
結局、みどりちゃんは、あおくんときいろちゃんにまた分かれて、おやたちもふたりがくっつくとみどりちゃんになることを理解して、めでたしめでたしになるのですが「おやたちも うれしくて やっぱり みどりに なりました」という最後には、異なる人間同士の融和から新しいものが生まれるのだなというメッセージも感じ取れます。もっとも、それも大人の浅知恵なのかもしれません。
とにかく、楽しく読めばいい絵本なのです。楽しい絵を見る歓びは、子どもにも大人にも共通しているのですから。
本書は、先に読んだ『松居直のすすめる50の絵本―大人のための絵本入門』の中でも語られていて、そこで、松居直は、本書のことを「20世紀の絵本の歴史に残る傑作のひとつ」と評し、最初に読んだ時のことを次のように述べています。
「1959年にアメリカで出版された直後、原書を入手したのですが、完全に抽象的な表現での挿絵を見て、美しくおもしろいとは思ったものの、はたして幼児にもわかるだろうかという疑問をもちました。当時、これほど完全に抽象的な挿絵の絵本はありませんでした。
1962年に編集者として初めてアメリカを訪れたとき、ニューヨーク市立中央図書館での児童室で、主任のステルス夫人に率直に疑問をなげかけてみました。すると、即座に、『この絵本は子どもたちがとても歓びます』という確信に満ちた答が返ってきました。(中略)
大人には抵抗があったようですが、子どもは物語と挿絵の表現との質的に完璧な一致を直感して、あおくんときいろちゃんの仲良しの世界に素直に入りこんでいきます」
この文章には、こういう「完全に抽象的な挿絵の絵本」の誕生がいかに画期的なできごとであったことか、そして、大人の子どもの感性への下手な先入観を恥じる気持ちが読み取れます。
お話とすれば、表紙を見てもらえば分かるように、大の仲良しのあおくんときいろちゃんが、一緒にくっついて遊んでいるうちに、みどりちゃんになってしまい、両方のおとうさんとおかあさんから「うちのあおくんじゃないよ」「うちのきいろちゃんじゃないよ」と言われ、さぁ大変という単純なものですが、まぁ、絵の何と楽しいこと!ちょっと、クレーを連想させますが、後年の傑作『フレデリック』(1967年)の絵のタッチも既に見て取れます。
結局、みどりちゃんは、あおくんときいろちゃんにまた分かれて、おやたちもふたりがくっつくとみどりちゃんになることを理解して、めでたしめでたしになるのですが「おやたちも うれしくて やっぱり みどりに なりました」という最後には、異なる人間同士の融和から新しいものが生まれるのだなというメッセージも感じ取れます。もっとも、それも大人の浅知恵なのかもしれません。
とにかく、楽しく読めばいい絵本なのです。楽しい絵を見る歓びは、子どもにも大人にも共通しているのですから。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:至光社
- ページ数:0
- ISBN:9784783400004
- 発売日:1984年01月01日
- 価格:1260円
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